音楽教室運営奮闘記

音楽と教育と経営の雑記ブログ~不定調性論からの展開

"Giant Steps"の不定調性アナライズ(2018)★★★★

giant stepsをC始まりにしてみましょう。

C Eb7 | Ab B7 | E | Bbm7 Eb7 |
Ab B7 | E G7 |C  | F#m7 B7 |
E | Bbm7 Eb7 | Ab | Dm7 G7 |
C |F#m7 B7 |E |Dm7 G7 |

 

ここから機能和声の慣用句を括ってみます。

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つまりEb7→AbはキーはAbである、Bbm7-Eb7-AbはキーがAbである、と考えることができます。これらの流れをキー別にまとめると、

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こうした転調の連鎖があると考えることができます。

これをシンプルにまとめると、

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こうなります。それぞれ長三度で進行しています。

ここで少し「オクターブレンジ」の話をしましょう。

音階にはオクターブ内を一周できる音程の「歩幅の単位」がそれぞれあります。

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m2 短二度(クロマチック)

C-C#-D-D#-E-F-F#-G-G#-A-A#-B-C

 

M2 全音(ホールトーン)

C-D-E-F#-G#-A#-C

 

m3 短三度

C-D#-F#-A-C

 

M3 長三度

C-E-G#-C

==============================

などです。五度圏、四度圏もこれらに含まれるのですが、これらの「歩幅」それぞれを1単位と考えてください。

それぞれの1単位で、進む距離が違います。

m2のCからの1単位はC-C#です。

M3の1単位はC-Eになります。

1単位は同じでも進む距離が違います。

不定調性論ではこれをオクターブレンジという考え方で「基音の振動数」から考えます。

Giant Stepsは機能和声の進行の単位の中に別のレンジの歩幅を混在させている、と考えることができます。

基音がcのとき、

c1

c1-c2(オクターブレンジ1)

c2-g2-c3(オクターブレンジ2)

c3-e3-g3-b♭3-c4(オクターブレンジ3)

。。。と続いていくわけですが、これらの音の差は皆均等に基音の振動数差です。

1)c1+基音の振動数=c2(オクターブ)

2)c2+基音の振動数=g2(完全五度)

3)g2+基音の振動数=c3(完全四度)

4)c3+基音の振動数=e3(長三度)

5)e3+基音の振動数=g3(短三度)

。。。

7)b♭3+基音の振動数=c4(長ニ度)

となります。

 

すべて基音の振動数から生まれる音程差ですから、あとはどれを使うか、という選定者の意思のみがこれを決めます。

 

たとえば、長二度を使ったとしましょう。

そうなると、さきの

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これのそれぞれの歩幅が長二度になるわけですから。

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となります。

これにII-Vをつけてみましょう。

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こうなって

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こうなります。

これを

「Giant Stepsの進行でオクターブレンジ3のM2オクターブを用いた」

みたいに言ってもらってもOKです。

 

さらにこの場合で機能和声的に前半をつじつまを合わせようと思うと、

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普通に四度進行を入れていけばいいことになります。

なんとも微妙に普通なドミナントモーションとII-Vを連続した進行になります。

この歩幅による解釈が、Giant Stepsの不定調性論的にも優れた視点であると言えます。

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Giant Stepsは非機能進行がまだ機能和声から完全に確立される前の作品です。

通常レンジ2の四度進行や五度進行を使うのに対して、レンジ3の長三度を基本の歩幅にして、

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こうしたマザーメロディを作り、これらの不連続性を機能和声的に連鎖させるために、当時の慣用句であったII-VやUSTを用いた曲である、と分析することもできます。

 

先の記事ではUSTで解釈してしまいましたが、これを単発であるとすると、

B(短三度)D7 | G(短三度) B♭7 | E♭ | Am7 D7 |
G(短三度) B♭7 | E♭(短三度) G♭7 |B | Fm7 B♭7 |~

という短三度の7thコードに進行してます。これは中心軸システムで説明してもいいですが、せっかくですので不定調性論で解説しますと、十二音連関表の拡張が良いかと思います。

 

B-D7-G

におけるD7はGへのV7としての機能を与えるために配置されたものであるとすると、

B-D-G

という流れがベースにあると考えることもできます。

これを十二音連関表の拡張された図表での流れで書いていきますと、

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こう書くと、なんかネオリーマンにも見えてくるので優しく書きましょう。

 

まずCはじまりで書きますと、最初の部分は

C  Eb  |Ab   B  |E

こうです。これを和声の立体図で書くと、

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こうなって、

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こういう動きする和声の流れ、という解釈を行います。短三度は側面領域への移動、ドミナントモーションは下方領域への移動、これらが組み合わさった進行です。

 

同時にこれを行うと、その他の進行もすべて、十二音連関表の動きを作ることができます。

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連関表の一部を切り取りました。このようにいかような連鎖も作れてしまうことから、反応領域という発想を利用した非機能和声進行の機能化が可能になるわけです。

 

Giant Stepsは機能和声を活かした過渡期の楽曲ですが、それ以降のフリーに近づく楽曲の和声性については不定調性的に進行感に図形的シンメトリーを作り、それを奏者が共感覚的な想像力で意味を与えることで音楽が機能ではない美的形式で成り立つのだ、としていくことができます。