音楽教室運営奮闘記

音楽と教育と経営の雑記ブログ~不定調性論からの展開

M-Bankスティービー・ワンダー楽曲(コード進行)研究レポート公開シリーズ9★★★

スティービー・ワンダーの和声構造

~非視覚的クオリアを活用した作曲技法~

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アルバム11;「For Once in My Life(1968)

事例29For Once in My Life (CDタイム 0:14-) 

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Aメロ

F  Faug |F6  F7 |Gm GmM7 |Gm7 |

Gm GmM7 |Gm7 C7 |F  C7(♭13) |F |

Bメロ

F  |Faug |Dm7 |B♭M7 |

Am7 |Dm7  |Gm7 Am7 |B♭M7  E-E♭-D-G-C7 |

A'メロ

F  Faug |F6  F7 |Gm7 |C7 |

Gm GmM7 |Gm7 C7 |F    |Cm7 E♭/F  |

B'メロ

F  |Faug |Dm7 |G7 |

Am7 |Dm7  |Gm7 C7 |F   E♭-A♭|D♭ C7(♭13)|

F#   E-A |D  C#7(♭13)|〜

=degree=

(key=F)

I  |Iaug |VIm7 |IVM7 |

IIIm7 |VIm7  |IIm7 IIIm7 |IVM7  VII-VII♭-VI-II-V7 |

A'メロ

I  Iaug |I6  I7 |IIm IImM7 |V7 |

IIm IImM7 |IIm7 V7 |I    |Vm7 VII♭/I  |

B'メロ

I  |Iaug |VIm7 |II7 |

IIIm7 |VIm7  |IIm7 V7 |I   VII♭-III♭|VI♭ V7(♭13)|

I#   VII-III |VI  V#7(♭13)|〜(key=F#でA〜B'まで)

クリシェが多用されている。ここではaugを用いる和音の五度が上昇するタイプと短三和音のルートが下降していくタイプの進行が組み合わされている。この曲のように、二つのクリシェを組み合わせる進行は先にも用いられた。

この曲はスティービーの作曲の先生であるロン・ミラーの作品である。そう考えると、スティービーのクリシェ好きは先生譲りなのかもしれない。

また、この曲では1コーラス目と2コーラス目のコードパターンが異なる歌曲となっている。この作風について思い出すのがユーミンの楽曲構造である。ユーミンもスティービーのことが好きだ、と文献に書かれていたが、作曲技法面でどの程度影響を受けているかまでは書かれていない。

また、A'メロのCm7からE♭/F的な流れでFのままB'メロが進行するのも、いわばミスディレクションであり、ある種の進行感がある。

 

事例30I Wanna Make Her Love Me (CDタイム0:18-)

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D♭ |G♭ |B A♭ G♭  |×4

D♭ |A♭ |E G♭ |D♭ |×4

こちらは1コードというわけではないが、パターン化されたベースラインの上で、D♭ペンタトニックスケールでラインが自由に作られ、それが展開されていく曲である。スティービーもクレジットされている。

アフリカンミュージックのようなテイストもあるし、ペンタトニックと縦ノリのリズムが日本人にはなじみやすい曲調である。

 

事例31I'm More Than Happy (CDタイム 0:01-) 

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Aメロ

B♭ m7 |E♭7 |B♭ m7 |E♭7 |

Bメロ

A♭ |B  C#  A♭ |A♭ |B  C#  A♭ |〜

=degree= センターコードA♭

Aメロ

II m7  |V7 |IIm7 |V7 |

Bメロ

I   |III♭ IV  I |I   |III♭ IV  I |〜

センターコードと表記したのは、楽曲がA♭のメジャーキーのII-VとマイナーキーのIII♭がセクションごとで現れるからである。不定調性論において楽曲を作る時の起点とするコードという発想で置かれる最初のコードのことである。曲を作るとき、まずコードを置く、その最初のコードが発想の起点であり、センターコードになる。調や機能は後から勝手についてくるものであり、最初はそのコードは主和音でも何でもない。その性格を言い当てはめるのがこの「センターコード」の概念である。AメロはA♭メジャーキーであり、BメロはA♭マイナーキー(またはドリアン)と言える。

たとえば、

例)

CM7  |B♭M7 |AM7  |G7  :|

といった進行では、G7-CM7ができるので、Cメジャーキーのように見えるが、B♭M7とAM7は様々な解釈が出来てしまう。もちろん他のコードでも良い。CM7からメロディをつくり流れるままに音楽的脈絡を作っていけば良い。

また同一コードの連鎖は、拙論では和声単位進行といい、自由に連鎖が出来る。

 

事例32Don't Know Why I Love You (CDタイム 0:11-)

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B♭ A♭ |G♭ |D♭ |E♭ |

G♭ D♭/F |G♭ A♭ |B♭  |B♭ F |

=degree= センターコード B♭

I  VII♭ |VI♭ |III♭ |IV♭ |

VI♭ III♭/V |VI♭ VII♭ |I♭  |I♭  V |

この曲もセンターコードをB♭と置いて、同主調を行き来するビートルズ的な進行と考えたほうが分かりやすいだろう。

スティービーもクレジットがされている。こうした曲を若いうちから吸収することで、音楽的実験の可能性を実践から吸収していったのではないだろうか。

この曲は、この8小節が最後まで繰り返される。スティービーの曲は、転調で盛り上がっていく曲と、1コードで盛り上がっていく曲、同曲のようにパターンを繰り返して盛り上がっていく曲想がバリエーションとして確立されていることになる。

こうした個人が表現できる楽曲パターンが出来上がると、あとは組み合わせによってバリエーションを進化させていけばよい事になる。

ちなみにスティービーの楽曲は、アルバムを重ねるごとに天井知らずで複雑になっていく。パターンを完成させ、常に新しい融合を作りだそうとしていることになる。アーティストの全ての作品を見ていくことは、様々なことを学習者自身が一番把握できるので、もし作曲についての学習を進めたい、という方は、自分が好きなアーティストに対して楽曲の総合的分析にトライ頂くと良いだろう。

   

事例33I'd Be a Fool Right Now (CDタイム 0:06- )

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Aメロ

A♭ A7(♭5) |E♭7 A♭7 |D♭m7  G♭7 |Fm7(♭5) |

Em7  Em7/C#  |BM7 A♭m7 |B♭m7(♭5) |E♭7 |×2

サビ

A♭M7 D♭7 |E♭M7  E♭7 |A♭M7 D♭7 |E♭M7  E♭7|

A♭M7 D♭7 |E♭M7  E♭7 |A♭M7 D♭7 |B♭m7  E♭7|

=degree=

Aメロ=センターコードA♭

Bメロ=センターコードA♭からkey=E♭の重心を感じる

変化記号の多いキーは、彼が盲目であるが故に指の感覚で鍵盤の位置を把握するためだ、とされているのだが、私は良く調べられていないのだが、初期のころからこうしたケアが作曲家陣によってなされていたのだろうか、と思う。

これまでの作品群で一番コード進行がビ・バップ的なブロックチェンジ(ここでは二拍ずつの変化を基調にして雰囲気を構成していく流れ、という意味で)がハーモニックリズムを作っている。これは不定調性論で言うところのセンターコードからの着想で作曲していく方法と考えることができる。

一小節目のA7は回遊コードで、ふわりと浮いた不安定さを醸し出し、続くE♭-A♭はIVに行こうとする進行感を活用している。本来必要のないコードであるが、ときにこうした変化を歌詞の求めに応じて、アルバムの中の一曲として用いることで際立つ楽曲となる(印象的になる、または印象感にも変化をつけることが出来る)。

そしてA♭7はIVm感を持つD♭m7へ進行し変化を付け、そのままII-V形を用いるが、G♭7もBM7等には進行せず、半音下降のm7(♭5)からEm7へ流れ、BM7へサブドミナントマイナー終止感を起こし、そのままBM7をIII♭M7として、A♭マイナーキーのダイアトニックコードのII-Vを組む。

サビはII-Vから来たトニック感を持つA♭M7が実はIVM7感を持つコードであることが、E♭への帰着感が明確になることにより判明する。

こうした進行感を用いた和声の流れを持つ曲としてはもっともそのコンセプトが前面に押し出された最初のスティービーナンバーであると言えよう。この曲も共作ではあるが、スティービーの中にこうした進行感の連鎖だけで音楽が出来る、そして、それが実際にレコードになって、世界に認知されてゆく面白さを知っていったのだろうか。

進行感の連鎖、についての考え方については、ユーミンレポートが詳しい。

 

事例34Ain't No Lovin' (CDタイム 0:09-)  

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Aメロ

GM7  |F#M7  |D♭M7 | E♭m7 A♭ |

GM7  |F#M7  |D♭M7 | E♭m7  |

Bメロ

A♭m7 |D♭m7 |G♭m7 Bm7 |Bm7/E  F# |

サビ

Bm7 Bm7/E |AM7  F#m7 |Bm7 Bm7/E |F#M7 F#7 |

Bm7 Bm7/E |AM7  F#m7 |Bm7 C#m7 D D#dim7  |E7    |

Cメロ

AM7 |DM7  E|AM7 |DM7  E|×2〜Aメロへ

=degree=

Aメロkey=D♭

IV#M7  |IVM7  |IM7 | IIm7 V |

IV#M7  |IVM7  |IM7 | IIm7  |

Bメロ センターコードA♭m

Im7 |IVm7 |VII♭m7 III♭m7 |III♭m7/V#  VII♭ |

サビ key=A

IIm7 IIm7/V |IM7  VIm7 |IIm7 IIm7/V |VIM7 VI7 |

IIm7 IIm7/V |IM7  VIm7 |IIm7 IIIm7 IV IV#dim7  |V7    |

Cメロ Key=A

IM7 |IVM7  V|IM7 |IVM7  V|×2〜Aメロへ

先の曲に続いて、アルバムの後半に配置された曲らしく、実験的な進行感で満ちている。これも共作者としてスティービーも名を連ねている。

AメロでいきなりIV#M7からIVに着地するという流れで始まっている。しかしこの流れもII♭M7→IM7という進行感で、メロディを乗せることができれば、その流れで曲を作ることもできるだろう。作っている最初の段階では、F#M7がトニック的な流れになるのだが、そのあとのメロディの関係で、結果的にIV#になる、という考え方で良いと思う。

またBメロも実験的である。手法としてはこれまで使われていたものに相当するので、ここでは解説を割愛する。

 

事例35God Bless the Child(CDタイム 0:14-) 

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Aメロ

FM7  B♭7(13) |FM7  B♭7(13) | Cm7  F7(9)  |Cm7  F7(#9)  |

Bメロ

B♭M7  |B♭m7(9) |Am7  D7(♭9) |Gm7 C7♭9) |

FM7 B♭7(13) |FM7 B♭7(13) |

Aメロ

FM7  B♭7(13) |FM7  B♭7(13) | Cm7  F7(9)  |Cm7  F7(#9)  |

Bメロ

B♭M7  | B♭m7(9) |Am7  D7(♭9) |Gm7 C7(♭9) |

FM7  | B♭7(13) A7  |

Cメロ

Dm7  DmM7 |Dm7 Dm6 |Am7  |E7  A7  |

Dm7  DmM7 |Dm7 Dm6 |Am7  D7 |D♭7  C7  |

=degree=

Aメロ(Key=F)

IM7  IV7(13) |IM7  IV7(13) | Vm7  I7(9)  |Vm7  I7(#9)  |

Bメロ

IVM7  |IVm7(9) |IIIm7  VI7(♭9) |IIm7 V7(♭9) |

IM7 IV7(13) |IM7 IV7(13) |

Aメロ

IM7  IV7(13) |IM7  IV7(13) | Vm7  I7(9)  |Vm7  I7(#9)  |

Bメロ

IVM7  |IVm7(9) |IIIm7  VI7(♭9) |IIm7 V7(♭9) |

IM7  | IV7(13) VI7  |

Cメロ

VIm7  VImM7 |VIm7 VIm6 |IIIm7  |VII7  III7  |

VIm7  VImM7 |VIm7 VIm6 |IIIm7  VI7 |VI♭7  V7  |

ビリー・ホリデイの1939年の作品カバーである。原曲の方はスタンダードなアレンジがされている。スティービーの同曲のアレンジではテンションサウンドが三和音にはない響きを醸し出し、1コード楽曲やブルースとは違う雰囲気をアルバム全体に与えている。こうしたサウンドによって出来る楽曲が持つ雰囲気を事前に想定しながら作ることの大切さは私自身も学校で学んだ。

同曲で原曲にもCメロにあるクリシェが用いられている。ゆえにスティービーの曲とのマッチングも良い。

   

事例36Do I Love Her (CDタイム 0:12-)  

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Aメロ

D♭M7  CM7 |BM7 |D♭M7  CM7 |BM7 |

G♭ |A♭m7 D♭7 |G♭M7 |E♭m7 A♭7 |〜

=degree= key=D♭

IM7  VIIM7 |VII♭M7 |IM7  VIIM7 |VII♭M7 |

IV |Vm7 I7 |IVM7 |IIm7  V7 |〜

今回取り上げる曲としてははじめてスティービーのみのクレジット曲である。

一行目のVIIM7は経過和音であり、四拍目に挿入される。

そして続くVII♭M7が特徴的である。こうした和音配置は、オリジナル曲の中にどんな特異性を投じるか、という欲求であるように感じる。他曲にない響き、他曲にない進行感を有する曲を作ってみたい、という欲求である。

同アルバムでは、和声に関する実験が随所に見られるので、これはスティービーの探究心が推進力になっているのであろうか。18歳の頃のリリース作品であるから、ロン・ミラーからの作曲の指導も本格的にあった頃だと思われる。

 

事例37The House on the Hill (CDタイム 0:10-)

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Aメロ

E♭7 |E♭7 |E♭7 |E♭7 |

A♭7 |A♭7 |E♭7 |E♭7 |

B7 |B♭7 |E♭7  G♭ A♭|E♭7 |〜

(CDタイム 1:11-)

A♭7  |A♭7  |E♭7  |E♭7  |
F#7  B7 |F#7  B7 |F#7  B7 |F#7  B7 |

G#7 |B7 |C#7 |C#7 |〜E♭7

=degree= key=E♭ブルース

Aメロ

I7 |I7 |I7 |I7 |

IV7 |IV7 |I7 |I7 |

VI♭7 |V7 |I7  III♭ IV|I7 |〜

(CDタイム 1:11-)

IV7  |IV7  |I7  |I7  |
III♭7  VI♭7 |III♭7  VI♭7 |III♭7  VI♭7 |III♭7  VI♭7 |

IV7 |VI♭7 |VII♭7 |VII♭7 |〜I7

これはオリジナル曲ではない。モータウンの作家陣の楽曲である。

基本形式はE♭のブルースとなっているが、III♭、VI♭、VII♭の使用により緊張感を出している。

F#7への進行感はいわゆるIII♭7への進行感からの展開を活用しているが、それがすぐにB7への流れとなり、これはF#7をI7としたIV7へのブルース進行となるように工夫されている。進行感の瞬間的な変化である。

またそこからE♭7までの流れも、III♭、VI♭、VII♭を活用しスムーズにE♭7に戻している。

 

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