音楽教室運営奮闘記

不定調性論からの展開紀行~音楽と教育と経営と健康と

不定調性論的楽曲解釈の事例1~トレンドの曲を例に:Haux - Heartbeat

不定調性論ならではの楽曲アプローチです。お楽しみください。

二つの思考と作業があります。

「イメージを感じる」

「イメージを具現化する」

open.spotify.com

「楽曲分析」というと、元来楽譜に落とす、という作業があります。

しかしその時点で楽譜が書けない人は音楽の分析できない、となります。

それでは音楽を気楽に考えてみたい、という人が減る一方です。

楽曲構造を知るには楽譜が手っ取り早いですし、作曲する人はそれができないと話になりません。しかしもっと別のアプローチがあります。最後は

「イメージが具現化」できないといくら分析できても意味がないんです。

美しい不協和も見つけられません。振動数だけで音を聞くのではなく、全体の音楽情報が持つ雲域を自分の人生で得てきたイメージと照合できる「余裕」があるかどうかがとても大切です。

 

<歌詞>

genius.com

各自訳してください。

「冬」「ハートビート」「私たちの家」こんな言葉を感じます。

歌詞の意味以上に、「凍てついた〇〇」という印象を受けます。

こういった言葉から浮かぶ印象を心の表面にふわっと乗せながら音楽を聴くわけです。

映像見えてきました?

 

<骨格>

Fm  Db  |Ab  Eb  |

が繰り返されていきます。Dbは曖昧です。コードでは考えていない感じの置き方です。エモーショナルです。他の曲でもたくさん出てきます。

ここではエレピがふわっと、幻想のように鳴るだけでサビ長めの音価とディレイによる刻みになります。軽い変化です。印象は、「独り言」「追憶」「後悔」「全く可能性のない希望」「最後は足搔かず静寂をもって進もう」といった印象を持ちます。

バスドラがハートビートのように響きます。

 

<動画>

Haux - Heartbeat (Official Video) [Ultra Music] - YouTube

薄暗い雪交じりの道は、人生の寒々しい道。少しやつれたトラック。青春の終焉のような場所。新たな船出は曇り空。

ヘッドライトはかすかな希望。

車が進めなくなって止まって、追憶が始まる。

 

みたいな理解をさらっと自分で作ってみましょう。

これが作者の意図でないか、あるか、なんて関係ありません。

作者は本当のことは言わないでしょうし、意味など無いのかもしれません。

意味はあなたが作って納得すれば、それがクリエイティビティになって、音楽制作に限らず、あなたの生活を豊かにしてくれるでしょう。音楽はそういうふうに使って頂きたいです。

 

じゃあ、冬の曇った海は、あなたにどんな印象をもたらしますか?

そして青いバックに浮かぶ女性は?

最後の赤くなる置物は?

きっと制作者には意味があるでしょう。あの赤い置物は心臓なのかもしれません。

深い意味があるかもしれません。我々の理解を超えた宗教的な意味かもしれません。

本当の制作者の意図を知っても意味がありません。

 

制作者はあなたではないからです。

音楽はリリースされた瞬間、聴き手のものになります。だから制作者から「リリース」されたらもう手放され、人のイメージの巣になる、というわけです。

だからあなたが積極的に感じてください。別に誰かに押し付けるわけでも教えるわけでもないんですから。

言葉にならなくてもいいです。心に浮かんだモヤモヤっとしたものに対して、あなたが心地よさを感じれば、それを「好き」と表現してみましょう。「綺麗だけど、スキだけど、イヤ」みたいに感じるかもしれません。それも立派な感情です。

何でもかんでも解答用紙にかけないといけない、ということはありません。

悲しい時は泣くだけでいいのですから。

嬉しい時は微笑めばいいだけ。

そうしたことが抵抗なく表現できれば、人種や文化を超えて手を取り合えるはずです。

音楽の意義はそこにあると思います。

それを感じるのが不定調性論的な音楽の一時解釈の方法ですし、学術的分析の外縁部を網羅するものだと思います。

 

言語がその表現力の低さゆえに瞬時にあなたの感情を適切に表現できないだけ、です。

感じたことがあれば、あなたはその音楽を感じたことになります。

それを自分の仕事や生活のバイタリティにすればいいだけです。

いちいち歌詞の意味を解釈し、人と議論し、発表する必要はありません(散々やってきたので分かりますが、あなたが若いうちはそれはただのエンターテインメントですし、歳を重ねれば詩の朗読になります)。

 

<アレンジ>

・ボーカルの寒々しい音感と独り言のような感じ、ダブルトラックのエコー感、微妙に左が強いアンバランス感が、心の淀みとか、迷いみたいな印象。ちゃんとそれが曲のイメージ、歌詞のイメージとマッチングしてます。

・Sawサウンドのようなオブリは、人のハミングかな???息遣いが聞こえます。エモーショナル。言葉にならない叫び。自分への掲示。問いかけ。 

・サビ前パートのPADサウンドも、人のコーラスかな??全体が人の声であることで、すごく「心の中」感が出ているように感じます。

・サビ前はブラックアウトのタイミングとリバース的サウンドが視覚・聴覚効果を作っています。これも使える常套手段。

・サビで青い女性、一気に印象が変わって、サビに引き付けられます。クラップが左寄り、シンプルなハットの細かい刻みはトレンド感と同時に、雪や砂がちりちりと落ちていくようなサウンドにも聞こえました。海、冬にマッチングしています。

・サビの最後で「Heart Beat」っていうところでバスドラが心音を作ります。ありきたりなところだけどオシャレ。こういうことしそうにない曲調だと思い込んでいたからかな、こうしたミスディレクションも大事ですね。直感的に入れたのかな?

・2コーラス目の場面転換はサビ前と同じリバースサウンド、これはストーリー感を連続させるため、でしょう。

・2コーラス目はフィンガークラップ。バンガーな太鼓音、1コーラスとまるで違います。目覚めた感じ。

・2サビもまた青いんだぁ。。とか思いました。darkest moonとかって言葉もあるからかな、とか。

・2サビ途中で2:29ごろ、ブレイク&ローカットでボーカル残しです。"beat"でリズムインがカッコいいですね。

・Cメロはボーカル残しで、さらに寒々しく歌います。このパートまで歌ってきてさらに寒いってことは、この話はまだ癒されてないんか、みたいに感じます。奥深い寒さ。そのままブリッジ。

・ここでブリッジの右チャンネルは女性のボーカルだと気がつきました。2コーラス目もそうなってた。男女感。歌い方をわざとアンバランスにしてる。揃えていない。二人の距離感。

・ラストサビも変化なく、ここでサビのボーカルがセンターであることにも今気がつきました。聴きなおしたら1コーラス目からそうなってた。ラスサビは一番センターが強いようにも感じたのは、アレンジなのか、自分が何か拠り所をおきたいからそう感じているのか。

・エンディングはあっさり。寒くてあったかい曲。

 

こういった感じを自曲で再現できるようにするには、プラグインの何を学んで、どういう作業過程を学べばいいのか、訓練すればいいのかをレッスンでやったりするわけです。

 

これ20回聞いたら、また違う印象になるんです。

脳が受け取る情報の濃度が違うからですよね。

選択の連続であり、いつも未知の選択を迫られます。

 

なんとしても「イメージを感じて具現化する」です。 

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