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音楽と教育と経営の雑記ブログ~不定調性論からの展開

視覚的情報なしで表現をするという感覚を学ぶ〜スティービー・ワンダー研究レポート5

2019.4.3⇨2020.2.5更新

スティービー・ワンダーの和声構造

~非視覚的クオリアを活用した作曲技法~

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アルバム5;「Steve at the Beach」〜アット・ザ・ビーチ〜(1964)

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事例8;Beachstomp (CDタイム 0:07-)

F |F |B♭ |B♭ |F |F |B♭ |B♭ |
A |A |B♭ |Bdim7 |C |C |
F |F |F |C|
=degree= key=F
I |I |IV |IV |I |I |IV |IV |
III |III |IV |IV#dim7 |V |V |
I |I |I |V|


Hal Davis, Frank Wilsonといったモータウンレコードの作曲家による作品。

この曲のIII→IVは、ダークなIII7のイメージから徐々にVに向かって明転している様が表現されているように感じます。

IIIは基本的には平行短調へのV7になりがちですが、III→IVという進行感もよく使用されます。ギターだと、EからFとか、半音フレットを隣にずらせばいいだけなので、それでいて「あれ、ええやん、この擦ってく感じ」みたいに感じます。
 

なお、この曲の歌唱に私はスティービーの「盲目」を感じます。

彼はビーチに"居る"けど、若い男女がどんなふうに楽しんでいるかが"見えて"いません。彼は海も、波も、ラジオも棒も、男女も、陽の光も見えていないのでどんな風な気分になるか同調出来ていません。子供らしさ、と言えばそうかもしれません。

皆さんは彼の歌の雰囲気に、どこか彼の独自の想像された世界を表現しているような匂いを感じませんか?

とても興味深い雰囲気、彼の想像だけの世界の表現。

この雰囲気は逆に晴眼者は出せません。

海は海であり、そうでない海を想定して真実にすることができないからです。

彼独自の想像力で出せばいい、だからとても豊かに想像できます。思想が育つ、と言ってもいいでしょう。

 

逆にアルバム制作が重なるにつれ、彼だけが巧みに表現できる独自想像世界に表現追及がオンリーワンの個性になっていきます。

このアルバムで開眼しちゃったのかな??

 

 

事例9;Beyond The Sea (CDタイム 0:09-) 

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A;
E C#m |A B7 |E C#m |A B7 |
E G#7 |A B7 |E E/B |A C#m |
F#m B Cdim7 | C#m |F#m |B7(#9)|
E C#m |A B7 |E C#m |A B7 |
E G#7 |A B7 |E E/B |A C#m |
F#m B Cdim7 | C#m |F#m B7|E D#7 |
B;
A♭ Fm |C# D#7 |A♭ Fm|C# D#7 |
A♭ Fm |C# F#7 |
C;
B G#m |E F#7 |B G#m|E F#7 |
B A |G#m F# B |〜A;セクションへ
=degree=
A;key=E
I VIm |IV V7 |I VIm |IV V7 |
I III7 |IV V7 |I I/V |IV VIm |
IIm V V#dim7 | VIm |IIm |V7(#9)|
I VIm |IV V7 |I VIm |IV V7 |
I III7 |IV V7 |I I/V |IV VIm |
IIm V V#dim7 | VIm |IIm V7|I VII7 |
B;Key=A♭
I VIm |IV V7 |I VIm|IV V7 |
I VIm |IV VII♭7 |
C;key=B
I VIm |IV V 7 |I VIm|IV V7 |
I VII♭ |VIm V I7 |〜A;セクションへ

 

ソロはkey=Fでそのままエンディング。

同曲は、1946年のシャンソン「La Mer」がカバーされた曲で、ボビー・ダーリンのバージョンがヒットした、という有名曲。

スティービーのバージョンは、ビートルズのギターアレンジを意識したような仕上がり。原曲にも見られる転調が活かされてます。


ここではE→G#(A♭)という長三度転調が現れます。

そこからさらに短三度転調し、全体でe-g#-bというE△の長三和音に沿うように、おおらかな讃歌。

また後半には、ユーミン楽曲でも現れたI VII♭ |VIm V 〜という展開が。

スティービーの転調の技法についてはこれから出てくる多数の曲で解説していきますが、その豊かさは、まるで暴挙とも言える変幻自在さ!

このBeyond The Seaの展開などかすんでしまうほどの暴挙的進行です。お楽しみに。


完璧主義な彼は、その暴挙を暴挙とは思わないのだろうか、と私は正直思いました。

それとも暴挙であると考えているのは私だけ?

だとしたら私にとってのスティービーは完璧主義ではなく利己主義!

しかし私だって利己的だし、誰しも利己的であらねば生きていけません。

とすると、この「暴挙のような展開」は意味があるはず!です。


それがスティービーの性格に属するものなのか、生まれ持った感性に基づくものなのか、最初に記述した料理の逸話にしても、それを自分でやろうとすることの率先力、負けず嫌いに起因する自己流を進化させる断固とした進化力、と言えばいいでしょうか。彼の場合特に音の技巧に特化するしかないです。視覚的効果は眼中にないのですから。それゆえに音楽の表現技法への卓越した追及がなされた結果のあの転調・展開のテクニックに繋がっているようにも感じます。


これが、私達が通常感じている視覚的な世界の常識とは違う、非視覚的な彼の感覚が優先された結果の音楽性ではないか、となんとなくこの辺から感じるようになりました。

 

この時点ではそのようなヒントを感じながら、先を進めていきましょう。

 

アルバム6;「Up-Tight Everything's Alright」〜アップタイト〜(1966)  
事例10;Love a Go Go (CDタイム 0:01)

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intrio
E♭ |B♭m7 |E♭ |B♭m7 |
Aメロ
E♭ |B♭/D |Cm |Gm |
A♭ |Gm |A♭ |Gm |Fm7 B♭m |E♭ |B♭m7 |〜
=degree= Key=E♭
Intro
I |Vm7 |I |Vm7 |I |Vm7 |I |Vm7 |
Aメロ
I |V/VII |VIm |IIIm |
IV |IIIm |IV |IIIm |IIm7 Vm ||I |Vm7 |〜


コーラスの最後は、IIm-Vmで締める、という荒技。

メロディもののラインに沿い、かつ主和音の完全五度(E♭のb♭音)で伸ばされている感じが実に不可思議な印象!!

これが作曲を学び立ての受講生の作品だったらどうでしょう。五年前の私であったら、そこを指摘して直させてしまったかも!!

 

・和声のセオリーに流されず、メロディを歌ってみて、自分にとって自然な方向を模索した後で和音を乗せる
・通例流れる和音にすぐにとびつかず、ちょっと変化させてみたら、この音楽はどうなるかな?という変化の度合いを見ながら、和音を乗せる

 

というような選択肢が直感的に出てこないと、作曲は面白くありません。

この曲の場合は、全体が極めて調性的ですから、変化をつけるなら、イントロか、Aメロか、サビの頭か、サビの最後か、などと見当をつけます。

このVmが新鮮なところ、印象的なところ、です。

 

スティービーがこういう感じに影響を受けないはずがありません。

 最初から最後まで“ひねり”がないままで終わらせない、という感覚なら常時持てそうです。

また和声だけが“ひねる”対象ではありません。

メロディにひねりを付けることもできます。

レイ・チャールズのブルースのように、リズムで変化をつけることもできます。

この辺りは漠然と考えていても上達しないので、とにかくバリエーション豊かな楽曲を作り続けながら、迷った時にこうした事例集を開き、直感で流れを構築できるようにあるのが理想です。   

事例11;Hold Me (CDタイム 0:13-)

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Aメロ
C |C |Bm7 |E7 |
Am7 Bm7 |C D |G |Dm7 G7 |
C |C |Bm7 |E7 |
Am7 |Em7 A7 |D7sus4 |D7 |
サビ
G |Gaug |C |C |
A |Em A7 |D7sus4 |D7 |〜
=degree= key=G
Aメロ
IV |IV |IIIm7 |VI7 |
IIm7 IIIm7 |IV V |I |Vm7 I7 |
IV |IV |IIIm7 |VI7 |
IIm7 |VIm7 II7 |V7sus4 |V7 |
サビ
I |Iaug |IV |IV |
II |VIm II7 |V7sus4 |V7 |〜


ここではじめてスティービーらしい曲!

クレジットにスティービーの名前もある!

サビのaugを持ったクリシェといい、II7からsus4への展開がその後のスティービーのイメージを感じさせます。

どの部分をスティービーが作り、どの部分が共作なのかは分からないですが、こうした作品を通して、彼の和声感や構成感覚が養われていった、ということであればとても興味深い一作。

彼にとってのsus4やaugへの嗜好が垣間みられます。


これらの変化コードは彼の盲目の世界感を象徴するコードであり、それを表現している響きと言えなくもありません。

我々のsus4とはとらえているニュアンスが違う、という意味です。

 

和音の響きは個人の印象に他なりません。

この辺りもまずは問題提起、として掲げて先に進んでいきましょう。

 

事例12;Uptight(Everything's Alright) 

 

 こちらを参照ください。

 

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==コーヒーブレイク〜M-Bankロビーの話題== 

スティービーと共に過ごした三浦氏の著書。。ぜひ再販してほしいなぁ。。

f:id:terraxart:20190403163204p:plainM-Bankにあるよ!

 スティービー・ワンダー我が半生の記録―冷たい鏡の中に生きて (1976年)