音楽教室運営奮闘記

不定調性論からの展開紀行~音楽と教育と経営と健康と

<不定調性論用語/概念紹介16>上方性・下方性和音構築法〜根音の絶対性の解放から調和的発想へ

2018.6.13⇨2020.10.20更新

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和音を作る為の四つの音集合を規定しました。

上方五度領域 c-e-g

上方四度領域 g-b♭-c

下方五度領域 c-a♭-f

下方四度領域 f-d-c

 

ここから機能和声音楽に用いる和音を作るためには、中心音を変換する必要があります。機能和声音楽は全ての和音の中心が低音にある、という概念を信じている人たちが用いる音楽だからです。

 

ではどうやってこの四つの和音の中心音を変えたらいいでしょうか。

 

例えばCl5はいわゆるFmの集合と同じです。

私たちは何も考えなくてもこのCl5という音の集合をFmと認識するように音楽教育で洗脳されてきています。Fmの和音の中心音をcと考えることの方が難しいです。

しかしC△、C/E、C/Gという和音は、それぞれe,gが音楽的な中心音になるニュアンスを表現できる和音であることも知っています。

つまり音楽理論的な常識としての低音と、音楽的な中心音を様々に意識することができるのが現代人の柔軟な和音感覚だと思います。

また本来、音は平等である、という思想の方が、人は平等であるという現代思想と重ね合うと思います。

根音、低音優先、といった一方の理屈に偏らないで済む方法論にしてみましょう。

どの音でも扱い方によって中心音を想定することができる方法論という意味です。

 

そこで全ての音を中心にする方法を作り上げます。

「上方性和音構築法」

「下方性和音構築法」

という方法で和音の集合を作る、とします。

 

Cu5はcを中心にcが発生する和音、

Cl5はcを中心にcを発生する和音、

としてまず作成しました。

 

次に、Cl5をfを中心にして考える和音の発想を「一次下方性和音構築法」という発想とします。同様にCu5を「一次上方性和音構築法」で考えると、g音が中心になった和音ですから、G6sus4.omit3という捉え方になると思います。低音優先声部で考えれば、C/Gといった表記をすることができます。

表記の中心というよりも、その音を用いる人もしくは聴き感じる人が自在に中心と感じるわけですから解釈は個々で変わる(一時的なものだから)ことになります。

同じ音楽教育や音楽、生育環境にいたものは解釈が似てくるかもしれませんが、それは偶然です。

自然法則に何かが中心音として存在するという考え方を放棄するわけです。

 

また同様にそれぞれ第五倍音を中心に考えることは「二次和音構築法」になります。

Cu5を「二次上方性和音構築法」で考えると、eが中心音になりEm(#5)のような和音解釈になると言えます。Cl5ならa♭が中心になるのでa♭,c,fとしてコードネームシステムを採用するとA♭6omit5という感じでしょうか。

同様に七倍音が中心になる三次和音構築法も考えることができますね。

これにより例えばCM7は4音をどのように扱っても良い、となります。どの音に重きを置いても、どのように感じても良い、という訳です。

もしあなたに理論的思考の土壌がしっかりとあるなら、それこそ「あなたがどのように感じても良い」という土壌を提供することはとても大切だと思います。

 

短三和音の根音が五度の音であるのは何故か?という問題の一番考えるべき点は、短三和音のあり方そのものがまず疑われるべきだった訳です。

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どうしてもこれを自然の話に置き換えるなら、人と自然と意識を絡めるべきでしょう。

この話を太陽系の惑星でどの惑星が中心か、という発想等で考えることができるでしょう。もちろん物理的には太陽なのでしょうが、ここから木星を取り除いたらまたおかしなことになります(地球の存在も怪しくなる)。と言って木星が中心だ!と言ってもいつまでもそれにこだわることはできません。「中心か」というニュアンスには人の意識が絡んでいます。物理の世界では中心であることは一つの事実であるに過ぎません。

 

それぞれの存在があって調和が成り立っている、という発想が不定調性論的発想です。なので、人の意思もまたある時は太陽を中心に考え、ある時は火星の未来を中心に据え、ある時は我が地球のことを何よりも讃える、そういう風に考えを巡らせ生きていると思います。

そう言った思考の自在さが音楽表現の中で生まれるのは自然ですし、そういう発想が可能であることを方法論は述べていかなければ宇宙時代に適応できる音楽表現も生まれないのではないか、と考えます。

同時に中心を設定するという人のエゴのような存在も認めなければならないでしょう。

 

このようにそれぞれの音を中心と意識して和音を作れるなら、どれが根音、中心音として分けるよりも一期一会の響きの選択に委ねた方が新しい響きに出会えます。最終的に全て感じるままに選択するスキルをつけていく訳です。この和音構築法は12音を自在に扱うきっかけにすぎません。

CM7(9,#11)/Fは何構築法ですか?といったことを考えてもあまり曲の表現の中で言いたいことが明らかになる訳ではありません。

CM7(9,#11)/Fの響きがあなたにどんな情感を及ぼすから、どう使う、ということを判断すれば良いことになります。

 

あなたがC△をガツーン!と弾くとき、どの音を重視したいか、それが自分で自由になったらワクワクしませんか?

 

と言って、全てを破壊して即興的にやっていても非効率的ですし、先人への敬意と調和が感じられません。だからこそ先人の音楽理論がすでにあります。

それらのしっかりとした型を身につけた上で、自由になるためにどう考えたらいいか、ということを不定調性論は提供してまいりたいです。

 

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