音楽教室運営奮闘記

不定調性論からの展開紀行~音楽と教育と経営と健康と

The BEATLES"If I Fell"冒頭メロディの成り立ちを色々考える

2018.7.26→2019.10.2更新

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この記事は楽器片手に読む記事ですので、ぜひ音楽をやる方はお酒かジュースでも飲みながら読んでください。

 

<ジョンのデモの話>

以前はジョンのこの曲のtapeデモというのがyoutubeで上がっていたことがあり、つい聞いてしまいました。

John Lennon:"If I Fell" early home demo - YouTube

それを、ジョンが弾いたままを聞き取ったコードを下記に書きます(キー違うかもしれません)。

Fm   |E   |Eb  |Cm  |

Fm   |E   |F#m  |B  |

でポジションは弾いているように感じました。

音声はこれよりも半音以上低いです。チューニングが低いのか、テープの回転数が低いのか。

 

証拠があるわけではないので、半音ぐらい下がっちゃったギターで録音したのか、半音下げチューニングだったのか分かりませんが、開放のEが低いように思います(それとも全音下げ??かも。-ビートルズは半音下げとかよく使う)。

F#m   |F   |E  |C#m  |

F#m   |F   |Fm  |C  |

ジョンのポジションが上記であれば、開放Eの使用までは半音下りの得意なジョンらしい不自然のない流れ/作風になります。

音源ではギターのEのローポジションまでしっかり下がっています。

  

でもこれではさすがに歌のピッチが高い、となり(?)さらに半音下げて、結果としてノーマルギターでそれを弾こうと思うと、ギターでは一番弾きづらいEb、Dbというキーになったので、同曲のコード進行が妙な流れに思える、みたいなことになった背景とかを勝手に想像してしまいます。

 

間違っていたら申し訳ないのですが。

 

または全音下げギターで作っていた、とか。

それだと最初のEの開放までは自然な流れです。ただ半音ずらすだけで弾いていけば作れる。

 

みたいな流れで考えると、理論的には変なコード進行だけど、ジョンの作風を考えると、自然かな、ギタリストとしては自然かな、なんて思ったりもします。

 

キーやスケールなど考えない、不定調性論的な"個人の慣習によるコードの置き感"のような感覚に基づいて作曲をする、という考え方が容認できなければ成り立ちません。

 

つまりギターをなんとなく弾きながら、メロディを紡ぎ、コードを紡ぎながら、"自分たちがあんまり使っていないコードの流れで一曲作ったる!"みたいな気概のもとで作られた曲、と考えるわけです。そこには調性も転調も関係ありません。ただコードをなんとなく弾きながら歌いやすいところ、斬新だと思うところを探るからです。

これまでは、そういう行動に名前がなかったんです。

そこでせっかくなので「不定調性」と名前をつけ、それに基づいた作曲の方法を「不定調性論的な思考による作曲」と読んでいます。その時に頭の中でウロウロする感覚を「音楽的なクオリア」と銘打っています。

これで「適当にコードを弾きながら音楽を作る」ことが方法論になりました笑。

 

これで多くの理論不要ロックミュージシャンの行動が"方法論"になります。

あと大切なのは、出た音に対して、自分が「これは使えない」「これはやだ」「これはきわどすぎ」などと適切に判断できる感覚を持つまでひたすらその方法で音楽を作る経験が必要になります。当然ジョンにはそれがありました。

 

なんでそんなコードを挟んだか、という質問は的外れです。

作っているうちにそうなった、今作ったらそうなるかどうかはわからない、ということだと思います。最適解とは思わないが、その時はそれがベストだと思ったからそれをやった、という「意思」がそこに生まれます。

音楽理論的な経験と知識に加えて、こうした判断(拙論では"音楽的なクオリア"と総称しています)をしっかりと真ん中に置いて、折衝しながら作品制作に向かえば、理屈だけでも、感性だけでもない血の通ったオリジナル制作感覚になるのではないか、と思います。

 

そしてこのやり方(?)で後年I am The walrusのような作品が生まれたのだと私は思います。