音楽教室運営奮闘記

音楽と教育と経営の雑記ブログ~不定調性論からの展開

ユーミン楽曲(コード進行・歌詞)研究レポート公開全目次

www.terrax.site

2019.3.5⇨2020.1.7更新

日本人の心の情景を変えたシンガーソングライター(改訂版)

 

―研究レポート;ユーミン楽曲の和声分析と音楽的クオリアが紡ぐ作曲の手法―
〜2015年3月29日(日)日本音楽理論研究会発表参考資料〜

監修;music school M-Bank 

下記のリンクから発表原稿PDFも見られます(当日は50分発表のため限られた内容です)
www.dropbox.com

注)2020年はすべての記事をブログ用に改訂中です。しばらくは表現の煩わしさや書式の不統一でご迷惑をおかけしますがどうぞ宜しくお願い致します。

  

ユーミンからの、恋のうた。(通常盤)(3CD)

==========

1.本レポートについて(当記事内)

 

2.本レポートの事例解説とその周辺(当記事内)

 

3.前回までの日本音楽理論研究会での発表の流れと意義・課題

 

4.ユーミン略歴他

 

5.ユーミン楽曲についての各所見

 

6.ユーミン主要アルバムにおける和声技法事例集

(各曲の目次はこのページから飛べます)

 

7.歌詞の音楽的風景

 

8.ユーミン楽曲からの発展技法と不定調性論

 

9.参考文献抜粋資料

 

10.参考資料一覧  

 

1.本レポートについて 

ポピュラーミュージックの楽曲を還元すると、メロディとコードと歌詞という三つの基本構造に分けることができます。この骨組が完成すれば、その曲はギター一本でも表現することができます。その手軽さがポップミュージックの魅力です。あとはこの骨格段階でいかに新しい音楽的挑戦を行うか、です。本レポートではその骨格段階で判明できるユーミン楽曲の工夫に言及することを中心としています。

 

本レポートでは、1970年代から現在までポップミュージックシーンの第一線で活躍し続ける松任谷由実=ユーミン(以下、敬称等略、切にご容赦頂きたい)の楽曲構造(主にオリジナルアルバム収録作品約370曲が対象)に見られる和声ヘの挑戦に特に着目しています。121の事例に列挙しました。これからポピュラーミュージックを学習する人(特に初学者~中級者)がその和声的アイデアのインスピレーションになれば幸いです。

 

松任谷氏に商業的成功と文化的貢献は、2013年に紫綬褒章を受賞したことからもその公の価値は明らかです。しかしそれは個人にとってのユーミン音楽の具体的な魅力や価値を体現してはくれません。確信を得たいのは「なぜユーミンはこれほど日本人の心に寄り添って離れないのだろうか。」という世上の風評の正体を探ることです。

 

先に結論を述べると、日本語表現にこだわった心の情景を描くようなファンタジーエッセイ(またはscene essay=情景のエッセイ)と、たゆまぬ工夫によって生み出された多彩な和音進行と、心象感豊かな言葉とメロディを、ユーミンボーカルの素朴=身近な人にいそうな・・と感じる声のトーンで歌われることで、それまでにはなかった新しい日本人の心の情景、既視感のような郷愁が人々の心に上書きされ、ある種の心地良さの理想ともいえる心象感を持った、という事実に壮大な魅力を感じるに至りました。

 

この121曲という事例は、通例当時のポピュラー音楽学校の勉強で学ぶコード進行の一般学習の範囲を超えた応用技法の連続です(それらの一時転調を伴う和声進行を総じて「不定調性進行」と普段私は呼んでいます)。

 

常に新しい手法を用い、分析をする度に、それまで自曲で用いられたことのない技法が次から次へと出てきます。

「第一線で活躍する人というのは、これほどまでに工夫を続けないといけないものか」と驚嘆することでしょう。

 

この事例集が今後ポピュラーミュージックの作曲を志す人のアイディアのキュレーションとなり、少しでも初期学習のクオリティを上げ、より効率的に高いテクニックを学習に向かえるようようになりますよう願います。

 

さらにそれらを発見しただけでは、応用することにまた同じだけの時間を個々人が費やすことになるため「8.ユーミン楽曲からの発展技法と不定調性論」において、その更なる発展の可能性をまとめました。

 

レポートは、ポピュラー音楽作曲の知識がある程度備わっている状態を想定した形となっています。また和声の聞き取りミス、解釈違いなどもあるでしょう。ゆえに私の聞き取りミスによってユーミン氏のアプローチを誤解することのないよう、コード進行表記だけをみて「ユーミンはこう考えているはずだ」という推論や断定を行う形にならないような工夫をしてあります。また気になるポイントはやはり皆様ご自身で聞きとってください。聞こえ方というのは、音楽の好みと同様、千差万別であることが分かっています。

 

21世紀を越える今日の今まで40年以上、ずっと私たちの生活の音楽であり続けたという実績は、「トレンディ」の象徴であるドラマや映画、CMの脚本の土台、主題歌となり、時代の若者たちの生き方の象徴となり、リゾート、クリスマスや夏のバカンスなどのイベントのタイアップ曲となり、そうした時代を彩って企業の顔となってきたタイアップ本数が200本を越えることをみれば明らかです。

その歌詞はファンタジーかもしれませんが、時代の憧れとなり、そのトレンディな世界感をそのまま実現し得た人もいるでしょう。それまでのフォークソングにはなかった洗練された表現がその後のアーティストに与えた影響は計り知れません。

この表題は、これらの何となく世間に流布している実績を明確に象徴する言葉で表現したくて付したものです。

 

音楽活動を続けるためには、アーティスト本人の強靭な努力とともに、優秀なスタッフ陣とそのチームがあってはじめて成り立ちます。これは一般企業でも、どんな組織でも同じです。改めて、長きに渡り第一線を走り続けるユーミンスタッフチームの結束、その類い稀なる仕事力に、一個人として最大限の敬意を表します。

本レポートで用いる「ユーミン」という語は、安易な個人の名指しではなく、時にアレンジャー松任谷正隆氏とのユニット名を指していたり、またそのスタッフチーム全体を意識して用いている場合もありますのでご了承ください。

 

2.本レポートの事例解説とその周辺

アーティスト『ユーミン』の登場は、ガールズポップの誕生、日本のロックの歌姫伝説、ニューミュージックという文字通り新しい可能性を持ったポップミュージックの出発点であり、その歴史は日本のポピュラー音楽の創成と発展の歴史そのものです。

 

本レポートの中心となる和声進行についての内容を理解頂くために事例を一つ提示します。

「流線形'80」(1978年)収録の「Corvett1954」(事例23)のAメロのコード進行は下記のように表記できます。

open.spotify.com

Aメロ(アルバムに収録された当楽曲の該当タイム0:24-)

C  |Gm |C  |Gm  |C  |Gm  |Fm7 |Am7 |〜

※「|」は小節線。

=degree(調を指定しローマ数字でダイアトニックコードを表記)=

(key=C)

I  |Vm |I  |Vm  |I  |Vm  |IVm7 |VIm7 |〜

 

ブログ用にはSpotifyへのリンクを統一して貼り付けてます。

この部分はCメジャーとCマイナーのダイアトニックコードを行き来していると解釈もできます。

しかし一番の問題は「ユーミンがなぜCの後にGmを用いたのか」という発想の脳内経路の解明がはコード進行分析でできるのかどうか、ではないでしょうか。

 

たとえば同曲のC  |Gm  |という部分は、通例C  |G  |の変形と捉えることもできます。つまり、まずC |G |という進行に辟易するほどの作曲経験がないと、ここを変えようとは考えません。

C→Gmのサウンドの部分の歌詞をみると「月も追ってこないわ みんな探してるころ Corvett1954 あなたとどこへでも行く」となっています。

私はこの歌詞の一文のために、このC→Gmの流れに“颯爽と走り去るスポーツカーの風”を感じてしまいます。Gmへの崩れた感じが「少し冷たい空気の中への動き」という情感と呼応してしまうんです。

このような個人独特の"印象感""風景感""模様感""感情感"といった表現で音楽の印象を明確に言い表すスタイルを不定調性論的な和音理解としています。

 

この自由に心に浮かぶ印象・心象こそが「音楽的なクオリア」であり、調的な束縛や和声進行の慣習という理論的な理由とは別に、個人が音楽を具体的に創作する際の音楽的脈絡となり、作曲の動機、「その和音を選び、その旋律を乗せる判断を下す」動機になる、と考えています。拙論である「不定調性論」独自の概念です。

 

音楽的なクオリアのここで持つ意味や概念は私の創作です。

音楽を作るとき、メロディを紡ぎながら、和音をつなぎながら、その流れに作曲者自身が何らかの音楽的な脈絡を感じ取るわけです。普段皆様も"感じながら作る"ということは実践されているでしょうが、そこには名前がなかっただけです。

C |G |かC |Gm |かを選択するとき、作曲家が「音楽的なクオリア」を適切に感じ、納得できるからこそ、その進行で制作を進めることを決断できます。

 

本レポートの参考文献インタビュー等を読んで頂くと、ユーミンの「音楽的なクオリア」の風景を発見するはずです。そして皆様各位「自分であればどうか」を発想するはずです。

その音楽的なクオリアが十分な風景を個人の中に確信を持って描かれる時、その音楽的展開は独自性を持ち、個性が生まれるのではないでしょうか。

 

そのトレーニングの方法として、

 

“あるコードから次のコードに移った時、それがどのような和音進行であれ、自分だけの音楽的クオリアを創造し積極的に構築すること”

 

という心象創りの訓練を行うことを推奨しています。 

常に音楽的なクオリアを持つ、ということについては、例えば、

 

CM7  |F#m7 |CM7  |F#m7 |

 

というコード進行に、自分なりに「意味を持たせる」ことができるか、ということです。

たとえば「朝の空気」とか「昼の風」とか「夜の匂い」とか漠然と意味のある言葉でも良いし、「緑色の糸くず」とか「ぐちゃぐちゃな手書きの線」とか「丸い光」とか意味を持たせづらい表現でも良いです。

そのサウンドにプライベートな経験から、何らかの記憶や概念、匂いや想いをごちゃまぜにして自分が確かに体感できる心象を生み出す。ドミナントだ、とか調がなんだ、という「分析」ではない発想を持つ、ということです。

 

 

 

また、本レポートの和声事例は、特に曲中(歌中)のコード進行に特化しています。ユーミン楽曲のイントロ、エンディング、間奏での展開事例はまた別の研究テーマの一つとなるでしょう。

 

その2へ

www.terrax.site

 

 

 

 

 


==コーヒーブレイク〜M-Bankロビーの話題== 

こ、、こんなものが・・アマゾンに。

https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/61x24zJGcSL._SL1080_.jpg

松任谷由実 バービー LIMITED EDITION ユーミン 蓮華 1999年製