音楽教室運営奮闘記

不定調性論からの展開紀行~音楽と教育と経営と健康と

<基礎>音の振動現象~12音平均律へ・和音の発生

2018.10.5→2020.2.14更新

楽理関連記事目次はこちら

www.terrax.site

音高は振動現象の程度による・・・

音の振動現象は振動数という数値によってその程度が表され、Hz(ヘルツ=電磁波の発見者の名前)という単位を用います。西洋音楽(平均律音楽=私たちが一般に学校で学ぶ音楽)では、その振動数の数値の範囲によって割り当てられる音名が決められています。「音」自体は世界に存在しません。存在するのは空気の粗密波と鼓膜と脳です。あの音程を持つ「音」そのものは脳の中のみにあるだけです。


1秒間に440回空気が振動する現象が「ラ」の音、ということが約束となっていますので、それを理解できればOKです。

440Hz=A音、261Hz=C音などなど。

このページの下表「12音平均律の~」参照にして振動数と音名がある程度諳んじられるよう学習を深めましょう。

 

私達の音楽は12音平均律で出来ている・・・

歴史当初、音現象に名前や音高の範囲などありませんでした。

これらを12音で数学的に分割し汎用的に用いているのが現在の調律である「12音平均律」です。

ヨーロッパでバッハの時代には確立されていました(一般普及は19世紀になってから)。ある音とその1オクターブ上の音の振動数比を1:2として比率で12等分します。計算するには対数の概念が必要です。または関数電卓があればできます。

12音平均律が生み出される前にはどんな音楽であったか、というと、紀元前6世紀にはギリシャでピタゴラス音律という調律が作られ、中国では三分損益法という音律が作られ、人類は美しい調律と、音楽の美の構造に迫ろうとしていました。これらの音階にも長所が有りましたが、結果的に現代の先進国では汎用性と、機能性を重視した12音平均律が用いられています。この使用により、音響学上の完全な協和は得られなくなりましたが、あらゆる調であらゆる楽器で平均的な協和と不協和を得られるようになり、同一の音楽情報を自由にやり取りすることもできるようになりました。

 

和音の成り立ちは自然倍音に由来していると考える・・・

人間が和音を作った過程は様々だと思いますが、ラモーらはそれを根拠付ける現象として自然倍音現象を用いました。

ここでの根拠というのは、音楽理論という現代の学問で根拠としている理屈、という考え方でとらえておくと良いでしょう。和音が存在する科学的根拠がある、という意味ではありません。当時はなんでも自然現象と結びつけたがったのです。

ピアノの鍵盤を弾くと、特定の鍵盤がやたらとその空間で響いたりしますが、これはその部屋の中で同じ振動数を持つ壁や床、天井やその部屋に設置されている物体が共鳴してしまうためです(物体はそれぞれ共鳴する振動数を潜在的に有しています)。同じ振動数体を持つものは同じ空気の振動に触れ、同じように共鳴し、振動します。この共鳴する振動数どうしの数値の比を調べると、単純な整数比となることが多く、元の音の振動数を1とした場合1:2(1オクターブ上)、1:4(2オクターヴ上)、2:3(完全五度上)、3:5(長三度上)等の振動数を数列的に列挙したものを自然倍音列といい、共鳴する音として利用され、これらの音を同時に鳴らした場合「協和する」という感覚が経験的に認知でき、これが慣習化し、音楽理論の発展と共に様々な和音が出来上がることとなります。初心者はあまり厳密にここを理解しなくてもOKです。

和音を学習した時にまた戻ってくると、この話がわかると思います。

 

弦楽器の振動と倍音発生のメカニズム

楽器の弦はその弦の長さで発する振動数が決まっています。

一本の弦が振動すると、その弦の振動が弦の上を走り、結果的にその弦の半分(1/2)の位置、1/3の位置、1/4の位置等で振動の節ができ、その弦の長さに応じた整数倍の振動数が発生します。
「弦の長さが短くなれば音は高く感じられる」という法則を楽器等で確かめてみてください。ハープやピアノの弦ははじめからその長さに切られていますが、バイオリンやギターなどは自分で押さえて弦の長さを調節します。

ja.wikipedia.org

 

自然倍音列(基音~第16倍音まで)基音=C

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

11

12

13

14

15

16

C

C

G

C

E

G

A#

C

D

E

F#

G

G#

A#

B

C

これらの音名割り当てはあくまで近似値です。

自然倍音は単純にその整数倍の振動数音名を割り当てたもので、この数値は平均律と若干の差異を示します。

これらの自然倍音の振動数に基づく音律も存在します(=純正律=自然倍音に基づく振動数)。

12音平均律という音律は、倍音がもたらしてしまう振動数的な差異(純正律は半音が二種類出来てしまう)をあらゆる振動数で均等になるように不協和度のバランスを取った音律(どの調、どの半音も同じ比に統一した)、ということがいえます。 

 

12音平均律のC4~B4までの振動数表(単位Hz)

f:id:terraxart:20181201141403p:plain 

基音C1としたときの第16倍音までの自然倍音の振動数表(単位Hz)

f:id:terraxart:20181201141251p:plain 

倍音列表。

www.terrax.site

 

和音の成り立ちモデル

基音cのときの自然倍音第4,5,6倍音をみてください。ここにCメジャーコードの振動数が出現しています。この数理性が長三和音の協和性を裏付けていると主張するわけです。基音をIとしたとき、必ずIメジャートライアド(I△、長三和音)が現れる性質に基づくと、Cにとっての完全音程gとfに対してG△、F△を作ることができ、この三つのメジャートライアドの構成音を全て書き出すとドレミファソラシド(c-d-e-f-g-a-b)になります。ここから様々な短三和音や四和音などを組み合わせて作ることで機能和声的世界が展開していきます。

f:id:terraxart:20190329201759g:plain

 

和音の作り方・・・

今見たように、自然倍音から作られた振動数合算現象がメジャーコードという概念です。これらの和音の構成音を順に並べたときにできるのがCメジャースケール(ハ長調の音階)です。この音階を見てみると、音階音を一つ飛ばしでC音に音名を重ねていく(tertian order=3度ごとにの意)と倍音列から作った和音が出来上がります(下図は四和音の作成図)。この和音の発生ルールを参考に7音全てに重ねた和音群が「ダイアトニックコード」といわれるポピュラーミュージックの基礎和音です。

 

f:id:terraxart:20190329201837g:plain

 

 

完全音程ってなぜ完全??

自然倍音列を見たとき、第1倍音のcに対して第2倍音のcは1オクターブ高い音程を持っています。これが完全8度です。次に現れる第3倍音はg音であり、このg音は第2倍音のcより完全5度離れています。さらに第4倍音もcで、第3倍音のgより完全4度高い音程にあります。

この三つの音程(完全八度、完全五度、完全四度)は最もよく響き、協和する音程とされてきたので「完全に響く音程」として完全度数で呼ばれています。

ある意味では利便性ですが恣意的な名称とも言えますので覚えてしまえばよい、と思ってください。