音楽教室運営奮闘記

不定調性論からの展開紀行~音楽と教育と経営と健康と

なぜダブルフラットやダブルシャープを使うの??

2018.7.30⇨2020.2.22更新

Q なぜダブルフラットやダブルシャープを使うの??
A 譜面で音符を判別しやすく分かりやすく書くためと、和音の構成音表記に従ったため、そして「音階」の名前の順に従うためです。

 

D#△(D#メジャートライアド)を例にとると、

その構成音は、

d#,  f##,  a#

です。

(##=ダブルシャープ=「X」でも表記します。)

変化記号の起源の話

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これならd#,g,a#と書いたほうが分かりやすいじゃん…。ごもっともです。

(下記譜の#は付属している音以外、他の音に影響しないものとします。)

f:id:terraxart:20190329201052g:plain

①=Cメジャーコード

②=Dメジャーコード

③=D#メジャーコード

です。

D#△はダブルシャープが付いてますね。

D△の各音の全てに#が付いているからD#△、と考えてみてください。

③は②の和音それぞれに#を付けていることが分かります。 

 

この##fをgに表記しなおしたのが④です。

④はたしかに#が減って見やすいですね。

そして⑤を見てください。これはDsus4です。

この音符のフォルム、④と⑤は似ていませんか??


これでは、初見演奏などで、演奏者がD#△を一瞬sus4コードと見間違う可能性があることを示唆しています。

 

そんなことがないように③のような表記をする慣習があった、わけです(諸説あり)。

いわば演奏家への気遣い表記、であったわけです。

 

また、メジャーコードは

i,iii,vの音程で表記

する習慣があります。

そのためd#,g,a#だとi,iv♭,vと言う解釈になり、i,iii,v表記になっていません。

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楽譜の歴史 皆川 達夫

 

音の階段状表記として

Dメジャースケールを考えてみましょう。構成音は、

d  e  f#  g  a  b  c#   d

です。D#メジャースケールは全部の音がDメジャースケールの構成音より半音高いので、全て#をつければいいですね。

 

d#  e#  f##  g#  a#  b#  c##   d#

 

となります。ダブルシャープがつきますね。

このダブルシャープを下記のように書き直します。

d#  f  g  g#  a#  c  d  d#

でも、これは「音階」という名前の如くの「階段状表記」になっていません。

 

音階は「音の階段」構造をしっかり表記するという慣習を基本としてみてください。

ダブルシャープやダブルフラットの存在も理にかなってきます。

そうした慣習を煩わしく思う気持ちはわかりますが、それと知識は分けてください。

ちなみに現代のDAWはEb表記に自動的にしてくれます。

f:id:terraxart:20200222184510p:plain

 

D#メジャー表記にしてみましょう。

f:id:terraxart:20200222184506p:plain

見づらいですね。でも一目で音階だとわかります。

しかし下記はどうでしょう。

 

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同じ音名が続いていて

音階=階段状のイメージ

になっていません。

これ、それも全部音階と言わせるならもっと意地悪すれば、次のようにも表記できてしまいます。

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エリック・サティなどはこうした表記を活用して、わざと読みづらい楽譜にした、などの話を大学時代の現代音楽の選択科目で聞いた覚えがあります。

自分が表現したい手段を、相手にスマートに伝えるための工夫の素材として生まれたダブル記号。見やすく使うのも、見辛く使うのもあなた次第、です。


また、この音はこの音のダブルフラットで考えるべき、という方法論至上主義の方などもいます。そこまでいくとご飯を食べる時の手順や行き過ぎたテーブルマナーのようなものになってゆきます。それらによって初めて良い音楽は良い音楽と断ずることができる、としてしまうことになり、いずれ自分自身に裏切られるでしょう。人間自体はもっと感覚を優先してしまう生き物だからですね。感覚が先に人間を作ったからです。

 

論理武装はファッションとして嗜むことをわかった上で理論武装する戦闘員になってください。逆に害がないので。

 

エッセンシャル・ディクショナリー 楽典・楽譜の書き方