SMOKE ON THE WATER
まず導入としてディープ・パープルの「smoke on the water」のイントロのリフを思い出しましょう。ご存じない方はお手数ですが御検索を。。
あのリフはいわば四度の押さえ方でできています。
四度のパワーコード、「パワード4th(Powered Fourth)」です。
人差し指一本で押さえられるフォームですね。四度和音云々というより、「押さえやすいから」浸透している、というのもあろうかと思います。
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四度≠五度
不定調性論では、わざわざ四度和音を、五度がひっくり返った和音だと捉えない、としてます。そこから五音音階や、ブルース、ブルーノートを考えていくのでそれはそれで面白いです。
ちなみにこのリフをいつもの五度のパワーコードにして弾いてみてください。
押さえ方的にはこう。
この形であのリフを弾く。
なんか違う感じがしませんか?重さというか、濁りというか。この違いを感じられれば、その差異感をご自身のリフ創りで活用されればよい、だけです。どちらが正しい、ということはありません。
でも全然違いますよね。と、感じられる人にとってはそうでしょう。個人差ありです。
このギターリフによる四度は、動きやすさや利便性によっても支持されています。
(ブルース的な四度平行移動性については、教材III巻第六章をご覧ください。)
この話はここまでです。パワードフォースを弾くときは、あ、これも四度和音だな、みたいに一瞬感じてもらえれば、すげーオンガクリロンぽい雰囲気になります。
四度和音はm7系表記?
さらに突っ込んでみましょう。
モードジャズの先駆け"So What"でビル・エヴァンスが用いた四度和音(的な)イントロバッキングが有名です。「ダーッダッ」と無機的に繰り返されるピアノですね。
ここでは分かりやすくCm7から始まるようにして解説します。
音で言うと、低音から、
c-f-b♭-e♭-g
↓
b♭-e♭-a♭-d♭-f
と流れます。これをコードネームにすると、Cm7(11)→Bbm7(11)です。
厳密な四度ではないですが四度的なコンセプトは伝わってきますね。
(参考)
これはBbドリアンのIIIm7からIIm7に流れた形になるのでBbドリアン主体に考えてソロを考えてます。これがモードジャズの考え方になっていきます。
下記にもっと詳しいモードの解説もあります。
www.terrax.sitem7(11)というのはギターで弾くと分かる通り、綺麗に人差し指一本で押さえることができます(e♭-gとd♭-fは三度堆積です)。ギターは四度堆積で弦が張ってあるからですね(2-3弦は三度)。
しかしコードネーム表記で「Cm7(11)」と見てしまうと、マイナーな響きだ、とイメージしてしまいませんか?この先入観も忘れましょう。表記がないのでマイナーコードをベースとする表記で代用しているだけです。
実際Cm7(11)は、もっと違う響きのするコードだと思います。マイナーじゃない、そう思うこと、認めることから新しいコード感が生まれると思います。
四度和音とは、完全四度と増四度を積み重ねて作る和音、とされています(理屈の上では、です)。だから,c-g♭-b♭-e♭というようなCm7(b5)は、三度を持ちながらも四度と増四度があるわけですから、四度和音の要素も半分以上含まれていることが分かります。
でも響きの慣習から、同じ三度を一つ含んだCm7(11)は四度和音と云われても、Cm7(b5)はあくまでCm7(b5)としたほうが、「分かりやすい」がゆえに、四度和音とは言われません。
結構テキトー感がこの辺から出てきましたね。
例えば三度が入っても、「いつも使ってる三度和音の感じ」をあなたが感じなければ絶妙に混ぜて使って頂いてOKだと思います。厳密な四度と増四度だけだと限界がある、ということですね。四度を6割、三度を4割、みたいなやり方でも結構それっぽくなると思います。マッコイ・タイナー的ですね。
なぜ四度和音は使いづらいか
では、完全四度で積み重ねてみましょう。
c-f-b♭-e♭-a♭-d♭
となり、cとd♭が短九度になり、不協和になります(不協和の問題よりも、使いづらさの問題でしょう)。ゆえに増四度を"時々"入れて「調整」するわけです。
しかし、増四度を二つ重ねると、
c-f#-c
と一巡してしまうので、二つは重ねられません。すると、バリエーションとして、
c-f-b♭-e♭-a♭-d
c-f-b♭-e♭-a-d
c-f-b♭-e-a-d
c-f-b-e-a-d
c-f#-b-e-a-d
つまり四度のコードバリエーションを作ろうと思うと、
c-f-b♭
c-f-b
c-f#-b
という三種類しか無いんですね。
ですから三度和音と同じように拡張しようと思ったら、四度を基調に三度や二度を織り交ぜるしかありません。つまり、
c-f-b♭、c-f-b系統
c-f-a=F△/C、c-f-a♭=Fm/C、c-f-g=Csus4
c-f#-b系統
c-f#-b♭=C7(b5)omit3、c-f#-a=F#dim/C、c-f#-a♭=A♭7omit5/C、c-f#-g=???
という具合になります。つまりどうしても三度堆積和音の影を背負ってしまいます。ゆえに四度和音と云う概念だけで音楽を作るのであれば、三度堆積和音的な考えも混ぜながら作ったほうが良い、となってしまい、「四度和音」の世界観は曲が込み入ってくれば来るほど薄まっていくんですね。
この三度和音の「いつもの和音の感じ」の混入が、四度だけの美的統一の限界にブチ当たる、ということが、四度和音を使ってみてみんなが分かった、というわけです。もちろん上手に使う可能性はいくらでもありますので、ぜひ工夫してちょこっと入れ込んで頂きたいです。
下記はさらに深いところへ。
四度和音の深部
三度堆積和音論はc-gを五度と見て考える音楽論です。これを五度と見て、自然倍音列の和音で分割すると、
c-e-g
となり、これはC△です。
では同じようにc-gを四度と見る思考も確立したらどうなるでしょう。音の配列は下記になります。
c-b-b♭-a-a♭-g
これらの分割音の中で、同様に自然倍音の音で最も近い音で分割すると、
c-b♭-g
になります。
そしてこれらの二つの和音を独立させます。
c-e-g-=C△
=拙論では・・・「Cu5(C upper 5th)」
c-b♭-g=C7omit3
=拙論では・・・「Cu4(C upper 4th)」
とするわけです。
ポピュラーミュージックは七音音階と、五音音階の二つの音階世界を絶妙に駆使して、ブルージーでロック、ロック的なバラード、ソウルフルなポップ、と言った世界を作ってきました。
つまり五度領域と四度領域が絶妙に絡まっているんです。
すると、ドミナント7thとブルース7thの違いもはっきりします。
属七和音は五度領域から生み出したもので、ブルース7thは四度領域から生み出したもの、とすることで、二つの和音のニュアンスの違いを同じ理屈で考えることができるようになります。
またこうした根本的なことが「ロックにおけるパワーコードの三度抜き和音の魅力」を理論的に語る手段にもなってくれました。
三度がないのではなく、もともと三度など必要のない体系がある、と考えれば良いわけです。これをオクターブの分割のレベルで考えた「オクターブレンジ」という発想を用います。
では、四度領域和音的な和音を実際並べて弾いてみてください。
ここでは分かりやすく、X7omit3と表記します。
C7omit3 | % |Eb7omit3 |% |
F7omit3 |% |D7omit3 |Db7omit3 |
なんともロック的で、ブルースの匂いもしながらも、フュージョンな響き??
この和声感を「四度領域和音の響き」と考えるとこからブルース和声の秘密を考える、というわけです。
ちなみに、ひたすら四度で重ねる和音を、オクターブレンジという考え方を用いて作る和音に該当します。
ですから同様に一度和音とか二度和音、五度和音、八度和音というのもこれによって作ることができます。
smoke on the water だから煙がゆらゆら揺れているから、パワーコードのように安定した和音ではなく、パワード4thが良い、その方が曲名を象徴的に暗喩している感がある、からここはパワード4thが適切である、みたいな感じの印象を無理くり分析的に述べると、ロックのアート性がちゃんとめいっくになって面白いですね(ちょっとウットオシイ奴かもですが)。
四度和音等について、さらに書かせて頂いた内容がこちら↓↓↓にございます。
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