音楽教室運営奮闘記

不定調性論からの展開紀行~音楽と教育と経営と健康と

"Nevermind" 2 / Nirvanaのコード進行研究

2017-09-06→2019-8-26(更新)

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彼はニルヴァーナを崇める人々を群がる羊に例える内輪のジョークにちなんで、セカンドアルバムのタイトルを『シープ』とするつもりだった。彼は「誰もが求めるから、僕は興味がない」というスローガンを掲げた偽の広告を作っただけでなく、「Bowling Stoned誌の表紙を2度飾り、Thyme誌とNewsweak誌によって『現在最もオリジナルで影響力のあるバンド』と評される」という、皮肉にも後に事実となる偽のバイオグラフィーを公開した。

ローリングストーン誌記事より。

rollingstonejapan.com

nevermind=興味を向けるな。

とでも訳しましょう。シャイなカートらしい皮肉、です。まさか嘘の誇大広告が事実になるとは。不思議ですね。メディアが作った影響力であり、それは作られたものだ、ということを知っていたのでしょう。

認められても、ヒットしても、自分の気持ちはおさまらない、と気づいたのでしょう。

こういう人は、現代であればYoutubeで顔を隠して、名前を出さず、ひっそり音楽投稿をして生きていくことができます。

でも当時は人に会い、メディアに出て、ライブをして、CDを出して、プロモーションして、という活動をしなければなりません。それは辛かっただろうな、となんとなく感じます。30年生まれるのが早かったアーティストです。

 

2曲目 "In Bloom"

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パターン1
Bb G |F Ab |
パターン2
Bb Gb |Eb B A |
パターン3
Bb G |~C Eb |
これも長三和音表記にしていますが、三度を抜いてパワーコードで弾いたほうが正確でしょう。

   

地平がグニャグニャと動くような感じを受けました。

まるでパニック発作の時に起きる足下の感覚です(私パニック持ちでした)。

これも音楽理論的に考える事もできますが、そんな理屈よりも、気持ちもそぞろで、なんとなく押さえたコードを左右に動かしながら指が動くままに出てくる音が自分にもたらす心象を感じ取りながら、言葉を積みで行ったのではないか?

なんて感じてしまいます。

 

不定調性論は、作曲者、演奏者が感じる「音と音との脈絡」を音楽を行う時の最も重要な動機にします。実例としてのニルヴァーナは大変有効です。

コードを繋げた時にカートが感じた「退廃感」に言葉とメロディを乗せた、のであれば、ニルヴァーナは『和声の流れの中に退廃感を出すコトができる』ことを発見して表現したことが音楽表現方法の発展に寄与した功績といえます。

さらにそのやり方により商業的成功まで収めた、という実績にも大きな意味があると思います。

これらの成功がその後のエクストリームロックやオルタナティブロックの商業的成功をするためのモデルを生み出しました。

パターン2のBb Gb |Eb B A |のB-A→Bbなんて云う流れは、ぐんにゃりと歪んでけだるそうな心の流れを反映しているようで、とても秀逸だと思います。

これを

Bbm7 GbM7 |Ebm7 BM7 Adim7 |
とすれば、同曲の進行を少しお洒落にした心象表現になるでしょう。

これはニルヴァーナのこの曲からインスパイアされた表現だ、といえば、この曲の進行が持つ独特の退廃的心象の豊かさが分かるのではないでしょうか。

これは個人で感じて頂くしかないのですが。

 

全ての和音の流れには「進行感」が生まれます。これを感じとれる人と感じ取れない人がいます。どのような環境で自身の感覚を育成してきたか、または生まれ持っての素養などが関わっています。これがない人は、一般音楽教育で教えられる音楽理論に基づいて音楽を作っていくことになります。

自分の「進行感」が強い人は、音楽理論は必要なく、むしろ自分で好きに作らないと納得しません。音楽理論が示す「一般的すぎる進行感」がダサく感じられ、魅力を全く感じないからです。それを押し殺して人が求める音楽を作ることは反吐が出るほど嫌です。

そうした人が頼る方法論として、私自身もそういうタイプなので「不定調性論」を作りました。これは「独自のやり方で音楽を作る方法を編み出す」ための方法論です。

 

ニルヴァーナが作った方法論を応用すれば、例えば、

1.半音+全音~
|C△ C#△|D#△ E△ |


2.全音+短三度~
|C△ D△|F△ G△ |


3.短三度+完全四度~
|C△ D#△|A#△ C#△ |  etc...

連鎖される和音の連鎖感をあなたが感じるなら、音楽的脈絡を作っていくわけです。

この「感じる人もいれば感じない人もいる」というところに振り切っていくのが不定調性論らしさ、です。一般教育論ではそういう差別は許されません。

しかしこの音楽の抒情性 に対する認知は、少し大人にならないとはっきりしてきません。だから高校生くらいから身につけるべき「大人の音楽理論」かもしれません。

それを証拠にニルヴァーナは世界中で大ヒットをしています。彼らの音楽が訴えているものを感じ取れた人がたくさんいたわけです。

 

この、和音を変な感じにつなげるだけのサウンドにリフを作るという徹底ぶりがアルバム全体に不思議な統一性をもたらしています。

聞いていると退廃が瞬間的に美しく感じられたりします。

 

また、この曲の進行を「クロマチックレイヤー」システムで分析した例を下記ページであげています。

クロマチックレイヤーシステム

 

 

3曲目"Come as You Are"

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パターン1
E |D |
パターン2
Esus4 |G |

三度を意識させないペンタトニックな旋律作りになっています。
パターン2でsus4がでていますが、これはsus4を作っている、というよりも、
E A |G |という感じで分解できます。この記事シリーズの最後に出てくる「弱いパワーコード」です。
三度の響きを意図的に避けてる感じもします。

まるで三度音が退廃さを和らげようとする事実から逃げていくようです。

 

     


三度抜きコードは空虚で無表情な五度和音ではなく、コバーンによって、決してマニアックで歪んだ音楽性の持ち主しか理解できない響きではないことをその世界的成功によって証明しました。

ロックがクラシック音楽理論を新たに乗り越えた一つの瞬間とも言えます。

 

4曲目"Breed"

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パターン1
F#7のリフ
パターン2
D A |C B |
これだけです。。

リフものですから、これだけ見ても、この音楽性に「深み」を感じるのは最初は難しいかもしれません。この深みをカートは自分の死で証明してしまった、とでも云えば良いのでしょうか。

通常D→A→Cときたら次はGだろ、と思うじゃありませんか。

このほうがキャッチーだし。

しかしあえてそこは不安定なBにおりる、というのがここまで述べてきた退廃さの表現であり、意識をカンナで削っていくような焦燥感になっていくわけです。

売れたいけど、注目されたくない、というyoutubeのない当時のヒットメーカーには許されない感情の葛藤を音にしているかのようです。

 

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ロックの「何でも良い」というのは、"本当に自分が感じたままをありのまま出せるか"、という命題が背景にあると思います。

だから音や響き、言葉や社会に何も感じないのではロックはできません。

そしてある程度"社会的に不良なヤツ"でないと、そうした感情を表に出すことはできません。"これを表に出したらいじめられそう"と思って普通は引っ込めてしまうからです。

当時はこういった柔軟性が生まれたばかりの時代でしたから、まだまだ生きづらかったでしょう。コバーンがその人間性と共に退廃的な音楽性に共感していったことで、ひょっとすると彼の死を早める遠因として潜在的に心に降り積もっていったのではないか、なんて思うと、まさに自己表現は諸刃の剣、だったわけですね。

 

不定調性論は、社会で表明できない欲望や願望を芸術表現の中で行うことで満たす、という"保険"みたいな方法も取れます。自分の欲望に完全に支配されないためです。自分の欲望を自覚して切り離して、それが活きる場所を日常の中で設けてあげることでちょっとだけでもそうした共感覚者が生きやすくなれば、と思っています。

 

 

その3に続く

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