音楽教室運営奮闘記

不定調性論からの展開紀行~音楽と教育と経営と健康と

143,TEENAGE RIOT/米津玄師 (コード進行あり)モーダルインターチェンジと質感とか構造とか

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フラミンゴ

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レモンは

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(原曲は高校時代とかに作ったものを何回か展開して作ったんだそうです。。)

 

米津玄師 MV「TEENAGE RIOT」 - YouTube

 (これ読んだ方が早いぞ↓)

natalie.mu 

洪水のような言葉を聞き取れないぐらいのスピードで展開して進んでいきます。

言葉が聞き取れないから良い作品ではない、などと感じる人は時代に置いていかれています。もう音楽はそこにはないのです。

古い作品のスタイルが好きだから新しい作品が馴染めない、という人は古い作品を聞けば良いです。

鳥の声とか海の音とか、言葉が聞き取れないから意味がないとか感じる人います?

 

古い作品は価値がないかと言えば、音楽は無限に再利用が可能な、人類が生み出した最も素晴らしい資源なのだから、黙って古い作品をずっと聴き続けても年齢に応じていつも新価値を生み出してくれますから安心してください。

 

逆に新しい音楽に刺激を感じる人は、どんどん自分の感性を刷新していきましょう。 

言葉を意味ではなく、もっとふわっとした質感で、またはもっと鋭利な呪文のように発していくことでリズムを作り出し、雰囲気を作っていく、という感じのことはRADの時も書きました。

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ああ、もう"言葉"はこんなところにまでなっているんだ、と感じました。

 

まずこの曲は使用音の特徴で見ていきましょう。

イントロのウワ物のギターのリフがBm7のm7th音から入るところが良いなぁ、と。

開始0:00秒です。

<TEENAGE RIOTのコード進行> 

TEENAGE RIOT/米津玄師

 

Intro

【B_Aeolian】

Bm7  Bm7(9) |Bm7(9)  Bm7  |×4

 

Sec_A

【B_Aeolian】

Bm7   |Bm7   |Bm7   |Bm7   |

Bm7   |Bm7   |Bm7   |Bm7   |

 

Sec_B

【B_Dorian】

Bm7(9,11) |Bm7(9,11) |Bm7(9,11) |Bm7(9,11) |

Bm7(9,11) |Bm7(9,11) |Bm7(9,11) |Bm7(9,11)/D(最後、多分ベース抜きの普通のBm7だと思います。) |

 

サビ【B_Minor】

G    |A     |Bm    |D    |

G    |A     |F#/A#(またはA#dim7)    |Bm    |

G    |A     |Bm    |D    |

G    |A     |F#/A#(またはA#dim7)    |G  A  Bm  |

 

Interlude

【B_Aeolian】

Bm7  Bm7(9) |Bm7(9)  Bm7  |×4

 

Sec_A'〜サビ'

Sec_A〜B繰り返し

 

Sec_C

G   |A   |Bm  |Bm  |

G   |A   |Bm  |Bm  |

G   |A   |Bm  |Bm  |

F#   |F#7/A#  |Bm  |Bm  |

G   |A   |Bm  |Bm  |×4

 

サビ''(サビ繰り返し)

 

Ending

【B_AeolianM7=B_Harmonic minor】

Bm  BmM7 |Bm BmM7 |Bm BmM7 |Bm BmM7 |

Bm  BmM7 |Bm BmM7 |Bm BmM7 |Bm BmM7 |

 

(コードはちゃんと聞き取れていない部分もあります。また昨今はコードを混ぜたりわざと崩して音を作っているので、何でもかんでもコード表記に収まるものではない、という不定調性論的価値観で書いています。ご了承ください。)

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Bをセンター(軸音)にした「旋法変換」で質感を変化させています。

コードは同じBm系ですが、旋律に使われている音が変化します。

 

エンディングにはおまけのようにエオリアンM7がまたエスニカンな感じを出しています。米津氏の楽曲でのIII7やII7は、ある種の異国情緒、異界情緒を想起させるようなテイストで使われているように私は感じてしまうので、このハーモニックマイナーをインスト部分で最後に持ってくることで、聞き手を「異界」またはそれに似た別の次元に吸い寄せようとしている感を感じます。

この手のスパイスは使いすぎると飽きるので、ここぞ!!っていう時に自分がどこで使えるのかを考えてみてください。

 

氏はモードというよりも質感で選んでいるようにも思いました。

「どうやって、今自分が必要な音を選ぶのか??」

これには答えがないので、アーティストさんの言葉で聞きたいですね。

曲が書ける人は音楽理論語で話す必要ないので、「朝、こうやって起きて、こうやって創作に入ると、なんとなくできる」とかで良いです。

そういうことも不定調性論的制作法ではヒントになります。

どんどんそういう自分語でディープに発信してください。

====

モードの明暗

これはいちいち書かないので皆さんで勉強してみてください。

Bエオリアンと、Bドリアンではどちらが暗いか、明るいか。

個人差があると思いますが、通例はBドリアンが明るいと感じるんじゃないかと思います。

 

で、ドリアンはただ「明るい」のではなく、

「エオリアンより締まった感じ」

とか

「エオリアンより黄色みが増える」

とか、そういう感じを持つ方もおられると思います。

そして、これをわかっていないと、モード変換を使用することはできません。

で、音楽ができる人は、なんとなく身についていってしまうので、

「意識してない」

という答えしか返ってきません笑。音楽理論が浸透しないわけは、曲ができるようになると体に染み付いて理論的思考を用いないからです(不定調性論的思考)。

 

この曲、Aメロで鞭打つように迫ってくる感じが、Bメロでふわっと一段上がります。

意識が一段浮いて、覚醒したか、または逆に冷静になったのか、そんな感じを覚えませんか?ドリアンの13thの役割です。浮くんです。ドリアンは。

これは個人の質感です。皆さんが感じるように感じればいいです(不定調性論)。

 

下記は古い価値観での理屈の話です。モードのこと知ってる人は分かると思います!

モードの特性音

Bm7(13)

これがドリアンの主和音です。エオリアンだと、

Bm7(b13)

になります。

また

Bm7  E7だとドリアンのI-IV進行的であり、

G  A  Bmだとエオリアンの進行です。

これがわからないとモードがわからないので、この辺ぐらいまでは学校とかで勉強していただければ嬉しいです。

よしドリアンを使うぞ!!って思ってドリアンを使う、というよりも、ドリアンの13が欲しいなぁって確実に思えるようになってから使っていただければ、モードは怖くありません。

 

サビはたまたまエオリアン進行みたいになっていますが、この形式はどちらかというとEDM的な形式を盛り込んでいるだけだと思うので、偶然の一致かと感じました。

そしてサビで名刺がわりのマイナーキーのV7がきます。F#ですね。

これによって、ここはモードではなく、調性的構造がある、と考えて、Bマイナーという理解で良いと思います。

これらの質感を感覚で分けられるような人が今は学生さんにもバンバンいます。

 

この曲ではモードとかわからなくても「中性的」「ジリジリとした停滞感と疾走感」みたいなものを感じると思います。これは声質の役割もありますが、モーダルな音使いにもあると思います。

 

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ラップからオルタナティブの先に向かって

言葉が心を抉っていく音楽がラップでした。

それまでのロックではできなかったことでした。

「それならメロディいらなくね??」

なんて思ったものです。

でもそこから、オルタナティブロック、ネオ3ピースロック(もともとのもとはクリームとかエクスペリエンス)などが新たな「言葉の洪水」によるさらに質感を追求した表現が生まれました。Cream Live Royal Albert Hall 1968 - YouTube

The Jimi Hendrix Experience Live Stockholm, Sweden, 1969 First Show - YouTube

 

ラップに疲れたわけではないのですが、

"もっと楽に生きよう""愛し合おう"

ってどんなに歌っても、人生は相変わらず困難に包まれている、ということに気づいた人たちが音楽を作り始めてそれらは強烈なコードのシンプルな響きや、激しいビートが作り出す感情の方が、言葉よりも一人一人に一人一人の意味がストレートに伝わるのではないか?と感じるようになったからなのかな、なんて感じてます。

(ラップそのものも現在進化していますので、そちらが好きな方は是非最新ラップ研究を!!)

言葉よりも大事なものを、を現代人は見つけたんだと思います。

 

だからこの曲のように、呪文のように脳裏にこびりつく言葉を発していけば、人は必要な言葉をそこから聞き取り、勝手に「意味のフラッシュバック」を作り、印象を感じ取る、ということがわかったからです。意味のフラッシュバックそのものは、ライミングがやってきたことです。

 

でそこに繰り返されるメロディと、喪失感のあるような和音の響きやギターの刻みがあることで、「喪失感+言葉」を聴き、そこに、その雰囲気に共感します。

一つ一つの言葉は意味よりも「質感」を届けます。

 

最初に飛び込んでくるのは「ノタレジヌンダ〜」という言葉です。

「だ」の音は、明るい音なのでよく伸びて耳に残ります。

作詞では

○○○○○○○○○○だー

で作りたいなぁ、なんて作詞することもあります。これもライミングの文化を通例の作詞に応用したものです。または

○○○○○○○○○○死ぬんだー

で歌詞作ろう、、なんて考えることもあろうかと思います。

すみません、米津氏の作り方とは関係ありませんので悪しからず。

で「野たれ死ぬ」っていう言葉が耳に残りますよね。

 で、すぐ心の奥底ではこう感じます。

「野たれ死にたくないなぁ、自分」

って。この時、ある種の焦燥感とか、悲壮感とか、逆にかっこよさ、とかを感じます。

そう、瞬間的に知覚するんです。それができる人にはバンプやラッドはたまらないことでしょう。ニュータイプ脳ですね(いや、ヘンドリックスの時代から居たが動画文化がなかったので広く浅く波及しなかった)。

 

一語だけで人は「良さ」を感じてしまうわけです。これもラップミュージックが作った言葉の意味感を汲み取る感覚からの進化かもしれません。

 

Bメロで「サイコロフルヨウニ」という言葉で、床の上をふわっと浮くサイコロをイメージが浮かんだ人。それはドリアンの13thが作ったイメージです笑。

この関連性がわかることがこれからの音楽知識として大切ですし、不定調性論での音楽理解もそういった感覚を研ぎ澄ますことを目的としています。

なぜって、それがわかれば音楽表現ができてしまうからです。

(もちろん歌詞自体がちゃんと書かれた上で、という話です。)

 

こうやって言葉の持っている意味のフラッシュバックと音楽を絶妙に組み合わせることは、難しい人には難しいし、簡単な人には簡単にできます。そしてこの分野は未開発で、まだ飽きられていません。若い人たちによって確立されつつある部分もありますが、まだその雰囲気が作り出す、感じたことのない感情の洪水はラップミュージックがもたらしたものよりも複雑で、まるで未来の深夜の工場地帯でも眺めているような意味不明なカッコヨサを体感出来ます。

 

あ、これってモードジャズ聴いてるみたいだな、なんて一瞬感じました。

60年代のモードジャズは当時は概念としてまだ新しすぎたのかな。

マイルスすげー。

 

この質感を自覚してる感受性を対象に発信されているような音楽だな、と思いました。

でも、みんなこの質感を聞き分けられているんですよね。超能力までもう少しかもww。アイドルソングもあっていいと思うし、こういう脳の奥で聴く音楽があるのも良いと思います。

 

この感じ、この後どのレベルに持っていってどんな音楽で表現していくのかゾクゾクしませんか?俗世に降りてこなくてよいので笑、追及してください。

商業音楽のアートな部分を言語化できる不定調性論的な視点で援護射撃できるところはしましょう。

 

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この曲だけが新しくて素晴らしい、という意味で取り上げたのではありません。皆さんも自分が好きなアーティストさんの曲をとことん詰めてみたら良いです。

 

ラジオで氏の言葉でまとめてくれてるから、みんな聞いてみよう。

米津玄師 F / T RADIO - YouTube