今回はお勉強作品です。ピアノ弾けないけどシリーズ。
できれば良さげなヘッドフォンで聴いていただきたいです。
またはバランスのとれたスピーカーでぜひ。
いつも使っているWAVES Grand Rhapsody Pianoです。より自由自在に使いたくて、今回トライしました。SDとHD音源がセットなのですが、よりキメの細かいHDのほうをよく使います。ピアノ下手でもいい音になる、というのが凄いと思うのです。
Warm Intimacyプリセットを加工してます。
【国内正規品】WAVES Pianos & Keys ピアノ/キーボード・コレクション
これがすごくお得、鍵盤系全部入りだよ!
最近のDAWはすごいねー、という話になるやつです。
でもマジで作ってみました。
これやってみて、一音一音にここまでこだわって考えてると他の仕事に集中できないんですね笑、、
ピアニストに限らず、演奏家って全員無形文化財なんだな、と感じました。
こればかりはやってみないとわからないでしょう。。。
<幻想即興曲>
クラシック全く知らなくてもみんな知ってるショパンのかっこいい曲です。
この曲のポイントは音を硬い粒にしないところ。流砂のように曲線を描き、水しぶきのように自在である様を表現できること。粒ではなく液体にできるかみたいな。
うーん、むずい。。
今回はどのくらい自分のピアノ打ち込みの腕があるんだろうか、とトライしてみました。こんなこと20代でやれよ、って感じなのですが、PCで音楽制作はじめたのはまだ6年ちょっとですので。すみません(それまではQY世代)。
マイクは3本使ってます。
ピアノ音源で、少しライブ感、ホール感を作りたかったので、微妙にぼやけるレベルでバランスをとりました。位相がダブるんじゃないか、というご心配あるかもしれません。耳が超絶良い人は、音が被ってる、と思うかもしれません。
そこは私の耳のレベルの限界ですから、ご容赦いただくしかないのですが、響き部分(倍音?)を豊かにすることでそれなりのホールで演奏している感じが出したかったのです。
またペダルを離したミュート時でも音は部屋鳴りで残響します。その残響の加減もできる限り豊かにしたかったので3種のマイクにしました。
これもどんな音が好みか、結局個人が聴いてきた音楽歴に依存しますので全く合わない、という方もおられるかもしれません。
今回私は、大好きなピアニスト、エヴェ・ポヴウォッカ氏の同曲をモデルに、合わせてショパンの楽譜や研究書などを参考に自身の解釈も含めて作成しました。
ポーランド音楽独特のうねりを自分なりに解釈したので、私のピアノデータを「薄い」と感じるか「これでも濃い」と感じるかは、ホロヴィッツのショパンが好き、とか、アシュケナージが好き、でも別れてしまう感じと同様でしょう。
またMIDIデータについても、
ショパン 幻想即興曲 FANTASIE IMPRONPTU OP.66 Midi Classics Mp3
こちらの二つを参考にさせていただきました。ありがとうございました。
すべて一から見直してポヴウォッカ風に直した後、ショパンの楽譜の指示も少し反映させ、同ピアノ音源ならではの感じを生かすためにペダル指示や表示記号を拡大解釈させていただきました。参考にした楽譜は、
ショパン・ピアノ作品便覧(アマゾンリンクです)
CiNii 図書 - ショパン・ピアノ作品便覧 : 解説と縮少ピアノ・スコア204曲収載
です(二つは同じもの)。ずっと以前買ったものです。
テンポも完全に人間が弾く時の感じをいちいち再現しました。雑多としています。
例えば、プレイヤーが息を吸った時、一瞬だけテンポがふわっと浮くんですが、それを数字で表現しようとすると一瞬のドロップというか、デッドスポットのようにするとそれっぽくなります。
もちろん実際のテンポがこうなっているのではありません。あくまで概略表示です。
テンポは一直線にならないようにデコボコして時々はみ出したりしてます。潜在的に規則的になり過ぎないようにするためです。
ペダルはほとんど楽譜どおりですが、ポヴウォッカ氏の加減を参考にして、踏んでいないところもあります。またピアノ音源の性質上、小さい音がソフトペダルを踏んだ時のような音がして高音がこもってしまうので(私の技術と知識が足らないからかも)、逆にソフトペダルを踏んで、強めに演奏することで、代用しているところもあります。
EQです。目立たせたいメロディの一つ上の音域と倍音キラキラのための高音域を上げ目にしてます。今回の曲は音数が多いので、ぼやかしつつも輪郭を持たせられるかな、、と、思ったのです。
また低音は部屋の残響をイメージしたものです。
これ。冒頭の和音です。
高い音が7ティックずれています。7/1000秒です。当たり前ですがこれがぴったりだと薄っぺらくなります。この世で悪魔的な正確さを持つポリーニ以外完全無欠に正確に打てたピアノを人類に聞かせた人はいません(ここは笑うとこ)。
人の演奏は必ず、ずれます。
ポリーニのスケルツォはよく聴いていました。
ここを9ティック以上離したい人は、荒々しいピアニストが好みでしょう。また6ティック以下だと、より正確で繊細なピアニストがお好みでしょう(DAWの設定テンポにもよります)。
もう、この一発目で好みが出ちゃうんだなぁ、と感じ、これは「どれだけすごいMIDIができるか」ではなく、どのくらい自分の好きを投げ込めるか、というデータになってしまうんだな、と感じました。
また以前のNHKのカツァリス先生の番組で氏が述べていた「ルバートにはA型とB型があり、前者は右手だけ自由になるもの、後者は両手とも自由に動くもの、ショパンはA型が好みだった」的な話を聞き、実は自分もそちらの方が好きで、だからショパンの独特の抑制された詩情が好きなのかな、とか感じ、今回のデータもなるべくテンポに両手が失速しないように頑張ってみました。
何より、私はピアノが全く弾けませんから、全部頭の中のイメージだけを音にしてます。目が見えないけど音楽を作るスティービー・ワンダーの分析もやっていますが、なんとなくわかるような気がするのです。
具現化できない部分を具現化する工夫、みたいなところがイメージ力に必要です。
私は、若い時分の大半を自身の"方法論作り"に捧げてしまいました。
今の仕事を続けていたら到底オーケストレーションを極める、という学習まではいかないでしょう。
そこでピアノ曲の探求に歩を進めています。探求と言ってもこの場合は先人が極めたところに進むだけで、不定調性論探求と違い、レールのある道です。
今回の私の作品のように「自分はここはこう解釈する」というのは、いわば「守破離」の「破」に当たってしまいます。誰からも評価されてもいないのに、解釈を進める、というのは大変危険です。その側面は自分で指摘しておきます笑。
でも自分が聴きたいタイプの「幻想即興曲」にはなりました。
もし時間がある人で、これからプロを目指す、というDTMerのキッズの皆さんは、ぜひ一度打ち込みコピーやってみるといいです。
フレーズ感覚、ずれ方、アクセント、強弱、タイミング、全部学べます。
お試しあれ!
他にもポイントはいくつもあるのですが、自分にできているかどうかわかりませんし、
楽曲は高音質バージョンでAudiostockで販売するまでに聞き直して修正してまいります(YoutubeではYoutube独特のコンプが掛かってしまいます)。
MIDIデータは雑多として商品にはならないのですが、ご希望があれば下記からお問い合わせいただければ、スタンダードMIDIファイルで左右の指のトラックを分けてお渡しします(左右で違う音源使う、と聞いたこともあります)。
何よりWAVESのピアノ良いなぁ、って感じました。
あまり人気がないので私の耳が偏ってるのかな。。
そしていつものDigital Performerの底力に助けられています。上品な音を出させたら右に出るDAWはありません。
これって、一つの音源を極める、って楽器を弾けるようにするのと同じ労力がいるんじゃないか、なんて感じました。
もっといい音源があるのかもしれないけど、そういうのはまた考えます。
行けるところまで頑張っていきましょう。
この曲完璧に弾ける人になら、一刀両断されてもOKです笑。。
<追記>
Audiostock販売用に下記5点を改めて直しました。
・カンタービレ部分のテンポの揺れの意図さ加減を軽減してより聴きやすくしました。
・やはり冒頭部分にペダルを入れました。
ここはいらない!とかってなんで思ったのかわからないけど、他は良くてもせめて冒頭のここを入れておかないと販売版で「変なショパンを覚えてさせてしまう」のは良くないかな、と感じました。
・この下降部分のアクセントに流れをつけました。youtube版は勢いがありすぎます。
・また後半ラストのアルペジオの切り替えが急すぎたので前の部分から少し弱めてふわっと入るようにしました。
・ラストエンディングの上から2番目の音が早い、と感じたので汎用販売用はもう少し意図を削った方が良いと思い後ろにずらしました。
これ、追求してたら人生終わってしまいますね笑。2回ぐらい人生があればいいけど。
音楽家って知らずしらず音楽に命をかけてるんだな、と感じました。