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音楽と教育と経営の雑記ブログ~不定調性論からの展開

M-Bankスティービー・ワンダー楽曲(コード進行)研究レポート公開シリーズ12★★★

スティービー・ワンダーの和声構造

~非視覚的クオリアを活用した作曲技法~

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アルバム14;「When I'm Coming From」〜青春の軌跡〜(1971)

事例49Think Of Me As Your Soldier (CDタイム0:12-)

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Aメロ

E♭ |A♭m6 |B♭sus4 |A♭m6 |

E♭/B♭ |Cm |Gm C |F7sus4  B♭7 |

E♭ |A♭m6 |B♭ |A♭m6 |

E♭/B♭ |A♭m6 | E♭ |E♭ |

Bメロ

Fm7  |E♭M7 |Fm7  |E♭M7 |

Cm7(♭5)  F7 (♭9)|B♭M7  Gm7 |

Cm7  F7(♭9) |B♭sus4 B♭ |

=degree=

Aメロ  Key=E♭

I |IVm6 |Vsus4 |IVm6 |

I/V |VIm |IIIm VI |II7sus4  V7 |

I |IVm6 |V |IVm6 |

V |IVm6 |I |I |

Bメロ

IIm7  |IM7 |IIm7  |IM7 |

(key=B♭)IIm7(♭5)  V7 (♭9)|IM7  VIm7 |

IIm7  V7(♭9)  |Isus4 I(Key=E♭のVとして) |

いよいよスティービーが全曲にわたりコンポジションを行うアルバムになってくる。この曲でもIVm6の響きが活用されている。スティービーの曲の独特の“灰色の陰り”は私にとっては印象的だ。こちらの勝手な先入観であるが、光を感じるその度合いのような彼の感覚がそこに表現されているようなコード感がある。

また同曲はE♭とB♭の近親調転調が用いられている。

近親調の転調は、色合いが似ているぶん、移行しやすいがダイナミックな効果が薄い。その微妙な色合いが劇的に感じられる状況において活用ができれば、ダイアトニックコードの使用範囲が拡張する、と考えることができる。

CメジャーキーとGメジャーキーでは、

CM7 Dm7 Em7 FM7 G7 Am7 Bm7(♭5)(Cメジャーキー)

GM7 Am7 Bm7 CM7 D7 Em7 F#m7(♭5)(Gメジャーキー)

であるから、Cメジャーキーを中心に書き出すと、

CM7 Dm7 D7 Em7 FM7 F#m7(♭5) GM7 G7 Am7 Bm7 Bm7(♭5)

というバリエーションが一曲の中で使えることになる。こうしたグルーピングを不定調性論では、“モーダリティーモーション”という考え方で複調的な音楽の構築を考えていく。

こうすると、D7はCメジャーにおけるドッペルドミナントとなり、GメジャーキーのD7ではなくなる。またF#m7(♭5)はAm6の転回形となり、平行短調の和音の一種となる。こうした関連性が新たに出来上がる。そして曲中でGM7が中心になると、結果としてGメジャーキーが伝統的な解釈からも成り立ってくるわけである。

またこれらの発想を展開して、

例)

CM7  |GM7  G7 | CM7  |GM7  G7 |

CM7  |GM7  G7 | CM7  |GM7  G7 |

というような音楽構造も作れる事になる。このときメロディは別にCメジャーキーでも良い。このような発想可能性を設けることで、Cメジャーキーで出来るメロディにGM7を挟む、という発想に通常至らない部分の伸び白を方法論上に作ろうと言うわけである。

なお、通常の明らかな転調構造の場合は、教材のほうでは“トーナリティモーション”ト言っている。

 

同アルバムの「Do Yourself A Favor」はスティービーと当時の伴侶シリータとの共作であるが、E♭7(E♭マイナーペンタトニック/ブルーススケール)のワンコード/ワンモード的な楽曲の題材として参考になるだろう。こうした曲で旋律によって音楽を作っていく構造のインスピレーションを感じるとよいだろう。

   

事例50Something Out Of The Blue (CDタイム 0:20-) 

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Aメロ

Fm7 Fm7/E♭ |B♭/D  |A♭ |E♭/B♭ |

A♭m  |E♭ |A♭m  |D♭ C7 |

Fm7 Fm7/E♭ |B♭/D  |A♭ |E♭/B♭ |

A♭m  |E♭ |A♭m  |E♭ |

Bメロ

B  |B(E♭m7的)  |A♭m7  |A♭ |

Fm7 |Dm7 |Gm7  |C7sus4 C7 |〜Aメロへ

=degree=

Aメロ Key=E♭

IIm7 IIm7/I |V/VII  |IV |I/V |

IVm  |I |IVm  |VII♭ VI7 |

IIm7 IIm7/I |V/VII  |IV |I/V |

IVm  |I |IVm  |I |

Bメロ

B=I  |I  |VIm7  |VI |

Fm7=I |VIm7 |IIm7  |V7sus4 V7 |〜Aメロへ

実験的な和声進行である。IVmが怪しい雰囲気を醸し出している。スティービーのIVmの感覚はここ数枚のアルバムで特に研ぎ澄まされているような印象を受けないだろうか。Bメロにおける短三度移行のm7連鎖も過去に使用例がある。この曲でも、より楽曲の音楽的なクオリアを増強する役目を担っている。

これは私の考え方であるが、こうしたコード感はやはり使っていかないと自然な感覚で用いることが出来ないように常日頃感じている。

是非同曲の流れに皆様各位の風景を描き、その和音の響き、アレンジ、メロディ、歌詞を深く解釈頂いて、自曲の連想に活用頂きたい。また自分の好きな響き、好きな進行感は必ず多用されるので、「多用しているから何か新しいことを」と考えるならば「多用される技のより拡張された使用感」を求めて、スティービーがクリシェ進行を多用する、という方法もあるので研究頂きたい。ユーミンのように、全く過去と同じことをしない、というやり方もあるだろう。自分のやりたいようにやりたい事をやる、まずそうした日々を送り続けて頂きたい。

 

事例51I Wanna Talk To You (CDタイム 0:15-) 

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C 7(blue feel) |F7sus4  F7 |B♭7 |E♭ G7 |〜

これはセンターコードをC7として、展開していく。blue feelというのは、ブルージーなペンタトニック的フレーズとなっている。

ここでCをIとすると、IV7sus4が響くことになる。ユーミンの場合は、主和音に7thを乗せないことでIVsus4を繰り出す荒技があったが、この曲の場合は主和音(センターコード)でC7を提示しているので、F7sus4は必然的に関連性のある和音となる。

またそこからのG7への流れの脈絡は見事にブルージーである。

風が吹くような感じのするIV7sus4だ。風は目がみえなくても感じる。肌にあたる風が彼に惹き起こすクオリアはどんな世界であろう。

 

事例52Take Up A Course In Happiness (CDタイム 0:18-) 

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Aメロ

G  D7(#5) |G  G/E |Cm7 F7 |Edim7  Edim7/B♭ |

Am7(♭5) |B♭ |E♭M7 |D7  |×2

サビ

G   |D/F#  |Em  |Em7/D G7 |

Cm7  |Cm7  |E♭M7 |D7  |

=degree=

Aメロ  センターコード=G

I  V7(#5) |I  I/III |IVm7 VII♭7 |VIdim7  VIdim7/III♭ |

IIm7(♭5) |III♭ |VI♭M7 |V7  |×2

サビ

I  |V/VII  |VIm  |VIm7/V I7 |

IVm7  |IVm7  |VI♭M7 |V7  |

同曲もアルバムの後半で作曲の実験でもするかのように同主調間の和音が入り組んだ構成になっている。

V7(#5)のサウンドにもスティービーらしさが埋め込まれているし、サビでのIVmへ展開も聴き慣れてきた。こちらが聴き慣れるくらいだから、スティービーの中では既に明確な音楽的脈絡を見つけていたのであろう。

またAm7(♭5) |B♭の流れも活用できるのではないだろうか。

例)

C   |Dm7(♭5) |E♭ |

実に自然に同主短調の和音に移行できる。この進行感も「同主短調への移行である」と考えるより、IIm7(♭5)への移動感と、VIIm7(♭5)-Iへの移行感が連鎖したものであり、それらの移動感をダイアトニックとして、ではなく、単純に和声連鎖として考えることで音楽的脈絡を作ればよいだろう。

   

事例53Never Dreamed You'd Leave In Summer (CDタイム 0:11-)

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Aメロ

C   CM7|FM7  |C  CM7 |FM7  |

C   CM7|FM7  |D/A   |D/A  G/A   |

Bメロ

Dm7 |A7  |Dm7  |Dm7 /C# /C /B  |

B♭ |A7 |G#7(♭5) |Dm7/G  |〜

Aメロ

C   CM7|FM7  |C  CM7 |FM7  |

C   CM7|FM7  |D/A   |D/A  G/A   |

Bメロ

Dm7 |A7  |Dm7  |Dm7 /C# /C /B  |

B♭ |A7 |G#7(♭5) |Dm7/G  G/A |〜

A'メロ

D   DM7|GM7  |D  DM7 |GM7  |

D   DM7|GM7  |E/B   |E/B  A/B   |

Bメロも全音上がったまま〜

=degree=

Aメロ key=C

I  IM7|IVM7  |I  IM7 |IVM7  |

I   IM7|IVM7  |II/VI   |II/VI  V/VI   |

Bメロ

IIm7 |VI7  |IIm7  |IIm7   /I# /I  /VII  |

VII♭ |VI7 |V#7(♭5) |IIm7/V  |〜

Aメロの三段目FM7〜Dへの陽転、BメロへのDマイナーキーのような陰り、後半への半音下降のベースラインからの同主短調VII♭そして又半音下降を用いて(後曲で、この半音感については触れる)えも言われぬ悲しみのようなG#7(♭5)へのドラマチックな季節の色合いが、実に素晴らしい。転調も全音上げ、ギリギリの高さで切なく歌われる同曲のスティービーの楽器としての声の美しさが存分に活かされている。歌詞についての逸話は有名であるが、ここでは和声から感じられる風景を自由に感じ、その感覚そのものを自曲に活かして頂きたい。

私個人としては、|Dm7 /C# /C /B  |の部分のベースラインの下降があるのとないのとではこの曲の表情が全く違うように感じた。この下降はスティービーにとって何なのだろう。階段を降りゆくようなイメージか、何かが手からこぼれ落ちて壊れるようなイメージか。

このラインはアレンジ上の旋律であり、和声(コード進行としての大きな和声の流れ)はあまり関係がない。しかし音楽上非常に重要な表現になっている。こうしたアレンジ上の表現も音楽的クオリアによる旋律指向性であるといえる。

あわせてこの半音移行、というのがいよいよ意味のあるものに確立されてきたようにも感じる。意図しているのか、いないのかは分からないが、クリシェ進行といい、コードが半音で連鎖して下降していくような流れといい、このあたりの楽曲をみるにつけ、スティービーにとってこれらの方法論が特徴と言えるまでに確立されてきている。鍵盤を把握するための変化記号の多さ、については参考文献に言及があったが、これらのクリシェ進行や半音連鎖も、鍵盤を指だけで把握しやすい進行である、としたらその意味では納得である。

しかしそれだけで音楽手法にまでここまで昇華されるであろうか。

何となくこのあたりの音楽表現に彼の持っている世界感との調和が見られるような気がしてならない。もう少し追求してみよう。

 

事例;54 Sunshine In Their Eyes (CDタイム 0:12-)

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Aメロ

E♭ E♭/G |A♭ |Adim7 |B♭ |

D♭M7  D♭7 |G♭M7  E  |E♭7 D |

D♭  |×2

 

Bメロ

E♭m7  A♭m7 |E♭m7  A♭m7 |

Dm7  Gm7 |Dm7(9) |

E♭m7  A♭m7 |E♭m7  A♭m7 |

Dm7(9) Fm7(9) |A♭m7(9) B♭7 |

 

Cメロ(CDタイム2:25- )

Cメロ

A♭  |E♭aug/(A♭?) |F#  |F#m |×2

Dメロ

A♭ |A♭  /G♭ /E |D♭/E♭ |D♭/E♭ |×2

Eメロ

F7  B♭m7 | E♭7 |A♭ |〜Cメロへ

ビートルズの『アビーロード』の後半のような組曲を作品である。冒頭にも書いたがスティービーにとっての太陽の光は、どのように感じられているのだろうか。こちらの勝手な想像であるが、彼なりの神々しさを感じているからこそ、あのような歌詞が出来上がるのではないだろうか。

この曲も実験的な要素が強い。

Aメロの流れも二重調的なコンセプトである。E♭キーと、D♭キーが同居しているような流れになっている。また前曲でも示されたdim7が単品で役割になって使用されている。

Bメロではm7コードを連ねてシークエンスの転調的を作っている。私などは、作曲を始めた当初、m7コードの連鎖は大変難しく、とても歌の乗る音楽では、音楽的な脈絡を作れないのではないか、と考えていたが、近年ユーミンやスティービーが示した事例を目にする度、それが単なる想像力の欠如であり、勝手な先入観であると思うようになれた。

それが実際万人にとって脈絡のあるものである、というつもりはない。しかし少なくとも私は、彼らの作品で使用されるm7に美しさと楽しさを確かに感じることができるようになった。

 

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