2017.10.18→2019.9.21更新
問題提起
この問題は、
I7ーV7ーI7
において
「なぜI7で、人はトニック感を感じるか」という問いです。
こういう風に唐突に人に聞かれたら、皆さんは何と答えるのでしょう。
これについてブルースの特殊性とか、黒人音楽の特殊性で説明しようとする人もいるでしょう。でもそれをやってもじゃあスパニッシュは?アフリカの民族音楽は?となって一つの答えでそれを説明することができません。
まず
V7ーI
が、なぜ解決感を感じるのか、を真剣に考えてみてください。
答えられますか?
あなたはこれを、トライトーンの半音解決や自然倍音の発生から説明しますか?
それとも機能和声論における声部の解決から説明しますか?
それに答えられたら、次の進行の理由も答えてください。
V7ーIm
IVーI
IVmーI
VIbーVIIbーIm
これらの進行に解決感を感じるのはなぜ?でしょうか。
これを先ほどV7-Iで説明した同じ根拠で説明できますか?
おそらく一つの理屈だけでは全部に答えられないと思います。
V7ーImは自然倍音で説明できますか?
IVーIとかIVmーIにはトライトーンもないのに解決感があると思います。なぜでしょう?
VIbーVIIbーImなんてV度進行もしてません。でも私はこのImのところで「キマった」感を覚えます。なぜでしょう?
これらに一つの根拠だけで答えてください。そうすればI7がなぜトニックになるのかがわかります。
さらに付け加えます。
犬や猫はこれらのケーデンスを感じていますか?
人の脳だけの機能に属する問題なら、これらは自然の法則などではなく、脳の機能を解明しないといけないのではないでしょうか?
でも脳科学はまだこの答えを持っていません。
ではこの問題を感情的に、かつ音楽理論的に音楽家はどう処理すればいいのでしょう?
自己方法論的結論
簡単です。私の答えは、
"自分がそう思ったのなら、今はそう思うのが自然"
という答えにしました。
私の脳がそう判断したからそれを受け入れよう、という意思を持つ、と認識してみてください。
I7に行ったとき、この和音の進行感に「トニックさ」「終止和音の感じ」「カッコよくキマった感じ」を明らかに感じるのであれば、あなたの脳がどのような状態であれ、その根拠を受け入れている、ということです。
それを"自分"に認めてあげればいい、ということになります。
様々な音楽環境経験の結果、そう感じるようになってしまったのだ、という理解です。
自然がそういう法則なのではなく、脳が自然と習得した結果このような感じ方をする人間になった、という意味です。その仕組みはまだ分かっていないのです。
殴られそうになったらとっさによけますでしょ?「なぜおれは今よけようと思ってるんだろう」とか考えないでしょ!?人が感じることは思考より先に来ます。感じることを根拠にしない限り独自性を持てる行動指針は作れません。
その他に列挙した和音進行も全て同じです。
「あなたがそう感じたから。」
という答えを用意した音楽方法論が不定調性論なんです。
これができたのも、既存の伝統音楽理論がヴォイシングの理論を丁寧に歴史の中で作ってきてくれたからです。
声部では解決できない問題の根拠は脳が握っていると考えたわけです。
「なぜ自分はそれをそう感じるのか」
これは、今まさに脳科学でも研究が続いている分野です。
だからその「なぜ」の答えは、これから音楽以外の分野も含めた「意識学」「脳科学」で解明されるのを待つしかないのです。
しかしその仕組みがわからなくとも「そう思った」のはあなた自身であり、それは理由なく活用できます。
どうしても自分が適切と思うなら、まずはそう信じて進んでみてください。
イメージは成長とともに変わってきます。
7thコードがトニックになる理由、ではなくあなたが7thコードをトニックだと感じるのなら、それを信じていけばいい、となります。
故に
Dm7 G7 C#M7
も
Dm7 G7 AbM7
もそれなりのリリース感を感じ、こうした和音で終止させても「そういうイメージで終わること」を許容できれば、これらは清々しいイメージを持ったケーデンス、と理解できます(A♭M7は古いジャズ理論ではトニック扱いされていました)。
何でもかんでも「解決感」で音楽が終わるわけではありません。
映画が全てハッピーエンドではないように。
そう感じない人もいる
あなたと同じように感じない人もいます。
当たり前です。万人が異なる環境で人生を送ってきたからです。
「感覚」は万人が異なる、と考えることで偏見は回避できます。
そして、あなたの感覚も絶えず変わっていきます。
あなたが進化すればこの感覚も変わっていきます。
I7は、今の自分にはガッツリ解決するトニックだ!
と感じることをみとめる、だけです。
来年アフリカ人と交際したら、また感覚は変わるかもしれませんよ?
それがあなたの中で起きない、となぜ断言できるのですか?
より方法論的に考え方を発展させたい方は下記をご覧ください。
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