2018.2.4⇨2020.6.28更新c
ビートルズの不定調性コード進行研究
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ほぼ全曲ビートルズのコード進行不定調性考察「The Beatles」6
ハニー・パイ - Honey Pie
古き良き時代、という感じの曲ですが、ビートルコードが結構効いています。
Aメロ
G |G |Eb7 |E7 |
A7 |D7 |G |Eb7 D7 |
G |G |Eb7 |E7 |
A7 |D7 |G |F# F |
Bメロ
Em |C#m7(b5) |G |G7 |
C |E7 |Am |D7 |~
こういう曲を聴いて、ジャズに目覚めた人もいたのではないでしょうか?
でもやっぱりちょっとジャズとも微妙に違うビートルコード。
ビートルズからジャズにいくと、急にがんじがらめが待っているんです。
II-Vのがんじがらめですね。
あれ、ジャズってなんかつまんね
ってなるんですよね(特にイメージしてたモダンジャズの和声進行については、という意味です)。決まり切り過ぎてて。
ジャズのルーティーンを聞いていると、あの「ハニーパイ」で感じた、「コード進行って自由なんだ・・・」という"憧れ"がどこかに消えて行ってしまうんですね、多分。
II-Vのように、「こうなったらこうなる」みたいな常套句がビートルズにはありません。「慣用句」など彼らにはないんです(大枠としてあるのは"ビートルズであること")。
ゆえに、ジャズはビートルズではなく、ビートルズはジャズよりも先の概念をコード進行概念に入れ込んでいた、と考える方が納得がいくのです。ポップスはジャズの先にある音楽です。大衆の目線まで音楽表現を引き下ろし、モダンジャズ以降に向けられた賞賛ではなく、卵が投げつけられるレベルで音楽を行う勇気を持っていないとポップスやロックは出来ません。ジャズは高みでぶつかり合う様を見せて魅せていただく音楽ですが、ロックは悪友たちとの無礼講な飲み会です。潰されたら負け!笑
そうなると、この曲のBメロのC#m7(b5)にも納得がいくでしょう。
これは機能和声的に考えると、Em6です。つまりここは、
Em→Em6
と進んでいるだけなんですが、これですと、あまり変化感がないですよね。
そこで、
Em→C#m7(b5)
です。
しかしここではGに、なんとルートが増四度進行します。
ジャズから入った人は、ちょっと違和感があるでしょう。
ジャズであれば、このコードはF#7に進みます。そういうジャンルなのです。そうしても怒られないジャンルなのです。
ただポップスがそれをしたら
・気取りやがって
・セオリーに逃げんてじゃんーよ
・それ、オールディーズの真似じゃん
・やる気あんの?
と言われます。もちろんジャズはさらに違うところでいびられますが。これは飲み会なので。
ビートルズは庶民の飲み会に女王陛下を招いてしまったのですから、なんというか次元が異次元。
でもこの進行こそ「ハニーパイ」ですよね。
ビートルズは「この曲にこの進行あり」という、ジャズがなかなか付けられなかった「このコード進行はこの曲」というイメージをほぼ全曲に渡り付けて来た、と思います。これがすごい。ビートルズを早くに経験すると、似たコード進行が出てくるバンドとか聞くと。
げ、真似じゃんダサ。って思うんです。
ルパン三世が何かを盗む時は、いつも新ネタで臨みますよね。
以前やった方法が上手く行ったから今回も、なんてことはしません!
それと同じように、ビートルズも常に新ネタを探し求めていました。
また、逆に面白いのは、そのアルバムアルバムで「良く出てくるコードの流れの傾向」があるのも事実です。これはきっと若者のマイブームゆえです。
これはアルバム単位で、音楽的実験を行い、「コンセプト」があったのかもしれません。ユーミンレポートなどでもアルバムごとの傾向、というものがあることが面白いです。
そして、次のアルバムのときには、それまでの実験を活かしながら、また新しいことをやっていく・・・そういうアーティストのあり方や姿勢なんかも私個人は大好きですし、影響を受けました。
常にスリーコードしか使わないということが悪い、という意味では決してありません。それもまたスタイルです。
私はそういう風に七色に進化できたらいいな、という性向がある、というだけです。
自分が心地よいスタイルを見つけていくしかないですね。