2018.1.13⇨2020.7.11更新
ビートルズの不定調性コード進行分析
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ほぼ全曲ビートルズのコード進行不定調性考察「Abbey Road」4(2018)
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ユー・ネヴァー・ギヴ・ミー・ユア・マネー - You Never Give Me Your Money
この曲もビートルコードの教科書みたいな感じですね。
まず冒頭の部分は「枯葉進行」です。
Am7 |Dm7 |G7 |C |FM7 |Bm7(b5) E7 |Am7 |
ダイアトニックの四度進行ですね。
中間部では「oh magic feeling~」というところで
F Bb |C |
のCメジャーコードをセンターに置いた、ビートルモーションができています。
また後半は、「today come true~」のところで、
C G |A |
のAをセンターに置いたビートルモーションが出てきます。
キャリー・ザット・ウェイト(Carry That Weight)では「You never give me your~」のメロディが使われています。
「え?これこのまま、バラード1曲にしなかったの?」
なんて子供心に残念がっていたのを覚えています。
また、このメロディシングル曲にしないんだ、余裕だな、みたいにも思いました。
「美しいのは当たり前」「基本的にこのクオリティ程度は普通」「美しさとか、売れるとかじゃなくてもっと斬新な価値を求めていこうよ」「もうこういう曲はいつでも作れるから」というちょっと次元の違う鬼気迫るものを感じます。
サン・キング - Sun King
C |CM7 |Gm7 |A7 |
C |CM7 |Gm7 |A7 |
Am7 |D |Am7 |D |
C |CM7 |Gm7 |F |
A |A B |E |% |
A |A B |E |% |
最初のセクションのキーはFだった!!というのが最後にわかるのが、まるで推理小説みたいですが、これFはたまたまたどり着いたキーにも感じます。
確かにさかのぼれば、Gm7=IIm7だし、A7はIII7の雰囲気を持っています。
でもCM7なんです。C7でなければFのキーになりません。
この曲ではAm7--Dがドリアン進行Im--IVを思わせます。
こうした進行感を独立させて組み合わせると、ハードバップの世界の出来上がり!です。ビ・バップも拡大すると不定調性ですからね。
ビートルズはジャズが求めて煩雑化して限界に向かう道筋とは別の方向から、ハードバップを作り上げました。ロックでの不定調解釈のやり方を発明したバンドだと思います。
ミーン・ミスター・マスタード - Mean Mr. Mustard
Eb |% |% |% |
Bb7 |% |Db7 |% |
Bb7 |% |
Eb B |Bb7 |
Eb B |Bb7 |~
ビートルコードの曲ですね。皮肉っぽい印象感が歌い回しや展開などにも醸し出されているように感じます。
ポリシーン・パン - Polythene Pam
ドラムが印象的ですね。
A E |B |A E |B |
D |Gb |
G A |B |G A |B |
やはりビートル進行ですね。
こうしたメジャーコードの連鎖による雰囲気の連鎖が、B面全体を何か統一されたストーリーがあるような雰囲気を作っています。聴き手側は強い「所有感」を覚えませんか?
シー・ケイム・イン・スルー・ザ・バスルーム・ウィンドー - She Came in Through the Bathroom Window
A (F#m) |D |A (F#m) |D |A (F#m) |D |
D7 |A |Dm |A |Dm |
G7 |C C/B |G7 |2/4C |4/4 A |~
センターがAになります。A-F#m-DはI-VIm-IVへの移行の活用です。少しブルージーになってますね。
そしてDmの意外な使い方です。
ポピュラー機能和声で言えば、このコードはIVmになりますが、このAはDmをIとしたV7化しているように感じます。転調的利用と言えるのかもしれませんが、それよりも、Dm使ったらいいカンジだった、という観点から見た方が良いと思います。
またG7-Cという流れがG7をドミナントに、Cをトニックに見立てるような進行になっています。これもA→Dmと対句のように対比されます。
つまりDmをAのIVmとするのではなく、Dm=Imという感じ方、ですね。このへんは「感じ方」ですから個人の自由だと思います。
そして何事もなかったかのようにAに戻ります。
ペニーレインの頃は、「これ結構イケてる転調じゃね?」という構えたようなところもありましたが、もうこの曲などでは、さらっと無謀な転調で歌ってしまいます。
この曲、ブルージーに入って、そのまま行くやと思ったら、Dmがきて急に、陰鬱な雰囲気を作ります。
このアビーロードには最初から陰鬱な影があり、なんともいえません。
マジカルミステリーツアーあたりから、このなんとも言えない陰鬱が麻薬のように耳に残り、ポップでヘッドバッキングするあのビートルズがあきらかに、近寄りがたいアーティストになってしまったな・・・なんて感じたりもします。
このあたり、こういうレベルに行ってしまったバンドの音楽性の方向性を決めるのは会社として難しいのだと思います。
会社や周囲が適切にアドバイスできる環境にあるバンドの段階が一番いい、と言われるのがなんとなくわかります。
ゴールデン・スランバーズ - Golden Slumbers
CM7 |% |Dm |% |
G7 |% |2/4 C |E7 Am |
Dmadd9 |G7 |C |
C |F |C |% |F |2/4 C |
E7 Am |Dmadd9 |G7 |C |~
美しいですね。
メロディも美しいし、コードはC-Dm-G-Cのスリーコード。
荒涼とした曲が見え隠れしたアルバムで、後半この曲のような急に懐かしくて、優しくて、暖かい!と感じを与えてくれます。
不定調性的な楽曲は、調性的な楽曲と絡み合うからこそ活きる、ということでしょうか。
考えるんじゃない。感がえるんだ。
この曲の9thも奇麗です。