ビートルズの不定調性コード進行研究
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ビートルコードができるまでを探る〜Past Master/Cover 3
デイ・トリッパー - Day Tripper
この作品については、下記をご参照下さい。
120、レディ・マドンナ - Lady Madonna
レコードの方では、この曲のポールの声のエフェクトがとても変わってますよね。
この曲はいぶし銀のビートル進行と、IVmからの展開で有名です。
A D |A D |A D A|F G A :|
がAメロです。キーはAメジャーです。
そして、
Dm |G7 |C |Am |
Dm |G7 |C Bm7 |E7sus4 E7 |
展開がDmから、というのが面白いですね。
これメロディから出て来たのでしょうか。それともコードから作ったのでしょうか。
微妙にAmに一時転調しているみたいなかんじ。
これってAメロのF-G-AもVIb-VIIb-IでAmのダイアトニックコードが差し挟まれていて、非常にビートルコードしています。
Amキーがそばに常にあって、平行短調への憂いほど暗くしたくない時に、同主短調のコードを差し挟んでいるようにも思いますが、どうなんでしょう。
イギリス人女性の厳しい生活を彼らならではのテンションで歌っていますね。
なんとも切ない皮肉だけど、そんなこと考えてたら生きていけないじゃない!?
っていう強さもこのロックに感じます。
この転調感を「社会の二面性を出そうとした転調」とかって解釈してしまうと、ビートルズが底の浅い存在になってしまいます。
むしろ、そんなことを考えないで作っていっても、そのようにできてしまうのがあの時のビートルズであり、ポール・マッカートニーだと考えたいところです。
そういう意味の歌詞、そういう風に言いたいメッセージ、を着想したとき、細かい楽曲の構成などを事前に考えなくても、作曲時に探りながら短時間でそんな風にできてしまうこと、これが結構大事です。
理屈を考えていては「着想の瞬間の興奮のエネルギー」をつかむことができませんし、アイディアの鮮度が失われます。アイディアは鮮度を失うととても魅力的でなく見えてきてしまいます。
たとえは良くありませんが、魅力的な女性(個人差あり笑)がパッと現れた瞬間、色々なことが男性の頭の中にはよぎります。これによって男性は生きる意欲がみなぎります笑。
作曲の時に出会ったアイディアやメロディもそれに似ていますよね。
その女性だって、化粧を落として、生活苦などを小一時間聞いていたら、さっきの意欲も落ち着いてしまいます。
だからささっと作って、短期間にある程度勢いでまとめておいて、鮮度をぎっしり詰め込んで、どういじってもその鮮度が失われない状態にした上で、熟考モードに入るように工夫していただきたいのです。
だから不定調性論では、こうした事例を初期学習時に頭に入れて、自分が音楽を作るときは、考えずして、なんとなくその曲を象徴している音楽的クオリアを生み出せるようにトレーニングします。自分の感覚を探る旅です。
この「ビートルコード」というのは、もちろんビートルズだけのコードという意味ではありませんが、これで歴史に名前を残した、という意味では、これらの和音の響きが作った世界観もまた彼らとともにある、というわけです。