音楽教室運営奮闘記

音楽と教育と経営の雑記ブログ~不定調性論からの展開

和声があなたに与える"動機"を表現に活用する〜ビートルズ楽曲topics

2018.1.11⇨2019.1.13更新

ビートルズの不定調性コード進行研究

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www.terrax.site

ほぼ全曲ビートルズのコード進行不定調性考察「With The Beatles」1(2017) 

6、イット・ウォント・ビー・ロング - It Won't Be Long

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アルバムのトップを飾るにふさわしい、スピード感溢れるコーラスが印象的なナンバー。
Aメロ、
E |C |E |% |
に面食らいますね。
ギターコードで言えば、EとCなんて最初に覚えるコードに属すると思います。


それをつなげるだけなのですが、さすがなセンス。スリーコードから教える教育がいつこの手の和音の使い方をレッスンで教えるか?ですね。1年ぐらいは教えないんじゃないかなと思います。機能分析で考えた時に同主調、平行調、ダイアトニックを覚えてからじゃないと概念が難しいからですね。

でもそんな知識いります??この二つのコードを連続させるのに?

ビートルズの事例があるわけですし、不定調性論はもう皆様暗黙のうちに理解しておられると思います。これらの和音の使用はモーダルインターチェンジでもなんでもなく、

「知ってるコード並べて作ってたらいい感じにメロができた」

だけです。これを平行調云々で説明して起きる矛盾に気がついていません。

「それが理解できて、この和音が作曲時に並べられるのか?」

それよりも、二つを並べた時の「進行感」だけに注視して、それが自分にとってなんなのか、どういう音楽的意味を持つのか、を知っていた方がささっと使えると思います。

そういう思考の単純化を不定調性論における音楽的なクオリアの全面的な活用において目指したわけです。これは拙論独自なものですが、その根源を辿れば、紀元前300年代のアリストクセノスらの思想、人間の根本的な"理性と感覚の活用"にまで遡れます。

アリストクセノス - Wikipedia

 

その他の知識は誰かと音楽理論という分野の煩わしさを酒の席で話すときにでも使ってください。ピタゴラスの後の時代、音楽理論家はどれが正しい音律か、についてひたすら議論と著作を交わしていました。現代における方法論論争と似ていますね。

 

こういう適当なことをやってるからビートルズは売れなかった、っていうなら拒否するのも分かるのですが、史実は逆です。認められた地位の人の音楽は"新たな正統"になってしまうんです。

 

だからこれから音楽を学ぶあなたは、ここ100年の音楽教育の微視的な伝統と一緒に、紀元前から伝わっている感性と理性の表現活動への応用についての巨視的な価値観を同時に吸収し、感覚で和音を使うことに疑念や罪悪感を覚える必要がないことを知ってください。

 

 ====

また展開部の
E |Ebaug |D6 | C#(7) |
A |B7 | F#7 |B7 |
も独特ですね。 

C#7からF#m7-B7と四度で流れないところも素敵です。ジャズを学ぶと一時期IIーV命!となりがちですが、IVに行くクオリア、ビートルズの自在さを時に感じてみましょう。彼らは無知であったわけではありません。ポールもジョンもジャズやクラシックを聴きながらバンド内でずっと勉強を続け=ザ・クオリーメン〜シルバービートルズの記事を参照、その上で、「俺たちはこうする」と選択しただけです。

   

この半音で下がるパターンがエンディングでも出てきます。

エンディング
A B7 |..G Gb |F EM7 |
半音階でコードを用いた、とも見て取れますが、それにしては、微妙に変化和音や付加音があります。augのサウンドの使い方、下降による半音和声連鎖などが作る雰囲気にイメージが沸いていなければ、こうした曲中で適材適所にそれを使うことはできないでしょう。

 

たとえば、
C-Baug-Bb6-A7
だとすると、ここではg音が残っています。このあと続けようと思えば、
C-Baug-Bb6-A7-AbM7-Gm7-F#7sus4(b9)-F7(9)-E7(#9)-Eb7-D7sus4-C#M7(#11)-CM7
みたいになるのだと思います。

こういう流れに「あなたの音楽的表現の印象=あなたにとっての抽象的なストーリーや心象」を見つけ、当て込むことができる人は、音を聞くだけでメロディが浮かびます。

もししっくりこない、メロディが浮かばない、という人は、自分がメロディが浮かぶ範疇で音楽をやるしかないんです。つまりそういう人はUSTやコンテンポラリージャズを学校で勉強する必要はよほど余裕がない限り要らないと思います。

(自在性や面白さを感じる人は是非勉強すべきです。将来使うかもしれません)

 

7、オール・マイ・ラヴィング - All My Loving

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不朽の名曲、ですね。

何でこんなに楽しい曲なのに、泣けるんでしょうか。心に訴えるギターリフがなんとも言えません。
「郷愁」と「青春」の色褪せない勢いのようなものを、あの三連のリフに感じます。

感情がかきむしられるんです。あの三連の刻みに。

若者だけが持つ苦悩と情熱のような音楽的クオリアをこのリフから感じるのです。
あなたは感じませんか?笑

もし感じるとしたら、それは音楽理論的にどう説明できますか?

不定調性論はできます(いつも生意気ですみません)。

つまり「よくわからないけどそう感じる」という事実があることを認めることが「音楽的なクオリア」を把握する、ということ、すなわち不定調性論的な思考で音楽をやること、になるからです。

感じたら、理由を探すのではなく、使ってみる、作ってみる、感じ入ってみる、感想を発信する、なんでもいいです。それが「音楽的なクオリアを活用する」という方法論の実践なんです。

何も感じない人は、何も感じません。

感じる人は感じるままにやってみればまた新たな表現が生まれます。その理論的根拠や脳科学的理由は、専門家の回答を待つしかないんです。

理由を考えず、事実を活用しよう。です。脳のブラックボックスはまだまだ謎だらけです。だから感じたことを表現や行動にまず活用する、というのが不定調性論における音楽の活用法になります。難しい論拠も難しい概念も何も知らなくていいんです。

そして音楽は多解釈性を持つので、分析や解説はいくらでもつけられます。でもそれをいつ使えるかを活用できなければ分析できても意味がありません。少なくとも作曲をする人は。

分析している余裕は作曲時にはありません。感じたら活用する、それだけです。

脳は分析と創造を同時にはできません。少なくとも私は。

人を好きになった時、その人のことを好きだという気持ちを分析して抑え込んで手なづけることができますか?

私は好きな人とはできる限り一緒に居られるようにするための行動をとりたいんです。なぜ好きかとかを考えて何かを納得させることができない人間なんです。

こういった行動思想が不定調性論にも反映されています。

作曲時の脳が活用できる方法論にしたかったんです。

だからあなたの方法論とは合致しないかもしれません。

ゆえにあなたはあなたの方法を見つけて、それでオリジナルなものを表現してほしい、と述べています。

 

不定調性論の教材は、その分析する際の諸要素と根拠を列挙しているに過ぎません。

それを読まずとも音楽はできます。

 =====

F#m | B7 |E | C#m |
A |F#m |D |B7 |

ただのEメジャーキーのダイアトニックですが、メロディの上昇感によってとても肉厚に感じます。この最後の部分、
F#m→D→B7 (topがf#で統一されたリフ)
に中学生の頃、かっけーなぁ!!!と感じていました。
DはVIIb、ビートルズ得意の同主調からのコード利用です。

 

サビの
C#m-C#mM7-E

も地味に凄くないですか?
ex.C#m-C#mM7-C#m7
じゃなくて、
ex.C#m-B7-E
でもなくて。

選択の美学ですね。「普通じゃダメなんだ」って彼らの声が聞こえてきそうです。

普通じゃないやり方でヒット曲を作ってしまう彼らの偉大さを、音楽の仕事に就いて苦労してからようやく分かりました。

 

 

 

With The Beatles