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音楽と教育と経営の雑記ブログ~不定調性論からの展開

Innervisionsで完成されたスティービーコード進行/研究レポート公開シリーズ15-1

2019.6.12⇨2020.7.29更新

スティービー・ワンダーの和声構造

~非視覚的クオリアを活用した作曲技法~

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アルバム17;「Innervisions(1973)

事例64Too High (CDタイム0:31-)

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Aメロ

F#M7(♭5)/E  EM7(♭5)  DM7(♭5)/E |CM7(♭5)/E  B♭M7(♭5)/E A♭M7(♭5) /E |

Am7 |Am7 |

Bメロ

Am7 |C#m7 F#m7 |Am7 |C#m7 F#7 |D/E |B♭/C |D♭/E♭ |

いよいよ調性による重力を脱する作りが完成されている。

ホールトーン的なメロディと、コード、そしてBメロは短三度と長三度でm7が動く形式で作られている。調によるバランスを放棄し、別のバランスを繰り上げる方法の一つとして、同一タイプのコード連鎖=和声単位旋律、同じ音程間の移動(短三度の連鎖等)によって平行感覚を保つことが出来る。

イントロのフェイクは前作のアルバムから引き継いだ、1コード上で展開する旋法的メロディに感じられる。ホールトーンスケールを用いた楽曲の例として覚えておいても良いだろう。長調、短調の楽曲には、風景感や色彩感があるが、ホールトーン的な楽曲にはそれがない。しかし非視覚的な音楽を作る、という意味では、色彩は全く別な概念に置き換えられるので、全く同列になる。

   

事例65Visions (CDタイム 0:31-) 

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Aメロ

Bm7(9) |C#m7(9) |Bm7(9) | E♭7(#9) D7(9) |E7(#9) E♭7(9) |F#7(♭5) |

Bm7(9) |C#m7(9) |Bm7(9) |C#m7(9) |

Bm7(9) |C#m7(9) |Bm7(9) | E♭7(#9) D7(9) |E7(#9) E♭7(9) |F#7(♭5) |

Bm7(9) |C#m7(9) |Bm7(9) |C#m7(9) |

Bメロ

E♭7(#9) |G#m7(♭5) C#7 |F#m F#m/F F#m/D# |G#sus4 G# |

C#m7 C#m7/B |A#m7(♭5)  |D#m7(♭5) G#7 |C#m7 F#aug |〜Aメロ

 

同曲もdegreeで表現するよりも、Bm7をセンターコードにおいて展開していく旋律構成を行う方が理解しやすいです(不定調性)。

 

m7、9thの連鎖が均整を作ってます。

 

7thの連鎖の不可思議感は、前例“Too High”にも通じます。

また時折現われるIIm7(♭5)-V→Im感を用いた連鎖感が穏やかな短調感を演出していて、違和感が起きそうになるあたりに絶妙に挿入されてます。

“そろそろこの流れでいったら散漫な印象になる”という感覚に気が付かなければ、作曲は不可思議感を残し過ぎて完成してしまう。そしてこの気づきの感覚が究極に難しく、「音楽理論を学んでも曲が作れない一番の原因」です。

不定調性論では、そのためにその感覚を鍛えるためにはどうすればいいの?について毎回言及しています。

 

事例66Living for the City (CDタイム 0:11-) 

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Aメロ

F# G#m/F# |A/F# G#m/F# |F# G#m/F# |A/F# G#m/F# |

F# G#m/F# |A/F# G#m/F# |F# G#m/F# |A/F# G#m/F# |

B  |C#  |F# G#m/F# |A/F# G#m/F# |×2

Bメロ

3/4 F#M7 |D#m7(♭5) | DM7 | C  |C/B♭ |A7 (またはA△) |G  |4/4 F#  |

 

Bメロはユーミンなども使う下降進行で、不定調性進行。

これがスティービー由来のものになると、やはりクリシェ進行を発展させた概念として捉えることができます。

一つ押さえた和音の指の形を、重心を維持して一音一音(又は数音)変えていくことでコード進行は作れます。

クリシェ進行もそうした簡易な動きの割に生まれるダイナミックな印象が特徴です。

 

ドラマタッチの間奏も面白いです。

 

事例67 Golden Lady (CDタイム 0:41-)

こちらをご参照ください。

スティービー・ワンダー"Golden Lady"のIV#m7からその先へ

 

事例68Higher Ground (CDタイム 0:23-) 

こちらをご参照ください。

恋愛と勉強は方法論でうまくいくか(?);Higher Ground 

最後のC#sus4 G#  |B/C#  C#7にスティービーの名刺代わりの一工夫。

V-II-IV/Vの感じはビートルズ的でもあり、スティービー的でもあります。

 

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