音楽教室運営奮闘記

不定調性論からの展開紀行~音楽と教育と経営と健康と

(音楽系)夏の自由研究について

すぐできるものもあるので、キッズの夏の宿題などに活用してください。

 

<初級者編>

■今ポップス界で一番高い音を出してるのは誰か。

→多分女性アーティストだと思いますが、これで男性だったらそれはそれで意外ですね。

やり方は簡単です。ここ数か月~半年の邦楽ヒット曲(オリコンチャートのページなどを参照=ようはよく聴かれた曲)を100曲ほど聴いて、一番高い音を出している人が優勝です。。

高い声には地声、ファルセット、シャウトなど色々な声があるので、それを分けて調べるのも良いですし、「シャウトは除く、ちゃんと歌詞が載っている部分」などと限定して、シャウトの最高音は「参考」として列挙しておくと優秀。詳しい音楽の先生やバンドマンがいるなら調査に協力してもらっても面白いです。

大体曲の後半に高い音は出てきます。感情の盛り上がりを脳が心地よく受け入れる習慣があるからだそうです。

 

→この研究の目的は、過去30年ぐらいピックアップして調べることでポップミュージックの平均年齢の低下の可能性や、youtubeやボカロ音楽の浸透による表現の多様化、を調べる意味もあります。

 

→海外のアーティスト、アルバムの中の曲、過去のアーティスト、又は逆に低い音(これは限界があります)など、バリエーションも豊富です。

 

→音確認の鍵盤がない場合は、スマホの鍵盤アプリでも構いません。多少音楽力が必要です。

 

(注意)

→一瞬だけ出る高音を見逃したり、ビブラートの激しい音を聞き分けられなかったり、これは耳コピの要素も入ってきますので意外と中級者向けの研究なのかもしれません。

→ネット上にも音域を集めたサイトなどがあるようなので参考にされたら良いと思いますが、できる限り自分の感性を総動員して調べてみましょう。

 

ほかに

・今年のヒット曲の歌詞の中に一番登場した食べ物は何か。30年前とどう違うか。

・テンポの一番速い曲、遅い曲、長い曲、短い曲。大人数の曲。ここ数十年の傾向はどうか。

・いろんな部屋で同じ音を鳴らして録音してみて、残響効果を調べる(リヴァーブ)。

・日常のものを組み合わせてドラムセットを作る(木、金属、プラスチック、他などを組み合わせる。ペットボトルなどは水を入れれば音程が変わる)。

・自分が夏休み1か月でどのくらい高い音が出るか、トレーニングしてみる(専門講師のボイストレーニングを受けてください、まじめに取り組めば結構広がります。)1ヶ月の筋トレでどのくらい体型変わるか、と似ています。

 

 

<中級者編>

■いろんな日常の音を調べる

→電話のぷーーーーーって音、ドレミで言ったら何の音だかわかります?スマホが出てくる前はこれを知っていればチューニングにいかせたものです。

→エアコン、洗濯機、ガス器具の「ピっ」って音、高さで言ったら何ヘルツのどの音高なんでしょうね。

→スマホやパソコンの効果音っていったい。

→トイレのジャー!を消す機械の存在理由?

→電気自動車のあの静かな雑音の正体は?

→なぜ音が出るボタンと出ないボタンがあるのでしょう。

・世界のドアチャイム、インターフォンの研究。

・ベルや非常ベルの音、サイレンのバリエーションを収集する。

→その他、自分の家で聞く「ピ!」の音の高さに違いはあるんでしょうか。なんでその高さなんでしょうか。もっと低い音じゃいけないんでしょうか。高齢者用にはもう少し低くて大きな音が良いのではないかとか。覚えやすいメロディにはならないんでしょうか。若い頭で考えたらもっと良い策が出てくるかもしれませんし、そこに未来の音楽家の需要もあるかもしれません。

(これは録音して、DAWなどに並べてみて音程を把握してピッチを推測する、のが簡単です。ご家族がもしDTMやっていたら頼んでみては??)

 

→これは日常で聞く音で、音楽と認知されえないいくつかの音について考える機会を持つ、ということです。

人は無音でも体の中の音を聞いてます。

そもそも音は空気の振動であり、音の正体は脳の中で作られます。

カラスはカーカーとは鳴いていないのです。そう認識するのは人(と同様の聴覚器官を持った)の頭の中、だけ、です。

そうすると音という存在は不思議ですね。

 

→あらゆる音現象は、私たち音楽を作る人にとっては音楽です。鳥の声も、雷鳴も、風の音も、リモコンの音も。またそこには技術者の感性が詰まっている音もありますから、それらを感性で紐解いて、「一つの音」として考え、それが語ること、人生に及ぼすこと、などを考え笑、どうそれをとらえていくかを自由に考えて頂きたいです。

 

・機材によっては危ないので、スマホなどで録音して、聞き直しながら採集してください。またはYoutubeなどのメディアを最大限に活用しましょう。

 

・その他、パソコンキーボードをたたく音で何て打ってるか分かるのか、とか、日常でよく聞く音(パソコンキーボードを打つ音、電話のガチャって音、冷蔵庫を絞める音、トイレのドアが閉まる音)などを音だけで聞いて、みんなそれぞれどんなイメージが浮かぶか、などがありました。たとえば、PCキーボードをたたく音って、それを聴いたら、それぞれ自分がイメージするキーボードを思い浮かべますよね、大きさ、色、メーカーなど。同じキーボードの音でも人それぞれ違うイメージ、違う音でも同様のイメージを持ったりすると思います。感情も叩く音に反映されます。怒っていたり、神経質になっているときは「音もイライラ」して感じます。

 

同じサザンオールスターズの曲でも、人それぞれの青春が思い起こされるはずで、一つとして同じイメージの想起はありません。

皆が一曲に感動するそれを理解し、分け隔てのない音楽の可能性を知り、それぞれの音楽的現象にそれぞれの意味がある、ということを知ることの大切さを学ぶ意図があります。そのへんはこのブログで書いてきたとおりです。

 

・ピアノがある人は、「ピアノを適当にそれっぽく弾いて現代音楽を作曲してみる」という実践研究も面白いです。「草原」とイメージしてどんなメロディの感じか、が想像できればできます。音階などは気にしません。雰囲気を作り出すように努力します。こうした作曲の方法に最も近いの不定調性論的な思考です。

 

・飼い猫にピアノの上を毎日歩かせて、フレーズを20日間記録して、それを採譜するか音をつなげたり重ねたりして、現代音楽の制作をしてみる、というのはいかがでしょう。

 

 

<上級編>

■日常の音を再現

水道の水のぽちゃ!を短なおもちゃや、スマホ、神、家具などで再現してみる

蝉の声、虫や動物の鳴き声、自然の音、家事の音、いびき、などを何か別のもので再現してみてください。意外なものがいびきの音に似ていたり、例えば、コンクリートを茶碗やガラスで削ると蝉の声のように聞こえたり、とにかく工夫が必要です。

アブラゼミの声の再現に絞って、いろんなものを擦って再現して、それらを録音して、クラスのみんなに聞いてもらいましょう。どれが一番蝉の声に聞こえるか、かなり個人差があることに驚くでしょう。

 

■ギターが弾ける人

例えば一弦を全音下げてチューニングして、いつも通り弾いている曲を弾いてみてください。いろいろすごい感じになると思います。もっとチューニングを変えてもいいです。それでも時々、自分のイメージを超えて美しいサウンドが鳴る場合があります。

 

→その新しいチューニングで弾いた音楽に、それっぽい題名をつけてみてください。急にそれっぽくなります。でもそれが音楽のクオリアを活用した音楽表現の発端であると思います。

 

→どんな美しい音楽も楽器のチューニングが変わると、全く違う存在になります。

 

人それぞれ体内は全員違うチューニングがされていて、それを学校教育で同じチューニングにされてしまう場合があるだけです。もし自分の中で違う響きになったとしても、それを良しと言ってくれる先生や仲間に会い、人生を豊かにしていただきたいです。

先生は「生徒自身を探し出す存在」です。教え込むだけではないと思います。

 

 

・Eの曲で一弦を全音下げたらE7になりますから、多少曲によってはブルージーになる恐れがあります。これは決して「チューニングを下げるとブルースっぽくなる」わけではありません。それが分かって変えるならいいですが、そうでない場合はより混沌となるように先生の指導を仰ぎながらチューニングしたほうがおもしろいでしょう。

 

■ピアノが弾ける人

簡単な曲、たとえば「猫ふんじゃった」などを

・一番低い音域で弾く。

・一番高い音域で弾く。

・極めて遅いテンポで弾く。

・変なところで区切って弾く。

・(できる人)キーボードで音色が変えられる人は、ドラムの音色で弾いてみたり、銃声の音で弾いてみたり、EDMベースの音で弾いてみたりいろいろな音色で試してください。

・(できる人)沖縄音階で弾く。

・(できる人)スパニッシュスケールで弾く。

・(できる人)五音階で弾く。

などで、その曲がどんなイメージで人に伝わるか実験します。できるかぎりまじめに考えてくれる家族や、一般の大人の人に聞いてもらいましょう。音楽を知らない人であればなおさらよし、です。

 

→結局、「正しい音楽」は楽譜に書かれた作曲者が指定した音楽です。それ以外は「正しくない音楽」ということもできます。そしてそれらは演奏されません。しかし上記のように、パラレルワールドのように存在する様々な表現があります。

映画などであれば、どれもそれぞれのシーンで使えるでしょう。殺人鬼が真夜中にピアノを弾くなら、上記のうちどれでしょう。妖精が子供の寝息のそばでいたずらするように弾くのは上記のうちどれでしょう。

すべて使用用途があるでしょう。

どんな音楽音現象だって何かに使える可能性があります。若いうちから価値観を一つに定めないでください。世界の「正しい」は日に日に変わっていきます。

それぞれのシーンで使えるような絵を描いてみたり、研究用限定で、映画の画像をキャプチャーしてそれを見せながら弾いてもよいでしょう。

 

 

<力業編>

一日かそこらではちょっと調べられないものを調べるだけで、歴史的統計になるなんてこともあります。

・ボカロ曲の発表曲数の推移(2014〜)

これはアップ日を調べ曲数を数えればいいだけ。多分こういう統計は公式にもないはず。同様に登録者10000人以上のYoutuberの数、とかというのも正確な数は誰も把握していないはず。

 

・ツイッターで◯◯◯◯◯と発言したアカウント数

正確な数字ではないでしょうが、特定のデータにはなります。

 

・メジャーレーベルの女性曲の数と男性曲の数の推移

これも調べた人いないはず。レコード会社を限定するか、今年の曲だけに限るとか標本統計するといいかも。いずれにせよ夏休み中かかるよ。

 

・朝から晩まで一日何種類の音が聞こえたかを調べる。だいぶ適当になりそうだけど、「台所のまな板の音」「お父さんの車のエンジン」とかとにかく書き出せば、結構な資料になる。

これ大変だったら10:00-11:00とか限定すると良いです。その人の生活環境、仕事、ライフスタイルで全く違う音が聞こえるでしょう。

 

・学校中の人に何人楽器が弾けるか?楽器別に統計を取る。

あ、これ夏休みに入ったら無理か。

 

・スマホで0:00、1:00、2:00・・のぴったりの時間に聞こえた音を10秒間録音し、それをつなげて「夏休みのある一日」という現代音楽を作る。5時間録音して、それを3分に縮められるようだったらそういうのでも構いません。

 

・数を調べる、種類を調べる、分類する、並べてみる、はとにかく面白いです。

 

<この数日でなんとかしなくちゃ!編>

たっぷり夏休みを遊んだら一気に宿題!という方のための自由研究です。

■3日あるなら

自宅から聞こえる鳥の声、蝉の声、を録音する、時間別に録音して数日比較して、共通の鳴き声があるかどうか、カラスなどでも時間によって違う鳴き方があるのかどうかとかを調べるわけです。これは自分が住んでいる場所の生態系について知ることで、自然を大事に、自然に関心を、ということで意義があります。24時間体制でやれば、夜中の動物の声はなかなか独特です。

車/バイクの音、などでもいいです。混み合う時間、暴走族が活動する時間曜日、廃品回収の人が来る時間、近所の人がいつ出かけるかとかまで全てわかります。

■2日しかない

絶対音感調査。これ皆さんでやってみてください。

友達が十人くらいいるなら、みんなにその場で「ハッピーバースデー」の冒頭(またはみんなが歌える歌)を歌ってみてもらって録音します。その音の高さを調べます。いわゆるキーですね。みんな違うのか、みんな同じなのか、似ているのか、バラバラなのか。

友達がいない場合は、自分一人で2−3時間おきに朝から晩まで録音してみてください。自分がやるなら、自分がよく歌う歌でOKです。

家族がいるなら家族にも1日だけ協力してもらってください。

朝一と昼では高さが違うのか、1時間おきに歌うと、キーは似てくるのか、など、不思議な検査結果がえられるでしょう。食事をした後、運動した後、入浴後、など。

これら録音したものを翌日ピアノアプリとかで音を調べて高さを調べてレポートにしなければなりませんのでもう1日どうしても必要です。

■明日提出しないといけない

よほど切羽詰まっているのが好きなのですね。あなたは猛者です。社会ではそんなあなたの瞬発力が求められる日が来るでしょう。上記これまで書いてきたことを1日できるようにアレンジできるスキルがあるなら、1日でやってください。

単なるサボり魔であるあなたがどうしても1日でやらざるを得ず、かつ他の宿題もあって、自由研究に1時間しか割けない、というのであれば、仕方ありません。

下記を提案します。

・真っ白いA3用紙1枚か、A4用紙1枚を用意し表題として「身の回りで聞こえた音」とマジックで書き、時間、自然音、人工音、場所、印象欄を下記のように作りましょう。

もちろん15:00-15:02とか2分単位でも結構です。疲れる人は10分聞いたら30分休んで、とかのタイムサイクルでもOKです。

自分の外に注意を向ける行為は一つリラックスや瞑想にもつながる行為です。とにかくこれをやるだけでも気持ちが落ち着きます。

全部書けなくても良いです、というか枠内がいっぱいになればそれでいいです。

要は枠がいっぱいになればいいです笑。

そして一番大事なのは「印象に残った音への所感・心象」の部分です。

もし小学生ならばもっとわかりやすい書き方でいいです。

例えば、ひぐらしの鳴き声を聞いて「最初はすごく寂しさを感じたけど、ずっと聞こえてくるので今度うるさく感じた」とか、とにかく今本当に感じたことを書き記せることはスキルであり、自分との対話であり、意見の発信であり、クリエイティブな作業です。何を感じて、どう思ったか。

それは若い感性が感じる、とても重要な記録です。その人の気持ちを書き綴る者が発表されることは少ないですし、そういったプライベートな感覚が様々な人に共感を呼ぶ場合があります。

例えば「音も感じたが匂いが気になった」とか「カラスの声を聞いたら、急にお饅頭が食べたくなった」とか、突飛な感覚を得るときもあります。それもちゃんと書きます。

(学校に忖度したい人は、"夏が終わって寂しい"とか無難な文章でまとめてただ宿題を済ます行為に特化してもOKです。後で"先生も宿題を適当にやられて寂しいです"とか言われるとこまでがお約束ですが、夏休みの宿題が出来なくて怒られたぐらいでは気にしないメンタルを家族で共有してください。二学期盛り返しましょう)

 

「聞いた音への心象」「自分がそう感じてからの変化、行動動機」を書き記すことは作曲や音楽演奏と全く同じことであり、人生の行動規範全てに関わることについて書き記しています。私の不定調性論も結局、この観点から音楽を作るところまで展開できる方法論です。

 

これらをまとめて、もし余力がある人は、

・自分の周りの音を書き記した感想、自分の身の回りの自然環境などに対する想い

・今回の課題をやって、これからどう行動したいか

などのまとめ感想を書くと完璧です。

犬小屋がうるさくなってきたら、散歩に行きたいという合図だから、これからはその音が聞こえたらすぐに散歩に連れて行ってあげたい、みたいな感想は完璧です。

 

この心象記録は、さまざまなことに応用できます。クラス全員でやってもいいくらいです。人が何を聴き、どう感じたか、全然違います。

だから人は自分が聴きたい音を聞きます。こうした実験で人が違う感じ方をしていることを知り、それぞれの生き方の在り方を考えることで、人生にクリエイティブに接することができます。

そもそも「研究」に向いていない人がほとんどなのに、「自由研究」が全員必須ならばセンスのない学校のやることです。

やるなら「自由研究」「自由創作」「日記」「自由社会活動」のどれか選ばせてそれぞれが得意な分野で得意なことを記録し追求することができるのが長期休暇の良いところだと思います。

保護者の方も個々の才覚(得意なこと)を見極め、何に時間を割くべきか、何をやらせることが有意義なのかを考えて宿題とお付き合いいただければ幸いです。

 

極端な話、ゲームが好きな子は、ゲームの勝ち負け表、戦略のまとめ、戦略と実践考課測定とか計画し、一石二鳥の自由研究とかを思いついてください。独自の攻略法はそれだけで「商品」です。

 

良い夏休みを。