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歌詞については掲載しておりませんので
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こちら等にて確認ください。
ありのままを抱きしめて
ユーミンの歌詞の中の死についての着想については、他のページでも触れています。
恋愛や人生はどうなるか分かりませんが、死は決まっています。
先の見えないことへの不安から歌を作ったり、思いを歌ったりするわけですが、人生どんなに苦労しても努力しても、死だけは避けられません。
未来が定まらない想い(恋愛、人生)と、定まったものへの想い(死、季節の巡り)。
こうしたシークエンスや対称性は普段の日常会話で話していてもしっくりこないものですが、歌という世界の中に配置されることで、脳内でチェスの駒のように構図を作ってくれます。音楽の不思議です。
音楽は言葉よりも、もっと大きなイメージ感とか模様、言語感を持っていますよね。
歌にコンプレックスがあった、というユーミン氏の感性の出口が、こうした歌詞の印象世界において拡大し、余計に感性が拡張していったのはとても興味深いです。
告白
Aメロ〜(アルバム収録タイム 1:10-)
Am7 |D/A |Am7 |D/A |
Am7 |D/A |Am7 |D |
Bメロ
FM7 |Esus4 E |Am Am/G# |Am/G Am/F# |
FM7 |G |C |C |
サビ
B♭ |C |Am7 |Dm7 |
E♭ |B♭ |C |Asus4 A |〜Aメロ
キーはAマイナー/Cメジャーで、これがサビでいきなり主音aにとってのII♭のB♭メジャーコードが現れます。
ユーミン楽曲にはIm→II♭と解釈できる流れが時折現れますね。
これにより旋律音もB♭メジャーキーに展開していく「接続感」で転調しています。
半音で接するコード感に変化感を求めて転調を行う転調感が良く現れた曲です。
またサビの終わりのAからAメロのAmコード連鎖感も特徴!
同主調転調感がドキドキするような展開で飽きさせません。
コーラス戻った時にカッコいい戻りができると興奮しますよね!
別れのビギン
メロディに9thが印象的に使われています。
「9thってこういう響きがする」というのを知っていないと出てきません。
慣れです。
9thの響きにはルートに対して鋭いですが、5度音に極めて協和する音(五度音の五度上だから)。
基音を危うくしながら、自らを主張する浮気者のように感じられる音です。
主音よりも属音にラブコールを送る音ですから。
こんなことを考えて歌詞も作りそうなユーミンの音楽力は、ちょっとフォローしきれないですね。自分には不定調性論的思考、と言う武器がなければ追いつけません!
忘れかけたあなたへのメリークリスマス
Aメロ(アルバム収録タイム 0:25-)
B♭/C |A♭M7/C |B♭/C | Fm7/C Cm7 B♭/C A♭/C |
B♭/C |Cm7 |E♭m7(9)/A♭(A♭7sus4) | B♭m7(11) |
Bメロ
Gm7 A♭M7 |Gm7 Cm7 |
Gm7 A♭M7 |Gm7 Cm7 |
F |F |G |G |
サビ
A♭/B♭| B♭/C |A♭/B♭|Cm7 |
A♭/B♭| B♭/C |A♭/B♭|Cm7 |
浮遊感溢れる楽曲。
聴取したコードは実に多解釈可能でこの通りだとは全然思えません。
分数コードがコンセプチャルに使用されている印象。
冬の寒々しさ、クリスマスの世情に流されそうで、流れていかない、浮いてしまった主人公の心情のようなものを、冬の冷たい風に浮いてしまう足元、そんな印象を想起させます。
これは分数コードにどのような印象を持つか?で個人の印象は分かれるでしょう。
前半はベース音がcで統一。
「世情は流れていくが、自分は追いついていけない、変化できない」
「Bye Bye may rainy Christmas水色の包装紙に染まった街をただぼんやり見てる 空っぽのイヴの午後」
という表現と動かないベース音が同期しませんか?
Midnight Train
ビバップの雰囲気は、まるで夜の帳のようですし、地下鉄の中で繰り広げられる人間模様のよう。
言葉にしようと思えばできるけど、してみると音楽以上には雄弁になりません。
ジャズがインストゥルメンタルである大きな理由は言語で感じるよりもより感じるものを感じたいから、でしょう。
そういう意味でも実験的に感じますし、十分ポピュラーミュージックの裾野をこの一曲で拡張している、とも言える曲と感じました。
言葉の意味の向こう側を見る、という段階にユーミンミュージックが具体的にかなり食い込んできてますよね。
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