2017.11.11→2019.9.29更新
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Norwegian Wood~ノルウェーの森/The Beatles
AメロはEミクソリディアンモード的なメロディと解釈することもできます。
しかし「ジョンはこの曲をモーダルにしようとなど意図したのだろうか?」
と考えてみて下さい。まさかねぇ。
でもそうなると「この曲はミクソリディアンである」なんて分析はジョンとは関係ないあなたのための形態分析です。
「あなたは身長170cmですね。あなたのことがよくわかりました」
と言われたらなんか違和感がありませんか。
音楽分析は、作者本人すら気が付かない魅力を明晰に示す。
は確かに言い得て妙です。
いくつかの曲を分析してもジョンはミクソリディアン的な好みを感じます。安定と不安定を中性的に持つ響きです。こういう感じが好き、というのは確かにあったかもしれません。または普通のメジャースケールって稚拙に感じる時もあり、ハスに構えたジョンにとって、普通の音よりちょっとブルージーな雰囲気にしたくなるのかな?とかって思っちゃいます。
これを単なる「少し身構えた人物のメロディ癖」と考えるか、「ジョン・レノンはミクソリディアンな作曲家だ」と位置付けるか、でだいぶその後の分析も変わるでしょう。
音楽家としてのみ見るか、同じ人間として見るか。
音楽分析は分析者の視点の数だけ答えがある。
であり、
解釈者の数だけ音楽理論がある。
となります。
ゆえに、どんな言い回しをしても、
最終的にはその人だけにとって有益な意見になってしまう。
となります。音楽理論研究会などの発表を見ても、発表者の結論を崇拝することはありません。それをもとに自分ならどう考えるか、ってすぐ考えてしまいます。
この話はちょっとタブーです。
これを言ったら学問の発展はありません。
わかった上で鬩ぎ合い、高め合うのが学問です。
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ジョンは、E△の上でミクソリディアン的なフレージングが好き、的見識が役に立つのは、コンペなどで「ノルウェーの森っぽくしてください」という要望があった時などの形態分析においてのみです。
人によっては、
"この曲っぽくするんであればシタールを使おう!"
とか、
"ミドルテンポの8/12にしよう!"
とかの方が「ノルウェーの森だ」と考える人もいるでしょう。
これも解釈であると思います。
解釈が異なるがゆえに、同一テーマのコンペでも異なる曲が上がってくるのだと思います。
モードという点で限定して考えると、
「E△の上で使える他のモードを想定して、メロディを作ってみたらどうだろう??」
とか考えることもできますね。
例えば、
e-g-g#-a#-b-c#-d-e
など。
また、キーをEメジャーと考えると、Bメロで突然E△がEmになります。
主調転調です。
これについてもこういう用語を知らなくても、
「それまでほのぼのしていた雰囲気が、Bメロで急に暗雲たちこめ危うくなった!!」
という具合に"分かる"なら、転調などの専門的な概念を知る必要はむしろありません。雰囲気を自分なりに説明できる方が創作には役立つからです。
さっきまで主たる和音としていたメジャーコードをマイナーにすると、急に雰囲気が変わる、っていうのを自分のあの曲で使ってやろう、とイメージできるからです。
こういったやり方が不定調性論的な発想です。
余裕がある人はぜひ機能和声論と不定調性論、どちらの価値観も身につけて頂きたいです。
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また「あ、同じEを持ってるコード繋げるって面白いなぁ」と解釈したなら、もっとEを持つ和音を列挙してみましょう。
Eをルートに持つ和音・・・E,Em,EM7,Em7...
Eを三度に・・・C,C7,CM7...
Eを五度に・・・A,Am,A7...
Eを七度に・・・F#7.F#m7...
Eを九度に・・・Dadd9,DM7(9),Dm7(9)...
...などなど。適宜つなげてみましょう。
E△ |Dadd9 |A7 |G#7(b13) |CM7|F#m7 |Am7|B7sus4 Bb7(#11):|
音はこちらで。
ノルウェーの森からインスパイヤされた進行 | rechord -
これは理屈を考えて作っていません。
繋げて良い感じになったなという進行でまとめています(不定調性論)。
これを"音楽的なクオリア"と拙論では呼んでいます。
また「同じ主音のメジャーとマイナーをつなげる」、って面白いなぁ、と思ったら、
E|Em|A7|Am7|CM7|Cm6|B7|Bm7(b5)|
音源はこちら
ノルウェーの森からインスパイヤされた進行2 | rechord
というような進行を適当に作ってテーマメロディを創ってみましょう。
最後にsus4解決について、考えてみます。
1、Esus4-E△
2、E-EM7-E7-E6
これら二つは不定調性論では「静進行」としているものです。通例「クリシェ」とされているものです。和声の構成音が前にあるコードの一音だけを変えて進む進行です。
これを応用すると、
E-Esus4-Esus4(b5)-Esus4M7(b5)-Esus4M7-EM7-EmM7-Eb△/E-Em7(b5)~
とうような進行も作れます。
楽曲制作もやはり最後は「あなた自身が本当にそうしたいか」という意見と常に向き合って、自分の考えを真ん中に置いて大切に育んでください(独自論を持つ)。
そしてそれはビートルズがやってきたことそのものだと思います。