音楽教室運営奮闘記

音楽と教育と経営の雑記ブログ~不定調性論からの展開

「ふわぁぁ」を表現する半音の和声;77, The Girl From Ipanema / Antonio Carlos Jobim★★★★

アントニオ・カルロス/ジョビンの不定調性進行分析

77, The Girl From Ipanema / Antonio Carlos Jobim

 


Andy Williams & Antonio Carlos Jobim - Girl From Ipanema

 

 

 

<A>
FM7 |FM7 |G7 |G7 |
Gm7 |C7 |FM7 |Gb7 |
FM7 |FM7 |G7 |G7 |
Gm7 |C7 |FM7 |FM7 |
<B>
GbM7 |GbM7 |B7 |B7 |
F#m7(9) |F#m7 |D7 |D7 |
Gm7(9) |Gm7 |Eb7 |Eb7 |
Am7 |D7(#11) |Gm7 |C7(#11) |

 

<A>
Key=F
IM7 |IM7 |II7 |II7 |
IIm7 | V7 | IM7 | IIb7 |
IM7 |IM7 |II7 |II7 |
IIm7 | V7 | IM7 | IM7 |

IM7=トニック
II7=ドッペルドミナント
IIm7=サブドミナント(IVの代理)
V7=ドミナント
IIb7=裏ドミナント(V7の代理)とかって書けますね。。

 

<B>
Key=Gb
IM7 |IM7 |IV7 |IV7 |
GbM7は<A>の最後のFM7のIIbM7にあたり、機能はサブドミナントマイナーとなり、pivotコード(蝶番コード)になって広がっていきます。

 

Key=F#m
Im7(9) |Im7 |VIb7 |VIb7 |→Gを想起
Key=Gm
Im7(9) |Im7 |VIb7 |VIb7 |
Key=G
IIm7 |V7(#11) |→Gを想起
Key=F
IIm7 |V7(#11) |

 

<B>におけるキーの変化
Gb--F#m(同主転調)
Gm--G(同主転調)
IV7=IVM7の変化和音、機能はサブドミナント
VIb7=VIbM7の変化和音、機能はサブドミナントマイナー

 

こういうことで楽曲が理解できれば良いのですが、この機能と調の分析で、どんなことが分かりますでしょうか?

 

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これに合わせて、下記のようなことが述べてあれば、作曲でのイメージがつきやすくありませんか??

<A>
FM7 |FM7 |G7 |G7 |
Gm7 |C7 |FM7 |Gb7 |
FM7からスタートして、IIに向かいます。

コード進行に慣れてくるとI→IIへの流れは独特の「アクティブさ」を感じるようになります(個人差あり)。これはIV-Vという流れに似ているからではないでしょうか。IV-VとくればIに流れますからダイナミックですよね。それと同じような感じをI-IIから受ける、という意味です。

 

この時のFM7とG7のメロディは同じ音が使われています。GM7でも弾けますし、Gm7でも、G△/F#でも弾けます。どのコードを選択するかは曲が出したい雰囲気、歌詞との整合性などが求められます。

 

FM7-Gm7よりも私は、カラッとした、または急進力のある、ポジティブな流れのように感じます。この曲の感じからいえば「ウキウキ」感と言えば良いでしょうか。

「ウキウキ感を出したいときはIIを使う」みたいな脳の回路を作ってしまえば、後は使いどころを狙っていればいいでしょう。結果として「イパネマっぽくなる」と言われることも想定しながら使わないといけないところがある、ということも頭に入れておきましょう。

 

そしてGm7-C7は一般的なFM7に結びつくII-Vになります。

いきなり飛び出したII7の浮遊感を、見事押さえつけて「耳障りの良い」流れです。聴きやすさが残りますね。
この辺りがビートルズとはまた違う、ジョビン氏の人柄、感性なのかな、なんて。


そしてGb7=IIb7ですが、これもべつにC7で良いのですが、この曲の浮遊感を出すために、このIIb7がふんわりとした導入を醸し出しています。このIIb7が<B>でのGbM7を上手に導き出しています。この半音上行の感覚がアクセントになって、ふわぁぁああ感の統一のバランスが見事です。

 

この曲、どの程度まで「ふんわり」がコンセプトだったのでしょうか。

 

でも作者がどう考えたかはどうでも良いのです。(つまりそこも大事だけど、もっと大事なのは)あなたがどう考え、どう表現するかを決めてから、それを表現し、歌いながら、柔軟に変化させて解釈を深めていけば良いと思います。

 

<B>
まず下記のコード進行でBメロを歌ってみてください。
GbM7 |GbM7 |Ab7 |Ab7 |
F#m7(9) |F#m7 |G#7 |G#7 |
Gm7(9) |Gm7 |A7 |A7 |
Am7 |D7(#11) |Gm7 |C7(#11) |
コードの流れが対称性を保っていると思います。
この流れでも歌えるのですが、<A>でせっかく創り出したふわぁあああ感がなくなって、少し陰を持っているように感じます。

 

それでは次の流れはどうですか??
GbM7 |GbM7 |BM7 |BM7 |
EM7 |EM7 |AM7(13) |Ab7 |
Gm7(9) |Gm7 |EbM7 |BbM7(13) |
Am7 |D7(#11) |Gm7 |C7(#11) |

 

M7の四度の流れや、ジャズの流れを意識したスムーズな進行感があります。
でも原曲の印象とはどこかちょっと違います。

 

原曲には、どこか暖かくてフワァアアッとした雰囲気がありますね。

GbM7 |GbM7 |B7 |B7 |
この流れでのB7の「小首をかしげる少女」感がいいですね。

 

F#m7(9) |F#m7 |D7 |D7 |
ここでの9thを頭のメロディにした浮遊感の清潔さ。VIb7のD7が前のB7の印象を受け継いで何かを語っているように感じます。こういうのを機能や調性のバランスではなく、聴感上のバランスで組んでいけるようになるための感性を訓練しよう、というのが不定調性論です。

 

Gm7(9) |Gm7 |Eb7 |Eb7 |
同じ形ですが、半音上げるという行為が、全体の浮遊感の気持ちよさとここもマッチしています。何処までもふわぁぁぁっていきますよね。

 

Am7 |D7(#11) |Gm7 |C7(#11) |
#11thの音が、少女の思春期の無垢な疑問、興味というような印象を感じました。

 

人は説得されっぱなしになると、もうその人のいうことを鵜呑みにしてしまう、というようなことがあるでしょう。そういう状態って音楽でもあると思いませんか?

すごく洗練された曲だけど、このふわあぁっとした雰囲気とは別の、作曲家の凄腕感も感じます。

 

それぞれの和音が持ってる空気感を理解して、「これは(自分にとって)どういう和音」「この進行はこんな気分」というふうにメモをしながら、それらの進行を気に入ったものから自分の作品で使ってみて下さい。

そうやって一瞬で覚えても、機能分析して、音楽の歴史を20年学んで紐解いてから理解を試みても、どちらでも構いません。自分が納得のいく勉強方法を自分で作り上げてください。

 

使ってる和音も音も誰でも同じなのに、なんでこんな響きの流れ、作れちゃうんでしょうね。

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