音楽教室運営奮闘記

音楽と教育と経営の雑記ブログ~不定調性論からの展開

M-Bankスティービー・ワンダー楽曲(コード進行)研究レポート公開シリーズ23★★★

スティービー・ワンダーの和声構造

~非視覚的クオリアを活用した作曲技法~

<前回>

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 Music From The Movie "Jungle Fever"

アルバム26;「Jungle Fever(1991)

事例107;Fun Day(CDタイム 0:15-)

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Aメロ

B♭M7 Cm7/F | B♭M7 Cm7/F |E♭m7 A♭7|D♭M7 Cm7 Cm7/F(×2time F7(♭9) |

B♭M7 Cm7/F | B♭M7 Cm7/F |E♭m7 A♭7|Fm7 B♭m7 |

F#m7 B7|Fm7/B♭ B♭7 |E♭ Daug |Cm7/F F7(♭9) ×2

Bメロ

B♭  Cm7/F |B♭ Cm7/F | B  C#m7/F# |E♭M7  |F7(#11) |

B♭  Cm7/F |B♭ Cm7/F | B  C#m7/F# |E♭M7  |F7(#11) |

同曲では、自在に半音転調の進行を、通常のコード進行のように扱っている。

こうした進行感に対する作曲へのアプローチは、いきなりは辿り着けない。まずスタンダードジャズの進行感からかいつまんで学習する事を勧める。

 

   

事例108;Each Others Throat(CDタイム 0:37-)

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Aメロ

B♭7 |Fm7 | B♭7 |Fm7 |

B♭7 |Fm7 |B♭7 A7 |A♭7 G7 |

サビ

G♭7 | G♭7 | G♭7 | G♭7 | G♭7 |G♭7 A♭7| B♭7 C7 |

ラップ調のテイストを混ぜた90年代を象徴するような曲調になっている。しかし凝っているのはやはりこのコード進行である。Aメロの最後は単純に半音ずつ下げていく。

そしてサビの後半は、全音ずつ7thコードが雰囲気を作っている。

聞いたこともないような進行だから採用するのは恥ずかしい、というような価値観は持たなくてよい、ということであり、楽曲の流れる求めに応じて自身の選択肢の中から良いと思える進行感を当て込んで頂きたい。

またスティービー楽曲の中にこうした楽曲事例がある事はまた一つの先例になるわけであるから、どんどん活用していきたい。それにしてもスティービー・ワンダーの“楽曲制作の選択肢”はどこか理解を越えた脳の働きが起きているようにも感じる。

 

事例109;If She Breaks Your Heart(CDタイム 0:20-)

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Aメロ

C  |C  |E♭/B♭ |E♭/B♭ |

A♭M7 |E♭m7 (A♭7) |D♭M7 |Dm7 G7 |

C  |C  |E♭/B♭ |E♭/B♭ |

A♭M7 |E♭m7  |D♭M7 |Dm7 G7 |

Bメロ

CM7 F7(♭5) |Em7(♭5) A7(13) |Dm7 A7 |Dm7 Dm7/A |

E♭7(♭5) |A♭M7 G7 |CM7 |G  |

同曲の聴感上の飛翔感も面白い。

コードをとってみると意外と目新しいコード展開があるわけではない。

ただし何らかの調の中におさまっている、というわけではなくメロディが紡ぎだす次なるコードがスティービーにはだいたい分かっていて、あとはそれに該当するコードをあてこめば良い、という次元で楽曲が作られているようにも感じる。

コードの展開だけではメロディを紡ぐのが困難であり、脈絡を作るメロディが生み出せてはじめてこれらの進行も意味をもってくる、という難度の高い楽曲構成なのではないか、と思う。

最初の四小節はもう少しシンプルに考えるとC-C-Cm7-Cm7である。これが分数コードになり、正体を隠している。このあたりも楽譜を書かず、コードネーム表記でその視覚的バランスを考える必要のない発想であるともいえる。

これを応用するのであれば、CというコードをC/EやC/Gで演奏して、これらが全く違う意味と響きをその都度もつ、と理解して用いれば、コードは変幻自在に変わっていくだろう。それができないので、コード表記の高い音楽を我々は作らざるを得ないのではないだろうか。また7thコードの♭5thコードも活き活きと活用されている。

   

事例110;Gotta Have You(CDタイム 0:44-)

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E♭ |Fm7/E♭ |G♭/E♭ |Fm7/E♭ |

楽曲全体のほとんどの部分がこのコード進行と耳に残るシンセベースのラインで覆い尽くされている。これもスティービーのメロディによるストーリー展開を裏付けている。

何度も書いているが、音楽的なクオリアによる旋律的指向性である。

アレンジによる展開感も当然豊かであり、メロディの起承転結が心地良く構成されている。旨を聴いて真似してみてほしい。

これは個人的な経験であるが、一度だけT.M.スティーブンス(奥様が日本人)が、私がアレンジしたビートルズの”Yellow Submarine”をボーカル録音するという貴重な機会があった(某プロジェクトの折、関係者のつながりでT.M.スティーブンス氏をレコーディングに招待をすることが出来た)。そのレコーディングの折、彼が別途そのCDに一曲提供したいということで、即興でその場で作り始めたが、その際もメロディをリフ的に口ずさみながら作っていった。コードは後付けで楽曲の全体を覆うノリを最優先にしてバッキングを作っていった。完成まで一部始終を見てその場で一緒にコーラスを録音したりなどするなか、今思えば、あのような作曲技法は、彼らのスピリットの一つだったのだろうと、こういう1コード楽曲を聴くたびに思い出す。

 

事例111;I Go Sailing(CDタイム 0:13-) 

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Aメロ

B♭ |Cm7 Cm7/F  |Am7 D7 |Gm7 Cm7/F |

B♭ |Cm7 Cm7/F  |Am7 D7 |Gm7 Cm7 |Cm7/F  |

Bメロ

B♭ |E♭7(♭5) |B♭ |E♭7(♭5) |

B♭ |E♭7(♭5) |B♭ |E♭7(♭5) |

D♭ |F#M7 |Cm7/F F#7  |Cm7/F(?) B♭m7/E♭(?) A♭m7/D♭ |

センターコードをB♭とすると、Am7-D7はVIIm7-III7になる。2-4小節目はm7の順次シークエンスの変形のようになっているので、多少の変化コードが来ても対応しうるバランスを持っている。

この曲も、同時期に作られたものなのだろうか。7th(♭5)コードの使用感に類似性を感じる。テイストや難度にも類似の印象を感じた。

同曲のBメロのラインに特殊性を感じた。

後半のm7の連鎖はコードを聴き取れていない。各自自由に応用頂きたい。

   

事例112;Jungle Fever(CDタイム 0:53-)

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サビ

A7  |A7  |A7  |A7  |

A7  |A7  |A7  |A7  |

Bメロ

A7  |F#m7  |G7  |Em7  |

A7  |F#m7  |G7  /A  /B  /C# | /D  /E  /F#  /G |

この曲は旋律的クオリアの高い音楽性を持っている。

楽器の旋律とメロディの旋律が同時進行で進んでいく。こうしたリフが流れている場合は、コード機能による進行感が必要ない。ワンコードでも時間経過とリズムの変化、精神的高揚があれば、楽曲は展開していく。

この曲でのBメロの後半のG7コードの上で、地面が盛り上がっていくようにコードの範疇を超えてメロディが楽曲の展開をひっぱっていく。まさに無敵のメロディメーカーである。逆をいえば、メロディさえ固まっていれば、コードはどのような進行でも良い、ということになる。ここでもBメロの締めは、スティービーらしい難度の高いメロディによって作られている。二度繰り返すのだが、一度目の戻る時の音程の安定さは素晴らしい。

このような手法もコーラスの締めの選択肢としてとても面白いのではないだろうか。

これも非視覚的な感覚で考えると、眼を瞑ったまま手を伸ばし、伸ばし伸ばして、どんなものに触れるか分からないようなスリリングが体現されているように思うがいかがであろう。これも彼ならではの知覚感覚が音楽に活かされているように感じられた。

 

事例113;Chemical Love

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(CDタイム 0:38-)

Aメロ

B♭  |Cm Gm | B♭  |Cm Gm |

B♭  |Cm Gm | B♭  |Cm Gm |

A♭ |Fm  |×2

(CDタイム 1:53-)

Bメロ

B♭ |Gm7  |A♭ |Cm  |

E♭  |Gm7  |Fm7  |F7  |

同曲も一見地味な印象ながら、スティービーらしさがちりばめられている。

面白いのはBメロである。これらのコードは確かにB♭メジャーキーのダイアトニックコードかもしれない。しかしA♭やFm7の不可思議な響きが加わり、また、7thコードとm7コードが短三度や長三度で連鎖して、シークエンスを組んでいる。

I |VIm7  |VII♭ |IIm  |

IV  |VIm7  |Vm7  |V7  |

メロディも対句を組んでいるようで、起承転結もある。

こんな進行が作れること自体が私には驚きである。ひょっとすると、メロディが先にできていたのかもしれない。

いずれにせよ、このアルバムはスティービーの作曲技術が大変安定して高精彩を放っている。まさに「どんな和声が連続しても、意味を見いだせる歌詞とメロディを乗せることができる」という不定調性の概念を地で行っている。

人は毎日同じだけ違う情報をインプットして、同じだけ違う考えを持っているのだから、他者の考えに驚かないわけがない。そんな他人が10人周囲にいたら、新しい情報でパンクしてしまう。そしてなんで自分はものを知らないのだろう、と落ち込んでばかりである。

しかし相手だってそう思っているのであるから、この際、持っている知識や肩書、経験や先入観や宗教観など毎朝全部捨てて感覚を頼りに丁寧に接していく、という作業が、結果的には、スティービーのような人間力に近づくのではないだろうか。五感に頼るのではなく。

どんなに頭が良くても、目で見なければ分からない事がある。しかし目で見てしまうから分からなくなることもある。まさに彼の個性と、体で学んできた人生感がそこに表現されているだけ、という事になる。しかしながら自分の仕事に人生観を注ぎ込める、というのはなんと素晴らしいことだろう。

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