2017.10.25→2020.6.20更新
全ての記事はこちらから
ほぼ全曲ビートルズのコード進行不定調性考察(2017)「The Beatles」2
ワイルド・ハニー・パイ - Wild Honey Pi
G7 |F7 |E7 Eb7 |2/4 D7 |
「俺たち、どんなコード進行でも曲ができちゃうよな」
という当時の彼らの声が聞こえてきそうな構造の曲ですね。
この曲の7thコードの降りてくる進行のこの雰囲気は私には「破綻」というような印象を受けます。「もうなんでもいいぜぇ、なんでもやってやるよ」という彼らの凄み。
たとえば、この進行を
G7 | B7 |E7 A7 |2/4D7 |
とします。
原曲の裏コードによる連鎖は特殊だから、ちゃんとした五度進行にした方が音楽的に正当になる、と言ったところで、この曲は気持ちよく歌えませんよね。
和声の先生に囲まれて課題を創ってみてください。最初は自分らしくできるのですが、講師に誤りを指摘され続けると、どんどん自分が削がれ、規則が絶対に思え、自分の無能さに押しつぶされ、伝統こそが美的形式の極致である、と思え、自分から逃げてしまいます。これを「洗脳」と言います。こうなってしまうタイプの方は音楽表現は向いていないと思います。
ビートルズは何でもかんでも権威に従わなくたっていいんだぜ?というロカビリーヒーローが教えてくれた主張を、商業的成功によって有無を言わさぬ力で確立しました。
もちろん、だからあなたも使っていい、自分勝手にやっていい、という意味ではありません。選択肢が増えた分、我々の世代は迷いも増えました。
ザ・コンティニューイング・ストーリー・オブ・バンガロー・ビル - The Continuing Story of Bungalow Bill
サビはじまり
C G |C Fm |C G |2/4 G |
A E |A Dm |A Dm |E |
Aメロ
Am C |F G |Am C |F G |
E G |Am Fm | ~
このアルバム、なんだか2/4拍子が多いですね。
ジョンのリズムには結構変拍子的な感覚があるんですよね。
この進行では、IVmであるFmがCメジャーキーとAメジャーキーで転調して使われます。
さらにAメロでもIVmのFmがいいスパイスになっています。
「なんか怖い」という印象を持ったのを覚えています。楽しい歌なのだけど、どこか苦しさを隠しているような。
ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス - While My Guitar Gently Weeps
これも"掛留概念の拡張"ですね。いわゆる"クリシェ"です。
Am |Am/G |D/F# |FM7 |
Am G |D |E |
このアルバムではクリシェもかなり活用されているような印象を受けます。
メロディとコードとベースが分離しているところが、このアルバムでのビートルズの挑戦の一つになっているように感じます。偶然かもしれませんが、コード進行が一つの楽器で完結せず、アンサンブル全体に拡張して成り立っていますね。
なんとなく次のアルバムからの突き抜けたバンドサウンドを予感させます。
あなたなりの教え方で結構ですから、たとえ使い古されたクリシェであっても、新しい曲を作ってください。
Amの構成音のaを半音下げるのクリシェです。