音楽教室運営奮闘記

音楽と教育と経営の雑記ブログ~不定調性論からの展開

137,Lemon / 米津玄師(1・コード進行編)★★★

137,Lemon / 米津玄師

(追記)

ちなみにFlamingoのコードもこちらの記事で扱っています。

www.terrax.site

 

そのモノトーンの歌声の質感と、冒頭にdimがあるから」にツボを突かれました。

歌声の質感の存在も大きい。

コード進行は真似できたとしても声は真似できない。

 

冒頭から「あ、それずるい」って思いました。分かっていても避けられないボクサーのパンチがお腹に入った感じ。つまり「米津dim」です。強烈な普遍性のある和音ですし、人はそれに共感します。

短調に切なさを感じるような文明に生きている限り、この普遍性が変わることはないでしょう。

 

この記事は★三つですので、一般的な楽理の知識がある、という前提ですのでご了承ください。作曲やる人用の記事です。

 

下記もご覧下さい。

米津玄師 MV「Lemon」 - YouTube

<参考>
 
topic1<日本型短調の権化;根音省略型dim>
早速dimの話です。日本的で陰鬱なコード。霊的に突き刺さってくる和音。日本人しかわからないコード?かも。怖いコード。畏敬を感じる短調かな。
これはこのdimが凄いという話ではなく、この和音に感じることを述べただけです。
 
Lemon
     G#m       F#                 
 夢ならば どれほど   
    E                      B
よかったで しょう
    E            B           
未だに あなたのこと  
Fdim                   D#
を              夢にみる 
 
このFdimです(歌メロ2オーラス目はベースラインがdーfと流れるのでDdimとも解釈できる)。
ここをこうしてみましょう。
G#m |F#  |E |B|
 E  | B |A#7   |D#|

これでもメロディーは歌えます。でも「夢に見る」感が出ません。A#7ですと少し淡い感じがして、私には優しいジブリ感。

ちょっと香りが弱まり、聴くものをアンナチュラルの感じに感応するレベルではハッとさせません。

で、これをdimにすると、ハッとさせられるわけです。
(米津楽曲にはdimや後に紹介するm7(b5)が時折スパイスのように出てきます。このアーティストの雰囲気に合っていますよね。人は自分に合った和音を見つけられるのでしょうか。)
 
ではさらに次のようにしてください。
   G#m    F#             E          B
   E           B         A#7(b9)        D#
どうでしょう。これで少し近づきましたね。
どういうことでしょう。
 
A#7(b9)=a#,d,f,g#,b
です。
Ddim=d,f,g#,b
=Fdim,G#dim,Bdim
です。
 
似ていますね。このDdimというのは、A#7(b9)の根音省略系なんですね。
つまり
A#7(b9)=Ddim/A#
というわけです。別に知らなくてもいいです。
 
その前に7thコードにb9thのテンションが乗せられることを知っていないといけません。これがなんで乗せられるかは、ジャズ理論におけるドミナントモーションのしきたりを知っていないといけません。もちろん知らなくても音楽はできます。むしろ知らんほうが良い活動時期もあります。

www.terrax.site

 

このdimコードは、半音で次のD#に結びついています。

B=b,d#,f#

Ddim=d,f,g#

D#=d#,g,a#

構成音の流れも綺麗です。

d#--d--d#

が綺麗ですね。半音での連鎖、というのは、ちまちま動いているように見えますが、実は一番ダイナミックな音楽的な和音の動きを感じる動きなんです。パワーコードでがーん!がーん!というダイナミックさが男性的なら、半音の変化は美的で繊細な女性的ダイナミックさです。

 

この辺の両性具有さが凄くミステリアスです。なかなかここまで際どい感じを伴奏側で具現化って難しいと感じます。

全部自分で作る、ってこういうことなんだと思います。

 

==================

Dimの補足です。

例を挙げます。楽曲とは直接関係ありません。

 CM7   |Dm7   |Em7   |Am7  |

みたいな進行で、セカンダリードミナントに任意に置き換えてみます。

ex1

CM7   |B7(b9) |Em7  |Am7  |

ex2

CM7   |Dm7   |E7(b9)   |Am7  |

 ex3

CM7   |Dm7  B7(b9)  |Em7  E7(b9) |Am7  |

で、dimコードはX7(b9)の省略形ですよね。だから

ex1'

CM7   |D#dim7 |Em7  |Am7  |

ex2'

CM7   |Dm7   |G#dim7   |Am7  |

ex3'

CM7   |Dm7  D#dim7  |Em7  G#dim7 |Am7  |

ってなるんですね。その曲のメッセージにあったコードを自由に使ってみてください。

似たようなものに、パッシングディミニッシュっていうのがあります。

これはちょっとまた違って、定義としては、

「長二度根音が離れたダイアトニックコード間に置かれたディミニッシュコード」です。 

 

だから、

CM7   |Dm7   |Em7   |Am7  |

であれば、

CM7  C#dim7 |Dm7 D#dim7 |Em7  |Am7  |

とかです。置き換えるんじゃなくて、「挟む」んです。

この和音も米津楽曲に出てきます。

================ 

 

 

 AD

   

   

 

 

同曲でのdim7コードはII7(b9)=ドッペルドミナントにb9を乗っけた7thのディミニッシュです。キーAmでやってみましょう。

Am   |Bm7(b5)  E7  |Am

これがダイアトニックのII-Vですね。

でこれをII7にします。

Am   |B7  E7  |Am

ちょっとエスニック、というかスパニッシュというか、辛味が効いて、しつこくなりますよね。これをさらにしつこくします。

Am   |B7(b9)  E7  |Am

 きゃーしつこい。これを薄めるには逆にテンションをまぶします。

Am7(9)   |B7(b9)  E7(b9,b13)  |Am7(9)

テンション=張りが立つ、というような意味ですが、本来は使い込むことによって全体のテンションが上がって、逆に平らになるんですね。コンプ使いすぎた音源みたいな感じです。

この辺に使用経験とか、持って生まれた才能みたいなことが関わってくるのではないかと思います。どれがベストか、とか誰も教えられません。

 

この"Lemon"のディミニッシュの辛味、ノスタルジーは、マイナーキーでのII7の辛味なんですね。みんな大好き短調の

II7。

民族的で、粗野な色彩、内在する本能的な感覚、みたいな。

 

====

topic2<m7(b5)の教科書的利用>

さて、この曲にはもう一つ匂うようなコードがあります。せっかくですので。

C#m7       G#m       E   F#      Fm7(b5)

の「帰れないコード、Fm7(b5)」です。これも普通いろんな曲を勉強してないと使えないコードです。でも動画文化のおかげで若い方にもだいぶ浸透しているコードなんじゃないか、と思います。
これはIV#m7(b5)でトニックマイナーの代理コードです。
VIm6の転回形です。
つまりこの曲のマイナーキーの主和音G#mのG#m6の転回形です。
だから
E  F#  G#m6
って流れてるんです。でも「帰れない」んです。そのままE---F#---G#って行かないで、fに戻ってしまうんです。E---F#---Fって。この感じが「帰れない」感じしませんか?
 
問題は、このm6コードをいつ使うべきか、です。
今こそm6を使わなきゃ!!!
って作曲してる時に思えなければ、いくら覚えても意味がないですよね。
前の行でG#m使ってるから、繰り返し使うのはつまらないなぁ、とか色々感じられる感覚ももちろん必要ですし、それを才能というのかもしれませんが、まあm6のこの使い方は、経験でなんとかなるレベルです。また、これは歌詞のニュアンスと連動したコードなので、さらにカッコ良くないですか?
 
"帰れない"の「い」の音がG#mの三度の音bで、これが6thのfとつまり、Fm7(b5)の根音fと増四度でぶつかり、なんともやるせない言葉の響きを聞かせます。これを生かすにはG#m6よりFm7(b5)の方が効果的です。まあとってつけた話に聞こえるかもしれませんが。
 
この二つのコードDdimとFm7(b5)が、私にとっての
「胸に残り離れない苦いレモンの匂い」
でした。「レモンの味」ってしないところが素敵だな、って思います。「苦い」で味についてすでに述べてありますし、レモンの匂いってどんなだっけな、、ああ、、酸っぱさを強烈にイメージさせるなんとも言えない匂い、、、
え?苦い?苦いって言われると、"酸っぱい"が軽く感じますね。レモンの清純さの裏の顔、みたいな。青春の裏。
 
などと、曲中はすぐには感じなくても、実はじわじわと心の中に印象として浮かんできて曲を聴きながらじんわり感じてきます。
 
 
感情が味覚とかと一緒にリアルに感じません?これも技法ですよね。
感情+実体験で伝えることで人はリアリティを感じます。
ユーミン楽曲の「ルージュの伝言」には「紅い」って言葉は一回も出てこないけど、もう聴き手には紅い口紅しか浮かんでこない、っていう技法と同じです。
まあ、真似できんですよ。。。わかってても。。
 
======
 
曲の頭にDdimがくるじゃないですか。まずこれが1分ぐらい頭離れませんよ。左頬に強烈なパンチ。で、この曲に慣れてきて、サビの最後あたりでやっと痛みが引いてきた頃、今度はFm7(b5)で右頬にパンチ。

もはや、「いい曲だぁ」って思わせる効果しかないわけです笑

それだけと言えばそれだけだし、それすらできないのが普通です。

それはなんか音楽理論的にどうこうではなくて、時代の勢いに乗ったパワーだから、洗脳と同じです。騒ぎ立てても曲は変わりません。来年はまた違った感じになってしまうと思います。

 

でも他のアーティストのどんな曲でも、何か魅力を見つけてこのくらい書けます。

この曲が特別なのではなく、たまたま久々にコード分析したかったので見て聴いて感じていたら色々感じた、というだけです。

皆さんもぜひ自分の好きな曲をとことん語ってみてください。

それからアーティスト側はyoutubeでどんどん営業されると良いと思います。 

 

このブログではアーティストの誰も書かないところを書いて褒めるのが好き、かも。

 

====(注)

もちろんDdim7とDdimは全く異なるコードですが、ここでは汎用性のある感じを考えて書かせていただきました。解釈によっては、ここはDdimの方がDdim7よりも鮮明になって良い、と感じるかもしれません。この場合省略形としての響きが薄まって、7thコードの意義が失われるのではないか、と思われるかもしれません。

しかしそもそも「根音省略」という発想自体が文化の名残であり、そうした曲を聴いてきたので、たまたま手法として頭の中に入っている、というのが実際です。

ですから、不定調性的には、こうした慣習からの刺激を自由に解釈して、どんどん新しいコード感で曲を作っていくべきだ、と考えます。

====

 

 

====

Lemon / 米津玄師 ギターコード譜 - U-フレット

こちらのサイトで、後半は「溢れて止まないのは涙だけ」という部分にGdimがあります。聴いてみると確かにGdim的な動きをしてます。

 

dimコードというのは全て短三度の音程差で作られているので四つの構成音で四つの解釈ができます。

 

Gdim=A#dim=C#dim=Edim

です。

G#mに解決するV7はD#7です。

D#7(b9)=Edim/D#ですから、ここには最初のDdimと同じ感覚のディミニッシュコードが入っているわけです。

米津楽曲には時々出てくるコードです。好きなコード感なのかもしれませんね。

"苦いレモンの匂い"でG#mへのII-Vを使っています。

これは言ってみれば、油断すると超和洋折衷な超ダサいコード進行になりがちなので使いどころにとてもセンスと覚悟が必要です。

このマイナーキーのV7とかV7(b9),II-Vの使い方に卓越したセンスのある方なのだな、という印象も持ちました。マイナーのVって日本人大好きノスタルジーコードなので、聴き手が求める時に差し出せるセンスが必要です。

いい感じの曲を聴くたびに

「お!俺も使おう!!」

とかって思って使ってみて、よく失敗して書き直すコードです笑。

 

====

で、さらに応用。

CM7  |Dm7  |G7(b9)  |CM7  |

とあった時、ディミニッシュにすると、

CM7  | Dm7  |G7  Bdim7 |CM7

とかになりますね。でこのBdim7ですが、四種類の同一和音があるわけです。

Bdim7=Ddim7=Fdim7=G#dim7

つまりこれらを7thコードに戻すと、

A#7(b9)=C#7(b9)=E7(b9)=G7(b9)です。

で、これをそれぞれII-Vにします。

Fm7(b5)-A#7(b9)=G#m7(b5)-C#7(b9)=Bm7(b5)-E7(b9)=D#m7(b5)-G#7(b9)

です。

これがもし同じだとすると、代理できるわけですから、

CM7  | Dm7  |Fm7(b5) Bb7(b9) |CM7

というようなこともできる、ということになります。

 

しかしながら、機能和声ではここまでの代理は推奨されません。キーが見えなくなるから、です。どちらかというとこれを推奨してくれるのが中心軸システムです。

でも、聴いていただくとわかる通り「なんか、、、ちょっとやりすぎじゃね?」感が漂っています。不定調性論では、こうした「肥大した代理」感覚による新たな正当性の確立を制限しています。

つまり「あなたが、これは違う」と思ったらそれは「代理できない」として良い。

というようなことを可能にするわけです。

わがまま可。

また逆に、あなたが「これは面白い」と思えばどんどん使用OKです。

さらにCM7  | Dm7  |Fm7(b5) Bb7 |CM7に影響されて、

CM7  | Dm7  |Fm7(b5) Gm7(b5) |AbM7

という曲ができた、って言ってもいいんです。

 

不定調性論は、脈絡のない発想、意味のない感覚からあなたが生み出すものに価値を与えよう、という発想があります。

それがあってはじめてライブでいきなり歌詞を変えたり、イントロをなんかめちゃくちゃにして曲を歌い始めたり、ライブの最後でギター叩き割ったり、という行動の意味がもっと本人の中で明確になります。

すべては貴方の意思と責任。それ以外はありません。

 

その2に続く。


www.terrax.site

==コーヒーブレイク〜M-Bankのロビーの話題から==

部屋が畳だから椅子がないんですよね・・高いところとか登れるなんか便利なのない?

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