音楽教室運営奮闘記

不定調性論からの展開紀行~音楽と教育と経営と健康と

IVsus4、マイナーコードの連鎖~不定調性進行感が増したアルバム;スティービー・ワンダーレポート10-1

2019.5.8→2020.3.11更新

スティービー・ワンダーの和声構造

~非視覚的クオリアを活用した作曲技法~

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アルバム12;「My Cherie Amour(1969)

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事例38My Cherie Amour (CDタイム0:00-)

イントロ

G#7 ||F#M7 |BM7  |BM7 |C#M7 |

F#M7 |BM7  |BM7 |C#M7 G#7(♭9,♭13) |

Aメロ

C#M7 |F#sus4 |BM7  |G#7sus4  G#7|

C#M7 |F#sus4 |BM7  |G#7sus4  G#7|

Bメロ

F#M7 |G#7  |B7(♭5)  |B♭7 |E♭m7 |

G#7 |C#M7 | C#M7 G#7(♭9,♭13) |

※×2後イントロに戻りC#M7 A7 |半音上に転調

=degree= Key=C#からDに最後転調

イントロ

V7 ||IVM7 |VII♭M7  |VII♭M7 |IM7 |

IVM7 |VII♭M7  |VII♭M7 |IM7 V7(♭9,♭13) |

Aメロ

IM7 |IVsus4 |VII♭M7  |V7sus4  V7|

IM7 |IVsus4 |VII♭M7  |V7sus4  V7|

Bメロ

IVM7 |V7  |VII♭7(♭5)  |VI7 |IIm7 |

V7 |IM7 | IM7 V7(♭9,♭13) |

ユーミン楽曲で登場していたIVsus4がここに登場します。

年代的にスティービーが先のリリース。

これがVII♭M7への二次ドミナントになっています。

 

前回のアルバムで示された不定調性進行がさらに進化しています。

この曲も共作だけど、いよいよスティービーの楽曲の特徴が色濃くでてます。

 

本来IVにはsus4はつきません。

このコード感を持ってきたとき、メロディを作ることが出来るかどうか、です。

“こんな進行ありだろうか”と思いながらも完成させる確信が持てるか、です。

 

また、スティービーの楽曲には、augサウンドも出てきますが、C△で#5音を和音の上で歌うことができるからこそ可能な転調利用と言えます。テンション感を熟知していつでも三和音の上で♭13thが歌える技巧です。

 

事例39Hello Young Lovers (CDタイム0:23-)  

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Aメロ

A♭ |A♭6 |A♭M7 |A♭6 |

A♭  |F7 |B♭m B♭mM7 |B♭m7  B♭m6 |

Bメロ

B♭m |B♭m(#5) |B♭m6 |B♭m7 |

B♭m6 |E♭7 |A♭ G♭ |B  B♭ E♭7 |〜Aメロ

=degree= key=A♭

Aメロ

I |I6 |IM7 |I6 |

I  |VI7 |IIm IImM7 |IIm7  IIm6 |

Bメロ

IIm |IIm(#5) |IIm6 |IIm7 |

IIm6 |V7 |I  VII♭ |III♭  II V7 |〜Aメロ

Oscar Hammerstein, Richard Rodgersのカバー曲。

Iにおける6th,M7thの展開、IImのクリシェが二種類存在する曲です。

こうしたパターンの楽曲をなぜ彼が採用するか、というところに音楽活動の根本的な指針が隠されているようと考えると、これは信念なのではないか、という思いがよぎります。

 

スティービー・ワンダーはなぜクリシェ進行を用いるのか。今回の123曲の中に20曲前後の同コンセプトの曲があります。

ビートルズの時は全213曲中取り上げたのはクリシェは6曲だけ。

 

事例40Light My Fire (CDタイム 0:14-)

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Aメロ

D♭m7 |B♭m7 |D♭m7 |B♭m7 |

D♭m7 |B♭m7 |D♭m7 |B♭m7 |

Bメロ

B  C#  |F#  D#m |B  C#  |F#  D#m |

B  A#m |G#m7 |G#m7 |〜

Doorsの楽曲。

後半のキーはF#でAメロは、F#をセンターにすると、Vm7-IIIm7にはなる。

 

メジャーコードはいくつも連鎖する事が出来るのであるが、マイナーコードの連鎖は難しいです。

ポピュラーな手法としては、

IIm7  IIIm7 |IVm7  Vm7|VIm7  |

同主短調のm7を活用しています。

 

Key=CとCmとすると、

Cm7  |Am7  |~

です。CマイナーキーのImとCメジャーキーのVImの組み合わせ!

この進行はスティービーも自身の曲で後に用いています。

転調感の連続、というよりも、m7が短三度で連鎖している状況にどのような音楽的風景、印象を覚え、それが活用できるか、をあなたがどう考えるか、です。

 

 

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