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音楽と教育と経営の雑記ブログ~不定調性論からの展開

Any World(That I'm Welcome To)〜二つの非機能なコードを繰り返して脈絡を作る / Steely Dan

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2017.9.27⇨2019.9.16更新

スティーリー・ダンの不定調性進行分析

Any World(That I'm Welcome To) / Steely Dan


楽曲の構造分析は"3分の曲を30分で聴く"楽しみかもしれません。

open.spotify.com

 

Aメロ
C |Ab |Db Eb |Bb |
C |Ab |Db Eb |

Bメロ
Fm7 |Bb |Fm7 |Bb |
Fm7 |Bb AbM7 |

サビ
C |Bb |C |Bb |
C |Bb |Ab |Bb | (C) |

Aメロはメジャーコードだけの連鎖です(u5和声単位連鎖=不定調性論)

ビートルズ的展開の発展と言えます。


C→Abというのは、誰でも一度は「いいね、これ」って思ったことがある展開です。

作曲する人にとっては、この進行だけで「曲が決まる」と言えます。

どんなにへんてこりんな進行がその後に続いても、「辻褄を合わせることができる」と確信しながら曲を作ることができる進行です。

 

だから調から逸脱しても、最初の進行に二行目で戻ることで、本人の中では独自の辻褄が合っているわけです。

 

スティーリー・ダンの音楽はそう言った意味で、損をしています。素晴らしい音楽構造を発信しているのに、冷ややかな目で見られているのはこうした孤高の辻褄テクニックがハイレベルでサクッと実現できているためでしょう。

技術を見せないセンスが良すぎて透明になっているといえばいいでしょうか。

 

また、AメロのDb-EbはIV-V感(通例のサブドミナント→ドミナント進行感)を作り、故にBbは仮のトニックのように感じさせます。

そして続くCがBbにとってのIIのように響きながらも、メロディとともに元のシークエンスに戻るので、そのI→II感はすぐにリセットされます。


何を言っているか、というと、現れてくるコードのたびに、既存の「進行感」にあてはめながら、意味を展開できる感性を持つ、ということです。 

 

曲の展開する動機に「既存の進行感」を連続させ、シンプルな和声で複調的な進行感を連鎖させる、という発明をしたバンドです。

ビートルズがやったことをさらに展開しているわけです。

 

それぞれのコード進行は独立していても、一つ一つの連鎖に「既視感」がある人であれば、すぐに意味を見つけられます。そのように訓練してくわけですが、不定調性論では、 その訓練自体を学習の基本姿勢にしています。

 

Bメロ、サビですが、Steely Danの曲のなかには、サビや中間部で、こうした二つのコードを繰り返す部分が出てきます。機能性が弱くなった分、シークエンスで脈絡の堆積を行いながら、ストーリーを構成しているように感じます。


往年のブルースロックなどではよく見られます(単純なコードを二つただ繰り返すことで、パターンが生まれ、非機能でもまた頭に戻りやすい)が、それをこうした構造に展開したところがスティーリー・ダンの優れた視点、と言えます。


(楽器弾ける人用)例
:CM7 |DM7 |CM7 |DM7 |
Ebm7 |Gm7 |Ebm7 |Gm7 |
Ab7 |C7 |Ab7 |C7 |
DbM7 |DbM7 |DbM7(b5) |DbM7(b5) :|

音はこちらで聞けます。

steely danブログ参考コード | rechord - 演奏もできるコード進行共有サービス

 

これを皆さん弾いてどう思われますか?
調や機能で分析的に考えてはいけません。

自分が知っている和音の連鎖感から脈絡を作るわけです。

 

===
例としてM7でやってみましょう。

 

下記コード進行に対して、どのようなあなたにとって音楽的印象があるか、直感的に当て込んでみてください。

これが全くできないと、ポピュラーより先の和声感に難渋してしまうでしょう。

 

CM7-FM7-CM7-FM7~
これは、平和な昼下がり、という感じかな。。。などと下記にも自由にイメージを無造作にあてはめてください。

 

CM7-AbM7-CM7-AbM7~
これは、草原の中の風、というかんじ、、

 

CM7-BbM7-CM7-BbM7~
これなら、揺れるブランコ、という感じかな。

 

CM7-F#M7-CM7-F#M7~
これは、、激しく動く雲に、太陽が隠れたり、出たり、そんなかんじ?

 

CM7-DbM7-CM7-DbM7~
うつらうつら、まどろむように~的な?

 

CM7-EM7-CM7-EM7~
ビミール袋が風に飛ばされて、あっちへいったり、こっちへいったり。

 

ここでは、たまたま最初に「風」が浮かんできたので、その他進行にも「風」がイメージされた、という事がいえると思います。明日は違うかもしれません。
それで良いです。あなたなりの「音楽的脈絡」がみつけられれば、いつかあなたの作品の材料になりえます。

 

でも最初は、表現できない様々な意識の状態もあります。

・なんにもかんじない
・なんかわかるけどわかんない
・へんなかんじ
・カレー食べたくなった
・なんかいや
・いまはいい

最初はこういう感じでもいいです。それは音にあなたが反応しています。

少しずつ「脈絡」が自分なりに見えてきます。

できれば適切に評価できる先生がそばにいるといいですね。

 

この共感覚的知覚が全くできない、というタイプの人もいます。

訓練して広がるタイプの人もいます。

もしスティーリー・ダンのような音楽に興味があるなら、きっと素養があると思うので、試してみてください。芸術観賞力が上がるかも!!

 

 

Any World That I'm Welcome To