音楽教室運営奮闘記

音楽と教育と経営の雑記ブログ~不定調性論からの展開

"Giant Steps"の機能和声アナライズ★★★★

Giant Stepsの機能和声分析

 

今日の質問。そして今日の答えです。

この曲は有名すぎて。手っ取り早く手っ取り早いスケールが知りたい、というあなたに。

   

===

Giant Steps
B D7 | G B♭7 | E♭ | Am7 D7 |
G B♭7 | E♭ G♭7 |B | Fm7 B♭7 |
E♭ | Am7 D7 | G | C♯m7 F♯7 |
B |Fm7 B♭7 |E♭ |C♯m7 F♯7 |

 

USTをまとめます。

D7(b9,13) | G    B♭7 | E♭ | Am7 D7 |
B♭7(b9,13) | E♭   G♭7 |B | Fm7 B♭7 |
E♭ | Am7 D7 | G | C♯m7 F♯7 |
B |Fm7 B♭7 |E♭ |C♯m7 F♯7 |

これで機能和声的な分類はできちゃいますね。

D7+B=D7(b9,13)です。コルトレーンは普段からUSTを分解してシーツオブサウンドを作ってますね。

さらにこの曲はII-Vがあるのでキー別に分けてしまいましょう。

 

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これはよく知られた一般的なアナライズであると思います。これをコード別の構成音でシーツオブサウンドしていくのがコルトレーンのコンセプトでした。

基本はII-Vの連鎖なので、II-V部分はバップでこなしていただいて。

D7(b9,13)はミクソリディアンb2というハーモニックメジャースケールのモードで弾くことができます。

d,e♭,f#,g,a,b,c,d

というスケールです。

Bb7(b9,13)も同様です。

b♭,c♭,d,e♭,f,g,a♭,b♭

です。あとは普通のドミナントモーションです。

 

注;G+Bb7も同様なことができます。どこまでやるかはあなた次第。

 

「II-V」の存在感について

 II-Vは言語です。ジャズメンにとってのその音楽的なクオリアは明確です。II-Vにはリックがあって、目をつむっていても「ババラバババラバ~」とメロディが浮かびます。

だからII-Vという存在は、音楽表現ではなく、もはや音楽家にとっての接続詞なわけです。

「だから」

っていう言葉の語源知ってますか?分からなくても「だから」がどういう時にいつ使えばいいか分かると思います。この時代のII-Vの発見はまさにそれです。それがあれば何をすればいいかかわかる、又はそれがあればどこへでも行ける、のがII-Vです。不自由な人の心が解放される象徴??どこへでも行けるならきっとジャズの先には本当のフリーがあるはずだ、そう信じていた時代といったら失礼ですが、フリージャズやそれらの価値感が擦れていってしまう前の一瞬の輝き。

 

C  | F#       |

という二つのコードを機能和声的につなげようと思ったら、

C   Dm7 G7| F#  |

とればG7→F#が裏コード(サブスティテュートコード)としてつながります。

魔法の接続詞です。Giant Stepsでは新たな調と調をII-Vで接続する、というジャズの暗黙の手法をど真ん中におきました。コーラスの後半はII-Vでひたすら接続しています。

 

ここでのII-Vは接続詞をまるで連続させただけのような、keyというよりも使用するアイオニアンの中心を何の音にするか、という指定だけのために機能しています。

またそれが斬新ですね。

II-Vという慣用句を蝶番に使うことにより、現代絵画的転調が自在にできることを決定づけています。

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さらにE♭-Am7もUST分解進行解釈してみます。

Eb+Am7=A7(b9,#9,#11)です。また、
Eb+C#m7=Eb7(b9,b13)ですから、すると、

B7(b9,#9) | B♭7(b9,13) |A7(b9,#9,#11) | A7(b9,#9,#11) D7 |
G7(b9,#9) |G♭7(b9,13) |F7(b9,#9,#11) | F7(b9,#9,#11) B♭7 |
A7(b9,#9,#11) |A7(b9,#9,#11) D7 | C#7(b9,#9,#11) | C#7(b9,#9,#11) F♯7 |
F7(b9,#9,#11) |F7(b9,#9,#11) B♭7 |Eb7(b9,b13) |Eb7(b9,b13) F♯7 |
となり、簡略表記すると、

B7 | B♭7 |A7 | A7 D7 |
G7 |G♭7 |F7 | F7 B♭7 |
A7 |A7 D7 | C#7 | C#7 F♯7 |
F7 |F7 B♭7 |Eb7 |Eb7 F♯7 |

です。全体的に裏コードに任意に置き換えます。

<バリエーション1>
B7 | B♭7 |A7 | A7 Ab7 |
G7 |G♭7 |F7 | F7 E7 |
Eb7 |Eb7 D7 | C#7 | C#7 C7 |
B7 |B7 B♭7 |Eb7 |Eb7 B7 |

不格好ですが、半音で7th下降、という形を無理矢理構成することができます。
これはジャズ理論を最大限に駆使した「過解釈なアナライズ」となると思います。ジャズ理論の自在性はこういうところにあり、またこの自在性が難解さにもなる訳です。

こうした流れは、理論解釈では可能ですが、感情論として
「これを演奏してもGiant Stepsを演奏したことにはならないのではないか?」
という想いがするでしょう。この曲はやはり、コルトレーンがやったようにやってみたい!
はずです。

不定調性論では、バリエーション1と原曲は、違うもの、と考えます。和声連鎖の単位や、印象が異なる進行は、異なるものとして考えますので、不定調性論におけるGiant Stepsはコルトレーンの進行以外ない、というわけです(代理という発想はなく、代理した時点で原曲とは異なることを行う、と解釈します)。

バリエーション1はマザーメロディ(不定調性用語=母体となるメロディ、ここではGiant Stepsのメロディ)をGiant Stepsにし、7thコードを和声単位にしたオマージュ作品、となります。別物、ですね。

しかしジャズの拡大解釈が非機能進行を生んだのも確かです。


※同曲のバップ的分解の発想については、佐藤允彦氏のもとで学習した際の解釈に基づいています。「オクターブレンジ」またバリエーション1への発想はブログ主が検討したものです。各位さまざまな専門書をご参考の上、活用ください。

動画解説などもご活用ください。

www.youtube.com

 

 

 

ジャイアント・ステップス<SHM-CD>