音楽教室運営奮闘記

不定調性論からの展開紀行~音楽と教育と経営と健康と

If I Fell(和声進行に基づいた旋律設定の例) / The Beatles

2018.1.2→2019.10.2更新

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ビートルズの不定調性コード進行分析

If I Fell / The Beatles

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出だしの部分の特殊進行が有名ですね。
Ebm |D |Db |Bbm |
Ebm |D |Em |A7 |
となってます。

この曲をもって「ビートルズのコードの使い方は変わってる」などと言われたりします。

しかし彼らのやり方の方が自然だと思います。

自分が知っているコードを並べながら、歌に合うであろうコードを探して乗せる、ですから。

現実的な分析は下記で行なっています。

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問題は不定調性論を用いずに、この曲を分析する、という場合です。

 

例えば、ジャズ理論なら下記のように正式に書けるかもしれません。

Ebm |C7(b5,9) |Bbm |Bbm/Ab |
Ebm |F#7  B7 |Em7 |A7 |

果たしてこの理論的に正しいコード進行は「ビートルズ」でしょうか。

実際当時、ビートルズを説明できる音楽理論はありませんでした。

 

というより、ビートルズがやったから、不定調性論的な方法論ができた、と言ってもいいでしょう。つまり、

「知っているコードをいろいろ並べ替えながらメロディを探す」

あるいは

「できたメロディを歌いながら、とにかく知っているコードを当て込んで、しっくりくるものを探す」

です。この時にめくるめく頭の中のイメージを「音楽的なクオリア」と呼んでいます。

自分の意思をちゃんと持たないと、自分おやっていることに説得力がなくなってきます。 

 

そういう意味では、

Ebm |C7(b5,9) |Bbm |Bbm/Ab |
Ebm |F#7  B7 |Em7 |A7 |

このジャズ的進行表記も、所詮ジャズジャイアントの誰かの思考法の借用だ、とも言えます。またはこの理論を作った人間の思考の借用。

 

つまり、あなたの音楽を作るときは、あなたのやり方でなくてはならない、をビートルズは体現しています。

 

 

原曲を

key=Db

IIm7(subSD)  | IIb△(subD) | I(T)    | VIm(subT)  |

                   key=D      

IIm7(subSD)  | IIb△(subD)IIm(subSD) |V7(D) |

                                                                   ⇒IのII-V化      

などと分析して書き出せてもビートルズの秘密は分かりません。

 

この曲のイントロは、
「もし君と恋に落ちることがあったら、約束して欲しい、本当のことを言うって」

というメッセージの"説得するような感じ"が楽曲冒頭の"コードが下降する感じ"

とイメージがフィットしているように感じます。

先の"正答"としたジャズ進行にはそうした若者らしいぶっきらぼうな感じがありません(音楽的なクオリアがそう感じさせる)。

それは年配の紳士のような響きです。そう思わない方は、ジャズが合っている、と言えます。

 

コードを押さえメロディを歌いながら次のコードを自在に探しつつ、メロディを作る方法が不定調性論的な作曲の方法です。慣れてくると、模索せずとも直感できます。

ジョンがそうした作曲方法の達人だったからできた作品、と言えるかもしれませんね。

 

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