上記の話題の展開です。
簡単な例題があります。
考えてみてください。
「この曲を聴くと元気が出る」
「この曲を聴くと切なくなる」
様々な反応が音楽を聴取すると自動的に感じられると思います(感じる人は)。
では。
なぜ、その曲はあなたに「切なさ」を感じさせるのですか?その理由を答えてください。
それは音楽理論的な答えになりますか。
これを考えるとき、不定調性論的思考を持っていないと勉強が滞ります。滞るならまだしも昭和なら盗んだバイクで走り出します。昭和の勉強は閉塞的でした。
音楽理論は伝統的に権威を持つ方法論の明文化です。
そこで発想を逆転させ「個別論を作ることを推奨する」方法論が伝統音楽理論と对となる不定調性論であり、その個別論の一例です。
そしてあなたも独自論を持てばいいんです。
不定調性論では、「なぜ切なさが生まれるか」の答えを
「そう感じたのであれば、それを信じる」
とします。ずっこけるかもしれませんが、これが意外と難しいです。
昔の学校の先生ならこういうはずです。
「君はまだまだ未熟だから、自分の欲求は抑えなさい、もっと勉強して一人前になってから自分の直感に従いなさい。」
では、法律上で大人になったら自分の欲求のままに行動して良いのでしょうか。
いつ自分が感じるものを自分が自信をもって信じればいいのでしょう。
これを行うためには、なるべく早く自分の思想、思考、行動に責任を持つということを自覚/習慣にする必要があります。まさに大人への第1歩。歩みが早い分たくさん失敗します。しかし小さな失敗から慎重になって自己論を展開できます。
表現活動の失敗は人生を奪ってしまうので、日々間違いを指摘され、修正し、考える人間にならないといけません。表現活動の日々のルーティンは失敗することです。芸術家は甘くありません。
失敗が快感になり、クオリアはどんどん鍛えられるからです。
失敗が嫌いな人は表現活動には向きません。
人の「脳」は宇宙を構成する物質と同じ物質でできている量子力学の"答え"そのものです。すでにその答えを体の中に持って我々は生まれてきており、その究極の脳の性能を日々感じて生きています。
なぜ空気の振動現象に感情が動くのか、という理由もまた同様です。
理屈を知らなくてもそこに感情が存在することを既に知っています。
不定調性論では、次の構造を活用します。
音楽⇨脳(ブラックボックス関数)⇨感情の表出
脳に電気的な刺激として音振動現象が変換されると、程なく感情的感覚を感じます。
教材では「クオリア」「共感覚的知覚」「模様感」「心象」などと表現しています。
もちろん不協和音にもなんらかの反応を心が持ちます(持つ人はね)。
最初は
「うわ、ひどい音」
などという嫌悪の反応から、そうした表現に慣れてくると、
「なんか、"苦しみ"かな?」
「なんか赤いね」
みたいに"理解"を示すことができるようになる人もいます。
さらに、無調音楽などを堪能できるようになる人は、そうした混沌のサウンドに対して、
「自分が中学校時代に体験した灰色の空の向こうへの憧れ」
というような具体的感覚を想起させていき(一例です)、そうした和音を自身の音楽表現で使えるようになります。
その和音を弾いてみて、
「うわぁ、灰色だ・・・あの日の切ない気持ちだ」
とか、学生の頃の下校の風景などを鮮やかに思い出せてしまうんです。だから変な和音も使えるんです。自分の中に有機的な動機と意味と確信が存在するからです。
拙論的作曲も、この感覚を頼りに行います。
18−19世紀ごろから表現者たちはその存在をすでに知って用いていたようです。ロマン派といった表現はまさに心象の表出をメインに置いた音楽でしょう。
現代は音楽理論が整備されている分、逆に感覚に重きを置くことは野蛮だ、と思っている節もあります。
常に選択肢を与えて、例えば「次のコードはCM7がいいか、Am7がいいか自分で決めてみてください」とか、自分で決める習慣をつけることで責任・失敗・覚悟・決断を経験していくことの方が作曲でも大切だ、と思います。
年齢経験に関わらず、甘さが許されない世界ですので、自己論を展開するなら、自分が抱えられる責任の範囲を想定して進める必要があります。
これが次に述べる「回路」の強化になると考えています。
不定調性論的学習は、
音楽⇨脳(ブラックボックス関数)⇨感情の表出
この回路の回線を太く豊富にすることが目的です。この回線が太くなれば、
感情⇨ブラックボックス関数⇨脳⇨音楽
への流れも作れるからです。感情の刺激が肥大すると、想いが即メロディになったり、言葉になったり、音楽の残像となって考える間も無く想起されます。あとはそれを具体化するだけです。半年毎日やってれば自然とそうなります。毎日続かない人、半年毎日やってもこれができない人は、このブログはそっと閉じてください。
音楽理論を学んでも曲が作れないのはあなたが音楽的クオリアを鍛えようとしないからです。それは逆上がりのテストの前日まで、本だけを読んで、鉄棒を使わず、ベッドに寝転がったまま逆上がりをマスターしようと試みるようなものです。
表現の事故は、それを表現する前に想定できなかった未熟さからきます。未熟でも権威でも取り返しのつかない事故レベルの一大事は起こせます。自己論の最も怖いところですが、野生、と考えてください。ジャングルの中で生活しようと思えば、法や秩序ではないものに従う覚悟が必要です。それが日常で芽生えてくると、あなたは自分の感覚を信じる癖がつきます。あなたは社会から解放されているのです。
すぐ実際に曲を作り始めてください。鼻歌が浮かんだら録音しましょう。
歌うようにウキウキして話す時、あなたは作曲しているんです。
火に触れたら考える暇なく手を引っ込めるでしょう?
火が熱い、と無意識に知覚するように人体ができているからですね。
知識ではありません。
作曲もそのくらい音に反応できるような感覚になるまで作り慣れてください。
コードとメロディの組み合わせは膨大です。次に適切なコードがどれか、をコード進行辞典の1ページ目から確かめていては曲はできません。
なぜならこのやり方では
「本当にその先のページに今選んだ以上のコードはないか?」
という問いに対して答えられないからです。
3000円の壺と300万の壺を見分けるためには子供の頃から300万の壺に触れ続けなければならないそうです。これも音楽的クオリアと同じものでしょう。
将棋なども「次の一手」を選ぶには直感を信じる必要があります。
膨大な可能性の一手があるからです。
とりあえず片言のフレーズで20曲ぐらい作ってみて。
20曲作る頃には自分がこれからどうすべきかもなんとなく見えてきます。
もし20曲作れないなら作曲家ではない道にあなたの可能性はあると思います。
やがて
考えて置いた時よりも、何も考えないで置いた和音の方が自分の感覚にしっくり来る。
という体験ができれば、あなたの体の中の回線は太く繋がりはじめています。
教材やブログでは「矛盾を理解しようとせよ」みたいなことも書いています。
なんで今日カレーにしたの?とか
なんで今日その服を選んだの?とか
自分はなんで今日メロンパンが無性に食べたいんだろう、とか。
なんか今日は気分がいいのはなぜだろう?
とかについて感じてみましょう。その理由は複雑で、人の言語に置き換えられない感覚もたくさんあることを知ります。
(このサイトでは、この"なぜ次のコードに向かったか"は認知的ヒューリスティック-という考え方に準じています。)
毎日の選択は、生理的な理由、記憶と気候のマッチング、個々人の脳が記憶と体調との照合で紡ぎ出した直感的確作曲経験が作り出す脳のスーパー機能で音楽を作ることです。当てずっぽう作るのとはまるで違います。
それを選んだ根拠をうまく説明できない、という状況にたくさん立ち会ってみてください。脳はその理由を知っていますが、言語にしてはくれません。(ヒューリスティック的判断力につながる)
脳のARAS機能(上行性網様体賦活系)といえば、これはすでに知られた脳の機能ですね。
これまでは「これから作る曲は失恋の歌だからマイナーキーだな」などと考えたはずです。でももし週に7曲作るなら、そのうち4曲はこうした"いかにもな理屈"を考えないで自分の脳のストッパーを外し、出てくるままのアイディアで曲を作ってください。
失恋の曲をメジャーにしたっていいし、リズムだけでラップにしたっていい。
たまたまヒップホップの映画を観た後で、失恋の曲を書きたくなって、それがヒップホップの曲調になった時、自分は単純だな、とか思う必要はありません。潜在的に斬新な失恋の曲を作りたい、と日頃感じていたことで、気がつかないうちにヒップホップの映画を観たのかもしれません。動機がいつ始まり、どういう形で収束するか、など「よくわからない」んです。
これを個人的に「超能動態的体験」と呼んだりしています。
「引き寄せる」体験のようなものも、結局は普段から望んでいることで自然と導かれて答えをえる、という意味ではこうした意識の上で意識していない能動的行為と言った方が我々瞬間的に行動しなければならないような現場にいる人間はしっくりきます。
もしそうやって自分の意思のままに音楽を作った時、それが無調音楽だったり、現代音楽になるなら、ポピュラー音楽でヒットチャートに登るのは諦めましょう(笑)。
いえ、諦めがつくと思います。魚が水中に導かれるようなものです。
また学校で学ぶなら「音楽的クオリアの機能」を理解している講師を探してください。かならずそれを肌で知っている先生がいます。直観的講師であり、かつ若い人の直感に可能性を感じておられる講師。
他のブログの記事も読んでいただくと、また違う側面が見えてくると思います。
その2
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