一聴して、あれ、コード凝ってるなぁという印象でした。と思ったら、凝っているのはベースラインだった、っていう曲ですね。
0:17からのパワーコードリフは
C5 |C5 C(-5) |C5 |C5 C(-5) |
とb5thが入ってきます。洋楽ではよく出てきていたリフ感です。
0:24~全音上がってDmのキーになります。
0:40からのBメロのコードが
トップはF G |と進むのですが、ベースがd-eと流れています。すごくハイブリッドな感じしますよね。
だから全体でのコード表記は
Dm7 Em7 |となるべきでしょう。またメロディがd固定に近い感じなので、これはセンタートーンがdであるとすると、ここではm-IImと進んでいるので、これを持つのはドリアンだけですから、ここはドリアンの特性進行になっているわけです。繰り返してますしね。もともとAメロでもIV△であるGが出ていたので、比較的生きやすいと思います。
ちなみにBbはVIbですから、Bb-C-Dm的進行の印象の活用です。
「印象の活用」という考え方は不定調性論ならではのものです。
後で少し述べます。
でサビ前のコード。0:50-
A |F/Eb |
Aで十分Dを示唆できるのですが、もともとドリアン的なところからAにきたので、変化への欲求が増しますよね。そこでこのコードはとてもすごい。これはキーBbに行くVであるF7の7thルートのコードです。
これもV/IVの「印象の活用」です。理屈ではわからなくても
「V/IVがどんな雰囲気を醸し出すか知っていれば使える」
という思考ができるかどうかです。不定調性論です(すいません手前味噌で)。
IV/Vでも発想は同じです。これはどのような印象か、というと、
「IV/VやV/IVというような分数コードが持つ質感が自分に与える音楽性を知っている」
かどうかできまります。
幾ら理屈で分かっていても「それがいつ、どんな風な時に自分が使えるのか」を知っていなければ適切なときに使えません。それをどうやって学ぶかと言えば、そういう感覚で曲を聴き、弾き、学んでいるかどうかしかありません。音楽理論だけでは足りません。自分自身の感性がちゃんと発動しているかどうかを「知っている」必要があります。それをどう学ぶか、についてはこのブログで書いてきている通りです。
これはただのF7で次にBbが来るわけですからV-Iが成り立っているのですが、これがV/IVになっているので、すごく淡く風が吹くように響き、キラーンン!!!とします。
under the sun..
です。木の葉を風がはじいて光が漏れる和音、です。ここではね。
ハッとするコードじゃないですか?アイディアの勝ち。
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曲のAメロは
Dm 、C/Dm、G/D、Bb/Abで展開しています。
この曲はベースラインが完全に独立したラインを作っています。前後の曲を聴いていないので結論しませんが、かなり攻めた構成の曲です。何曲もできないモロバの剣的技ですがとてもアウトサイド感があり、刺客感があります。シングルヒット曲の道場破り感が凄いです。
曲のテイストは、我々の世代でいうと、
Bon Jovi - Keep The Faith - YouTube
これな。
これとか。
はねたビートに希機能不定調性進行で展開する楽曲です。
つまり、
I,IIIb,IV,V,VIb,VIIb
というメジャーコードを長調、単調から借用して自在に並べる楽曲構造です。
ブルース、モータウンからビートルズに引き継がれていった作風です。シンプルでギターで弾くのが簡単で、かつ「アガる」要素を持っています。
これを機能和声論で分析すると、「同主転調」というわけですが、この解説では
「何でアガるのか」
が説明されていません。調を行ったり来たりしているだけという分析になってしまうからです。
もちろん
こっちにも出てきますが、ショパンやシュトラウスも瞬間的にこうした和音を使ってきます。それらはきらびやかです。つまり「アガる」というのは一つの感情に過ぎません。時代によって音楽によってそれぞれの時代の和音の価値観が変わっているわけですね。
またはショパンの時代の「アガる」はきっとこういうことだったんだろうな、とも感じます。いまの「アガる」はEDMですね。よりベートーヴェンぐらいの時代の和音感に戻ったような美しさがEDMにはありますね。
ビートルズがやると「不可思議」とか「奇異」になり、ボンジョビがやると「アガる」というのは、やはりそれぞれの音楽性が持っている表現の方向性で、それをしっかり示せるのが才能です。分かっていてもなかなか示せないものです。
もし音楽的才能があるかどうかを自分に問うなら、こういうお題を出してみるといいです。
「来週までに勇気を高ぶらせるような曲を創ってきて?」
創れはするでしょうが、その人がそう感じるけであって、先生は同じようには思わないかもしれません。この人数がどの程度多いかが「ヒットするかどうか」です。作ってきた本人もそう思うし、先生もそう思って、かつオリジナリティがあれば、それは天才です。すぐ100曲作らせてデビューさせましょう。
最初は、ヒットするかどうかは確率の問題で考えて売り込むしかありません。
ボン・ジョビの曲も、ドゥアズの曲もアガるでしょ?私もいいなぁ、と思います。多くの人の共感を勝ち取れる確率の高い曲は売れるわけで、それを見抜けるかどうかが育てる側の職業勘です。これを鍛えるには、そうした曲をたくさん聴かないといけません。
または、そうした感情を時代に創出し舵取りをすることで売れることもありますが、これは強制的にそうする分、当事者側に悲劇をたくさん産んでしまう確率も高いので最近はこのやり方は影をひそめ「売れたものを売る」というやり方に変わっています。これはこれで現代においては仕方のない事であるとも思います。
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<I-IIIbがもつニュアンス>
C |Eb |F |Ab |
この進行を弾いて、どう感じるか教えてください。何を感じたか友人と話し合ってください。どんな曲になりそうか考えてみてください。何を歌った歌が出来そうか考えてください。これはロールシャッハテストと同じです。
聞いた感じをそのまま答えるだけです。セオリーはありません。
Cという和音をそのまま無理くり持ち上げたようなEbの「持ち上げ感」に対して
「勇気」を感じる人「無謀」を感じる人「挑戦」を感じる人
様々でしょう。それを音楽にして、歌詞にして、リリースできる能力を持っている人は少ないものです。たいていは途中で終わってしまうからです。強い信念がないとリリースまではいきません。
でもイメージするぐらいならだれでもできます。批評や評論も簡単です。
だからリリース出来ないなら、それができるアーティストをたたえて、どんどん素晴らしい曲を書いて頂いて自分たちの時代に美しい曲があふれるように応援しましょう。そして真ん中にいる人はファンとアーティストンの感情を利用して無駄に課金してくんな!!ですよね。それぞれの経済がちゃんと行きわたるように、それぞれの感性で仕事と価値を創出して経済を回していきましょう!
どんなまとめだ。