音楽教室運営奮闘記

音楽と教育と経営の雑記ブログ~不定調性論からの展開

宇多田ヒカル - Keep Tryin'のCaug(13)の正体〜音楽は全員違う聞こえ方をしている

2018.11.20⇨2020.2.27更新

www.terrax.site

宇多田ヒカル - Keep Tryin'

宇多田ヒカル - Keep Tryin' - YouTube

sec.A

Bb/D   |Gm7     |Caug(13)  |Am7  |

わかりやすいのは歌始まり冒頭二回(0:29-)、名刺代わりに飛び出す不思議コード。  

コードごときは作曲家本人は違う解釈をしている場合があります。

先鋭的な作曲家ほど「コードネームで書けるように」考えていない場合がある、という意味です。

作曲家は音楽理論家ではないので、セオリー通りに作るとは限りません(世間的な表向きの言動や行動も本人の意思を全て反映しているとは限りません。公になった言葉を盲信しないようにしましょう)。

(より近年の作"二時間だけのバカンス"でもaugコードが出てくるので、おそらく増和音への独自の質感とこだわりがもともとあり、熟成され完成されて行ったのだと感じました。「二時間だけのバカンス」ではあきらかに「aug」感が主張されています。)

 

 

まず一旦通例の形にしてみます。

このBbはIかと一瞬思いますが、IVM7です。

だから先のパートは、

BbM7   |     |C7(b13)  C7(13)  |Am7  |

で弾けます。ここではb13⇨13にリゾルブします。C7(13)はC6と解釈してもいいです。

ジャズ的なメロディにはよくあります。

IVM7   |     |V7(b13)  V7(13)  |IIIm7  |

であり、これは

SD   |     |[D]    |subT  |

SD-D-Tなので、基本中の基本の進行形式とも解釈できます。

このアーティストのメロディセンス(それを表現として作り上げてしまう能力)が飛びぬけていてそれまでのJpopコードの慣習で考えると上手に収まり切らないだけでしょう。

「あれ、あんまり聞いた事のないメロディ出来ちゃったけど、どうしよ」

という感じでも、まとめちゃう。時代より先に進んでいるだけです。

=====

テンションリゾルブとは、広義で言っていいなら

(例1)Dm7   |G7  |CM7 |

っていうときに、

(例2)Dm7  Dm7(9)  |G7(13)  G7(b13) |CM7(9)  |

というようにテンションが連鎖し、もう一つのラインを作ることです。

テンションがコードトーンに解決する動作の事を言います。


(例2)では、

Dm7のf →Dm7(9)のe →G7(13)のe 

→G7(b13)のe♭ →CM7(9)のd

という半音の流れが綺麗にできています。こうしたコード内の旋律を「スラントライン(Slant line=構造線)」とかって私は学びました。

和声進行において、ある和声を構成する全ての音は、次の和声の中に半音か全音で隣接するか、あるいは同度の音を見つけることができる。このような音を進行に従って順次結んでいくと、いくつかの和声を貫いて上方へ、または下方へ斜行する線を描くことが出来る。(時には水平になることもある)

                                     (MESAR HAUS「theory」 STEPVII )

Caug=C7(13)omit7であり、

Caug(13)=C7(13)omit7です。

理屈を知らなくても時々これらのサウンドに気が付くでしょう。

で、それが何のコードだ、とか覚えていなくても

「なんかファンタジー感だなぁ・・」

って"その和音から感じる心象"を覚えていれば、自分で作曲しているとき、「あ、ここ。あの時の"なんかファンタジー感"使いたい!」って思い出せれば、勝手に脳が検索をはじめ、すぐ音として見つけることができます(要訓練)。

 

理屈よりもこの感覚のほうを身につけておく方が早い・・と訴えるのが不定調性論です。音楽的なクオリア的、共感覚的、と表現してもいいです。

少しでもその感覚に共感できれば、あなたはある程度は鍛錬することができるでしょう。

 

====

昔ですといい曲書きたけりゃ「いっぱい恋愛しろ」とかって言われました。

大事なのは恋愛する事ではなく、どういう気分の時にどう感じるのが自分の特徴なのかを知れ、というアドバイスだったのです。今の用語にすれば「音楽的なクオリアを感じられる生活をしろ」という意味です。だから恋愛しなくても、月を見て泣ければそれでも良いと思います。ただ練習だけやって、ステージの上だけで演奏するような活動だけにせず、実際に人に会って、いろんなことを感じて、打ちのめされて心を精進させよ、というアドバイスだったわけです。そこで初めて自分の感じ方、聞き方が生まれます。

またそれを自分で認められるまで時間がかかります。大抵はそこにたどり着く本の手前でやめてしまうんですね。辛いから。

 

=====

この響き、PVと一緒に見てると、どことなく憧れを持っている主人公の

"でもいつかきっと幸せになれるおまじないがあると信じてる感"

がこのサウンドに出ていると思いませんか?

 

この曲に限らずですが、ビョーク氏に似た得体の知れない飛びぬけた感性の持ち主のように感じます。

ヒッキ―がんば٩(๑˃̵ᴗ˂̵๑)۶

 

==== 

Keep Tryin' / 宇多田ヒカル ギターコード/ウクレレコード/ピアノコード - U-フレット

このページではA♭augになってますが、

Caug=Eaug=A♭aug

なので音は同じです。

 

これを「このサイトは間違っている」という人がいますが、「採譜は解釈」なので、採譜者の音楽的背景によって聞こえる音が当然違うんです。

人間性とかも反映されます。

信じられないかもしれませんが、同じ音楽でも人によって聞いている音が違う、ぐらいに考えておいても良いと思います。

だから他者の採譜したコードを間違っている、なんて言うなら最初から自分で聞き取りなさい(先生口調-笑-)。

 

 移動時間は本を聞こう。