2020-05-27 転調未実施進行感のコード進行マジック〜スティービー・ワンダーレポート公開シリーズ11 スティービー・ワンダー レポート 2019.5.15⇨2020.5.27更新 スティービー・ワンダーの和声構造 ~非視覚的クオリアを活用した作曲技法~ 前回 www.terrax.site 目次ページはこちら アルバム13;「Sighed,Sealed & Delivered」(1970) 事例45;Never Had a Dream Come True (CDタイム0:00-) open.spotify.com イントロ B♭ |Dm |Cm F |B♭ | B♭ |Dm |Cm F |B♭ Cm Dm | Aメロ E♭ |B♭/D |D |Gm B♭7 | E♭ |B♭/D |D |Gm B♭7 | Bメロ A♭ |E♭ |A♭ |E♭ | A♭ |E♭ |F |F B♭7 | Aメロ E♭ |B♭/D |D |Gm B♭7 | E♭ |B♭/D |D |Gm B♭7 | Bメロ A♭ |E♭ |A♭ |E♭ | A♭ |E♭ |F |F G5 A5 |〜イントロへ =degree= イントロ Key=B♭ I |IIIm |IIm V |I | I |IIIm |IIm V |I IIm IIIm | Aメロ IV |I/III |III |VIm I7 | IV |I/III |III |VIm I7 | Bメロ Key=E♭ IV |I |IV |I | IV |I |II |II V | Aメロ key=B♭ IV |I/III |III |VIm I7 | IV |I/III |III |VIm I7 | Bメロ Key=E♭ IV |I |IV |I | IV |I |II |II III5 IV5 |〜イントロへ スティービーがメインでクレジットされてます。 BメロのA♭はB♭キーのVII♭。 そしてA♭-E♭を繰り返すシークエンスで音楽的脈絡を印象づけ、転調を意味あるものにしています。 そのあとのFはE♭キーでのIIで、戻るべきB♭キーのV。 Bメロの最後の小節は仕掛けになっていて、転調感が無理なく移行できるようブレイクなども印象感のスムーズな移行。 またイントロに戻る際の5をつけたコードは不定調性音楽論における原素和声単位。いわゆるパワーコード。 三度のない五度のコード。 これにより、B♭への呼び水としてイントロのラインに戻ります。 同アルバムの「Heaven Help Us All」における、CDタイム1:19-からブレイクで、ボーカル先行で半音上げて転調するテクニックが用いられています。 事例46;Joy(Takes Over Me) (CDタイム 0: 06-) open.spotify.com Aメロ Bm (BmM7) |Em7 |Bm |Em7 | G |A |B |B |×2 Bm7 |Bm7 | Bメロ E7 |E7 |B7 |B7 | E7 |E7 |B7 |B7 | D |E |F# | =degree= Aメロ Key=Bm Im (ImM7) |IVm7 |Im |IVm7 | VI♭ |VII♭ |I |I |×2 Im7 |Im7 | Bメロ key=B blues〜Bm IV7 |IV7 |I7 |I7 | IV7 |IV7 |I7 |I7 | III♭ | IV |V | ブルースとロックのハーモニーの活用。 こうした7thコードの変幻自在な利用については、ビートルズ研究の際に分類し言及をしてきたので、ここでは割愛します。 ブルース和音は、ブルージーな印象をオートマチックに取りこんでくれます。I,Im,VII♭,VI♭,III♭はロックで表現しやすいエモーショナルな和音。 事例47;I Gotta Have a Song (CDタイム 0:11-) open.spotify.com Aメロ F# B |G#m C#7 |F#m F#m/B |E | F# B |G#m C#7 |F#m F#m/B |F#m7/B G#/A# | Bメロ D# D#/C# |B |F# F#/E |D | Cメロ D DM7 |Bm7 Bm7/A |G#m7(♭5) |F# | G#m7(♭5) |F# |G#m7(♭5) |F# |G#m7(♭5) |〜A メロ =degree= Aメロ Key=F# I IV |IIm V7 |Im Im/IV |VII♭ | I IV |IIm V7 |Im Im/IV |Im7/IV II/III || Bメロ センターコードD→F#のシークエンス I I/VII♭ |VI ♭ |I I/VII♭ |VI ♭ | Cメロ Key=D〜F# I IM7 |VIm7 VIm7/V |(key=F#)II#m7(♭5) |I | II#m7(♭5) |I |II#m7(♭5) |I |II#m7(♭5) |〜A メロ スティービーもクレジットされてます。 Bメロシークエンスは、ビートルズなどが作ったメジャーコードの連鎖の発展、応用形といってよいです。 Aメロは、F#がセンターコード。 流れが奇妙ですが、大変面白いアイデアだと思いました。 事例48;Something to Say (CDタイム 0:04-) open.spotify.com 1コーラス B♭ B♭/A |Gm7 Gm7/F |Em7(♭5) |A7 | B♭ |Dm7 |E♭M7 |E♭M7 | C7 |C7 |F7sus4 |F7 E | E♭M7 |C7sus4 C7 |F7sus4 |F7 | =degree= key=B♭ I I/VII |VIm7 VIm7/V |IV#m7(♭5) |VII7 | I |IIIm7 |IV♭M7 |IV♭M7 | II7 |II7 |V7sus4 |V7 V♭(経過和音) | IVM7 |II7sus4 II7 |V7sus4 |V7 | 展開部1 (CDタイム 1:18-) B♭ B♭/A |Gm7 Gm7/F |Edim7 |Edim7 | Fm7 |B♭7 |E♭M7 |E♭m7 A♭7 | 展開部2(CDタイム 1:36-) D♭ D♭/C |B♭m7 B♭m7/A♭ |Gdim7 |Gdim7 | F#m7 |Cm7(♭5) F7 |B♭M7 |B♭M7 | 〜1 コーラスへ、その後展開部1がkey=B、展開部2;Key=Dで展開。 =degree= 展開部1 (CDタイム 1:18-) key=B♭ I I/VII |VIm7 VIm7/V |IV#dim7 |IV#dim7 | Vm7 |I7 |IVM7 |IVm7 VII♭7 | 展開部2(CDタイム 1:36-) Key=D♭ I I/VII |VIm7 VIm7/V |IV#dim7 |IV#dim7 | IVm7 |VIIm7(♭5) (key=B♭)V7 |IM7 |IM7 | IV#m7(♭5)-VII7から続くB♭M7がIVM7的にまたはII♭M7的に響きます。 穏やかな転調感があります。 I Gotta Have a Songよりも明確な音楽的脈絡を私は感じました。 ユーミンレポートの際に紹介した、同様のメロディでコード展開を変える、というコンセプトに近い方法論が採られています。 曲の後半では、展開部2がDに半音上がった状態で、その最後の二小節をBM7 |CM7 ||として、さらに転調すると(半音上がると)みせかけて、そのままDのキーで転調せずにエンディングへと進んでいます。 このCM7はVI♭M7のように響かせ、またDに戻るわけですが、これもなかなか精密な調性感がないと表現できない感じバリバリ。 たしかに「転調しないこと」で、できる“転調未実施進行感”という印象があります。 不思議なミスディレクションを感じ斬新!! 手品みたい。 例) CM7 |Dm7 G7 |A♭7sus4 |A♭7 | CM7 |Dm7 G7 |A♭7sus4 |A♭7 | というような流れを作っているようなもの。 使えない、と思ってるのはこちらの勝手な先入観です。 目次ページはこちら その12へ www.terrax.site