2018.1.9⇨2019.11.26更新
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ビートルズの不定調性コード進行研究
ほぼ全曲ビートルズのコード進行不定調性考察「Please Please Me」3(2017)
ラヴ・ミー・ドゥ - Love Me Do
コードはG,C,DのGメジャーで、メロディがGドリアン的に展開します。メロディにf音がメインで登場し、Dのときにf#音が現れ、何だか転調したような感じを受けます。
メロディにはブリッジのブレイクからの「love me do」でGの上で堂々とブルーノート的短三度であるBbがメインで出てくるので、なんだかGドリアンにモーダルインターチェンしたような響きを作ります。ちょっとダークになるんですよね。
明るい曲でもなく、暗い曲でもない、まさに「ミクソリディアン感」です。
bナチュラルは出てこないのですが、ギターがもろGメジャーキーのため、コードとメロディを総合してGミクソリディアン的響き、と言えるかと思います。
ミクソリディアンという概念を知ってるのと、このビートルズのこの独特な"感じ"を適切に表現できる言語化能力/文章能力、どちらがより有効でしょう。
この辺りが音楽理論家が理解されず、評論家の言葉が理解されることにつながっているのかな、と感じます。
評論家は、人がうまく表現できずにモヤモヤとしているLove Me Doのビートルズらしさを適切に誰でもが理解できる感覚表現に落とし込める職業です。
"Love Me Doはビートルズ独自のブルースミュージックと言えます。
本来のブルースの和音進行を用いず、ブルースの音階からブルース独自の雰囲気の音を必要最低限メロディに用いることで、まるで彼らのヘアスタイルのような丸みを帯びて清潔感のある、泥臭さのない新たなブリティッシュブルースになっています。"
事実であるかどうかは関係なく、適切に表現ができてしまうのです。それはそれで有利です。あとはあなたが好きな評論家の表現を追いかけて行けばいいわけです。
一方音楽理論家は音楽理論の専門用語を用いて、一般の人がわからない聞き馴染みの無い事実を淡々と述べます。事実なのですがピンときません。
"Lov Me Doはミクソリディアン的です"って言われても、ミクソリディアンがなんなのかわからない、っての。
ゆえにちょっとズレてても批評家的音楽理論家は伸びます笑。そして燃えます。ゆえに覚えてもらい、発言権も増します。
一般論は評論家に聞けばよいことです。
事実は音楽理論家に聞けば良いのです。
不定調性論は、もっと原始的でプライベートな表現と個人的納得を得る方法を目指しています。世間一般を納得させる表現ではなく、自分が納得すればいい訳です。
これにより、
「この音楽すげーやべー」
という表現は、それまでは"稚拙で語彙力のない表現"だったかもしれませんが、もし本当にそう感じたなら、現在その人が表現しうる限りの表現を探し見つけ理解できた結果の表現ですから、適切な自己表現だ、と言えます。
そこから先に理解を進めるか進めないかは個人の自由です。
個人の感じ方が全て、となりますから、時には隣のおばあちゃんが言う人生訓が自分に刺さるときもあれば、何万円も払って聞いたインフルエンサーの言葉が刺さるときもあり、音楽理論で説明した方がわかるときもあり、自分の子供の批評が的を得ているときもあります。
私の「正しい」を決めるのは私だ、が不定調性論的な鑑賞法です。
P.S.アイ・ラヴ・ユー - P.S. I Love You
ポール・マッカートニーというメロディメーカー。本当にすごいです。
Aメロ
G C#7 |D |G C#7 |D |
G C#7 |D | D A7 | D |
このC#7、有名ですね。
キーはDメジャーですから、IVはGです。C#7はその増四度上の和音であり、裏サブドミナント(通例の音楽理論用語にはない概念)みたいなコードになっています。V7の増四度上がIIb7で裏ドミナントと言われるのと同じです。ジャズでは、
G7 Db7 |CM7 |
みたいに動きますよね。アプローチノート的に。一瞬Db7でアウトした感じ。
同曲はこの真逆な動きをしています。キーCで考えると、
F B7 |C |
です。
ポールはジャズやクラシックをよく父親から聴かされていましたから、これが自分の手から生まれたとき(この人は直感で創る)、自然に反応できたのかもしれません。
これ、どんなバリエーションがあるか考えてみればよいと思います。
ここではメロディ音がb音なのでGもC#7もbを持っているので自然に使えるんですね。
Gの3rd=b音
C#7の7th=b音
たとえば、
G Aadd9 |D |G Aadd9 |D |
G Aadd9 |D | D A7 | D |
これだとDとAしか出てこなくて面白くはありませんね。
G Bm |D |G Bm |D |
G Bm |D | D A7 | D |
オーソドックスですね。
その他CM7、F#sus4、E7、FM7(#11)、F7(#11)、Eb7(b13)
といったコードが乗せられます。どれも特徴的です。コードを半音で結びつけるのはジャズやブルースの書法ですから、意外と想像の範囲内にあるコードであるとは感じます。
でも不定調性進行を作る上でも、こうした感覚を、実例で考えることはとてもいい刺激になります。