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音楽と教育と経営の雑記ブログ~不定調性論からの展開

129,雨の樹素描 1-2 /武満徹(2017)★★★★★

武満徹の不定調性論的に考える

129,雨の樹素描 1-2

Rain Tree Sketch I (1982)の考察

   

 


こうしたシークエンスを配置し、間を埋めていくことで、楽曲は統率を失わずに意味感を連鎖していきます。とくに8-11小節の流れは休符を挟み同型で組まれており、しずやかに営まれる理路整然とした樹木の呼吸が目に見えるようでした。

  

12-13小節---「ざわめき」動き1

こうした激しい調子のパートが時折入る形式は、ドラマチックで現代音楽を知らない人でも理解できるポイントの一つです。

こういう点を「武満はダメだ」というか、「武満は分かりやすい」などと言った意見に最初はなったのかもしれません。

映画音楽的で、商業音楽が引き継いだ技法に似ています。

それは難解な音楽が、必死に聴くものに「そんなことないよ、しゃべれないなりに一生懸命叫んでるよ!」っていうような健気さを聞くこともできます。

私は大変理解が進みます。こんなにわかりやすく現代音楽書ける人が日本にいたんだ!!と、やはり感激します。 こんなにイメージが浮かぶってポピュラーミュージックじゃん!!って思いませんか?

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14-20小節---雨を吸う樹木

ここでもシークエンス的音型がみられ、模様感1もその中に併用されています。樹木のより複雑で整然とした体内作業の巧みさが表現されているように感じます。

ここまで和音的素材には増四度や短九度が用いられ、単純に不協和を作りだしています。

増四度は不定調性論では「整った不協和」「音が加わることで色彩を増す不協和」「動和音=ざわめきを持つ和音」であるため、静かな演奏の中に広がるざわめきは、まるで風もないのに雨にぬれた葉がさわさわと揺れているようです。

まるでその木を見ている人に気が付いているかのような落ち着かなさを感じます。

一方でこうした統一された不協和の連鎖は、実に不協和音への文脈的理解を可能にしてくれるという意味で分かりやすさも生んでいます。

コントロールされた和音の響きであり、増四度の持つ普遍的な1:1.4142…の割合がもつ白銀比の不協和は、属七の和音の時代からよく知られた不協和であるので、作曲家がコントロールしやすい不協和です。

 
21-23小節---「ざわめき」動き2

22小節の青字で囲んだ和音は、A7(#9,♭5,13)というサウンドに近いです。どこか神秘和音(X7(♭5,9,13)にも似た艶めかしい響きです。

こうしたテンション感の強い和音に対して、作曲者がどのようなイメージを抱くかによってどんな時のどんな感じで使うか、も決まってきます。

 

24-30小節---動き出す樹木

24小節の和音の流れは、少しずつ上昇しながら広がる声部配置、というコンセプトで作ることができます。

ここで現われる低音は、まさに樹木と大地との協和のような意味を感じました。

和音は不協和だが、ストーリーの中で、その意味と意味が明らかに協和しています。「不協和な協和音」ですね。

29小節目の音型はあとで36小節目からまた効果的に用いられています。

高音部に向かって音の塊が飛んでいくような旋律感、これを模様感2とします。

また31小節目の半音的移行は、先に21小節でも見られます。

 

どんな技法を用いても良いのに、こうして繰り返しで来る表現は、何らかの意図を感じます。

32小節の和音の流れも美しいですね。

 

31-35小節---全身に行き渡る雨、名もなき快楽の絶頂

楽曲の最高音に迫る音を用い、最低音が打ち鳴らされるダイナミクスによって何かが表現されているパートです。

プロットでは樹木の性的な絶頂感のようなもの=ただしそれを樹木が理解しているわけではない、という不可思議な快楽の様、と解釈しています。

33小節のラインは、模様感1を逆手に取るような高音への躍進であり、34小節目のリズムの躍動は動物的な跳躍を感じます。

こうした音型もまた模様感を感じさせ、聴き手に意味を与えます。急激な動きと緩急をつける技法です。

そこに言語的な意味がなかったとしても「音楽の模様」は感じます。

この模様に対する洞察が深まることで、音楽は聴き手のレベルに応じて意味を作りだしてくれます。

 
35-39小節---余韻

余韻を感じさせる和音の響き。

36,37小節の真ん中の和音は、トリスタン和声(fの導七の和音)より半音高いF#m7(♭5)となっています。

更に続く和音を足すと神秘和音となります。

更に最高音はfであり、f#を基音とするとM7thの音になり、F#7(♭5,M7,9,13)という豪華版神秘和音によって余韻が出されています。

"法悦の和音"であるから、やはり性的な快楽、またそうしたものを超えた抽象的な意味合いを含んだエクスタシーに近いような意味を含んでいるのではないか、と思わせる要素がここにもあるわけです。