音楽教室運営奮闘記

不定調性論からの展開紀行~音楽と教育と経営と健康と

VIb7を使えば、Iにも戻れるし半音上げ転調もできる;スティービー・ワンダー研究レポート公開シリーズ8

2019.4.24→2020.2.26更新

スティービー・ワンダーの和声構造

~非視覚的クオリアを活用した作曲技法~

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アルバム9;「Someday at Christmas(1967) 

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事例26Someday at Christmas (CDタイム 0:05-)

A  |E/G# |G |D |Dm |A |Bm E |Bm E  |

A  |E/G# |G |D |Dm |A |Bm E |A   |

=degree=  key=A

I  |V/VII |VII♭ |IV |IVm |I  |IIm V  |IIm V  |

I  |V/VII |VII♭ |IV |IVm |I  |IIm V  |I  |

このパターンで、半音ずつキーを挙げAで2まわし、B♭で3まわし、Bで1まわし、Cで2まわしという流れで展開。

この曲こそ後に何曲か登場する、転調によって雰囲気を盛り上げていく作品の初期の代表作です。

 

Ron Miller and Bryan Wellsの作品。

スティービーの技能が良く把握されています。

 

事例27Christmastime (CDタイム 0:03-)

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Em7 |D#dim7 |Dm7 |Dm7 |

G  |G  |C  |C  |

=degree= Key=C

IIIm7  |II#dim7  |IIm7  |IIm7  |

V  |V  |I  |I  |

IIIm7からパッシングディミニッシュを伴う作風。

ディミニッシュがなぜクリスマスの雰囲気になるのか、という事、考えてみたことあります?

クリスマスソングに限らず、こうしたストリングスアレンジのバラード曲にはdim、またはV7(b9)の根音省略型のdimが出てきます。

そういった雰囲気をずっと昔から聞いて育っています。

聞いた感じの印象は、「薫る雰囲気」「もの寂しさ」「寒さと暖かさ」みたいなクオリアを感じます。皆さんはどうですか??これがクリスマスの雰囲気とマッチしちゃう感じ、感じませんか?

 

事例28What Christmas Means To Me (CDタイム 1:18- ) 

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〜F7  |F7  |F7  |F7  |C7  |C7  |C7  |C7  |

D7 |D7 |D7 |D7 |G7  |G7 |A♭7  |A♭7 |

D♭7  |G♭7 |D♭7  |G♭7 |

D♭7  |G♭7 |D♭7  |G♭7 |〜

=degree= Key=C→D♭

〜(Key=C)IV7  |IV7  |IV7  |IV7  |I7  |I7  |I7  |I7  |

II7 |II7 |II7 |II7 |V7  |V7 |VI♭7  |VI♭7 |

(Key=D♭)I7  |IV7  |I7  |IV7  |I7  |IV7  |I7  |IV7  |〜

CメジャーキーのVI♭であるA♭7が一瞬サブドミナントのVI♭のように響きます。

これは当然半音上げ転調のためのV7であり、そのままCから見たII♭であるD♭キーに上がっていきます。

オーソドックスな転調方法だが、このVI♭を随所に出しておけば、いつ転調してもおかしくないし、転調しないでV7に戻ることで転調に見せかけるようなフェイクも作れます。

これは曲調が7th系統だからできるアイデアでしょう。面白いです。

 

アルバム10;「Eivets Rendnow(1968) 

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このアルバムは、イージーリスニング的なアルバムで、全曲インストゥルメンタルであるため、今回の分析では詳細の分析掲載は割愛します。

同アルバムでは自身名義のみのオリジナル曲を三曲掲げ、メインのメロディをハーモニカで取っています。

それまでのヴォーカル楽曲にはない転調なども多用され、イージーリスニングというよりも、当時最先端のハーモニカを中心したフュージョンアルバムと言っても良いです。ホーンセクションやストリングスセッションも多用されています。

 

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==コーヒーブレイク〜M-Bankロビーの話題== 

スティービーと共に過ごした三浦氏の著書。。ぜひ再販してほしいなぁ。。

f:id:terraxart:20190403163204p:plainM-Bankにあるよ!

 スティービー・ワンダー我が半生の記録―冷たい鏡の中に生きて (1976年)