ビートルズの不定調性コード進行研究
全ての記事はこちらから
ビートルコードができるまでを探る〜Past Master/Cover 2
シーズ・ア・ウーマン -She's A Woman
She's A Woman (Remastered 2009) - YouTube
この曲は別段不定調性、というわけではないのですが、ブルースを聴き慣れていると、あれ?って思う人はいるかもしれません。
ブルース的なんだけど、ブルースじゃない。ブルージーな要素を普通の曲に入れている、ような感じです。
A7 |D7 |A7 | % |
A7 |D7 |A7 | % |
D7 |% |% |% |
A7 |D7 |A7 | % |
E7 |% |D7 |% |
A7 |D7 |A7 | % |
というのが一つの区切り。そして
C#m |F#7 |C#m |D7 E7 |
いわゆるタイトルコールパートですね。
Cメロのような部分になってます。
12小節だけを回すシンプルブルースとは違ってこうした付加ラインが入ってくるから、演奏していても楽しいし、ストーリーの展開が見えてきます。
これって最初の八小節ができたら、たいていはブルース形式に楽曲が吸い取られて終わりなんじゃないでしょうか。
だってブルースにした方がウケがいいし、分かりやすいし・・・。
ビートルズの発想は、やっぱりそれじゃだめだ!ということなのでしょうか。
アイム・ダウン - I'm Down
I'm Down (Remastered 2009) - YouTube
ビートルコードロックンロールの名曲がこれじゃないでしょうか。武道館公演の最後の曲。
歌唱パートは一瞬聴き流すと、ロックンロールに聴こえますが、中身は全然違います。
G7 |% |% |% |
C7 |% |G7 |% |(C7 |% |)
D7 G7 |N.C. |D7 G7 |N.C. |
という14小節でまとまっているスピーディーなロックナンバーです(後半は12barのロックンロール形式でフェードアウトしてゆきます)。
ブルージーな要素をふんだんに入れていきながら、リトル・リチャードを残しつつ、ブレイクなどのロックの間を作りつつ、メロディ優先、というか、メロディ構造優先でコードが当てられています。ちょっと天才なんじゃないか、とおもってしまう。
あ、天才か、、。
ロックンロールとは、Gなら
G7 |% |% |% |
C7 |% |G7 |% |
D7 |C7 |G7 |D7 |
という12小節が定型です(これ以外にも型は沢山ありますが)。ポールの好きな「のっぽのサリー」的楽曲ですよね。
たとえば、I'm Downの最初の四小節が頭に出てきたとします、それでその先を皆さん、作ってみてください。
普通はブルース進行でいこう、とかって思って吸い取られたりしてしまいます。でもそうしたら一方で
「こんなありきたりなブルースで、真新しい曲なんてできっこない」
なんて思ってやめてしまうかもしれません。
ポールのロックンロール愛が、新しいロックンロールを生み出しました。
このメロディから先に浮かんできたような感じもします(コードは後で当てていく)、だからこそこの流れ、この雰囲気が生まれた、とすれば納得です。コードから作ったらこうはならないんじゃないかな、なんて凡人なりに感じました。
またポールのコードに頼らないメロディ着想の凄さを感じさせる曲でもある思います。
イエス・イット・イズ - Yes It Is
Yes It Is (Remastered 2009) - YouTube
展開部にVm7-I7-IVの初期得意の展開が入っています(進行そのものはジャズ由来)。
E A |F#m7 B7 |
E A |D6 B7 |
E |A D6 |C#m E |~
Bm7 E7 |A F#m |Bm7 E7 |C#m C#m7 |
F#7 B7 |~
Bm7-E7の所ですね。
これで三曲目になります。この展開は、いってみれば部分転調に相当するのですが、彼らにとってはミクソリディアン的な雰囲気を持ちながらもダイナミックな展開を作れる進行としてマイブームだったのかもしれませんね。
何よりコーラスがなんとも言えないビートルズ的な装飾ですね。