音楽教室運営奮闘記

不定調性論からの展開紀行~音楽と教育と経営と健康と

モーダルインターチェンジって何?2~So Whatは完全なモード曲じゃない??

2017.8.9→2020.9.30更新

前回

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例えば、
Dm7 |Dm7 |Dm7 |Dm7 |

G7 |G7 |G7 |G7 |

CM7 |CM7 |CM7 |CM7 |
というコード進行があったとします。

 

このコード進行上で、 

機能和声的にソロをとる場合
所謂アヴェイラブルノートスケールで考えることになりますから、コードに対してスケールを割り出します。

Dm7=D Dorian scale
G7=G Mixo-Lydian scale
CM7=C Ionian scale

とかになります。

avoid noteなどの学習はなんとなく済ませておいてください)

 

モードジャズ音楽としてソロをとる場合
各コード感は一切なく、四小節毎に独立したモードを該当させることもできます。

さらにモードジャズっぽくするには、この進行がCメジャーキーのII-V-Iという感じがしないように、各コードに対して浮遊感の有る和音(モーダルハーモニー)に置き換える必要があります。

 

モーダルハーモニーとは各モードの特性音=characteristic noteを生かしたハーモニーを作ることです。それによりモード音楽ならではの浮遊した響きを作ります。


各特性音は、
D Dorianの特性音であるM6th音=b=AeolianとPhrygianにない音


G Mixo-Lydianの特性音であるP4th音=c=Ionianにない音

 

C Ionianの特性音であるP4th音=f=Lydianにない音

ですから、先の進行は、
D Dorian |D Dorian |D Dorian |D Dorian |

GMixo-Lydian |GMixo-Lydian |GMixo-Lydian |GMixo-Lydian |

C Ionian |C Ionian |C Ionian |C Ionian |


となり、これをモーダルハーモ二ーで埋めます。


例えば、
Dm7(13) |Dm7(11,13) |Dm7(13) |Dm7(11,13) |

G7sus4 |D7sus4 G7sus4 |D7sus4 |

Csus4 |Esus4/C |Csus4 |Esus4/C |
みたいな感じの和音を使うことになります。

極端に機能和声を避けてみました。

(他にも導音の動きや、トライトーン関係になる和音を避けたり、というようなこともせよ、と私は学びました)


そしてソロをとる際にも、特性音を意識的に用います


D Dorianでは軸音dを中心に特性音=bを用いて旋律をつくる。以下同じ。


G Mixo-Lydianの特性音=c、軸音g


C Ionianの特性音=f、軸音c

 

さらにC Ionianは機能和声そのものですから、b→cへの動きの導音ぽさを使わないように、とか。

 

じゃあ、マイルスはどのくらいルールに従ってやっていたのでしょうか。

実際の例を見てみましょう。

Kind Of Blue


So What by.Miles Davis

 

kind of blue 

前提として、マイルスは「間が大事」と言っています。だから出す音の種類が大事なのではなく「いつ音を出すか」が大事なわけです。これは周囲のプレイヤーや続くソロプレイヤーが吹きまくったり、弾きまくるからこそ活きたスタイルです。

みんながマイルスみたいに、

「プス!」。。。。。「プス!」、、

では成り立たないかっこよさだった、ということをイメージしておくとマイルスのうまさがわかると思います。またこのアルバムの奇跡さが感じられると思います。

 

ビバップがリックによって音楽を構成したことがマイルスには鬱陶しかったかもしれません。だからマイルスだけがモードジャズをやった、というより、マイルスの考え方、思想自体がモードジャズになった、というだけでやはりこのアルバムはマイルスの独自論の完成であったと感じます。以下でプレイヤーがモードとは関係ないソロを取る理由もモードを拒否したのではなく、マイルスの音楽に"自分の音楽で参戦"した結果です。だからモードジャズだからモードでやれば良い、みたいな発想だと自分の音楽はできません。このあたりがこのアルバムの音楽精神の上でも歴史的な価値となっている理由だと感じます。

 


マイルスのソロ、始まってすぐC#音=M7thが出てきます。いきなりモードにない音笑。

しかも一番Dマイナーという調性を想起させる音です(V7=A7の三度)。


またEbドリアンのところでもM7thを使い、マイナーペンタトニック+b5thもでてきます。

 

そしてしばらくするとDdorianなのにb13thが、"ついに"それはそれは切なく入ってきます笑。

どうやらルールを守る気はなさそうです。

さんざん前置きをしておいてお約束でしたすみません笑

 

さきほどあれだけ「機能和声を感じさせてはいけない」といった一番使っちゃいけないと示した音です笑。

このモードジャズのルールを決めたの誰だよ。

 

しかしマイルスのこの音はとても刺激的なb13thになってます。

ずっと笑わない女性が、ふっと切ない表情などを見せる瞬間のような魅力しか、もう私は感じません笑。

だからこそ、マイルスのモードジャズは格段に面白いと言うことができる訳です。

 

いつルールを用いて、いつルールから逸れるかの判断については、当サイトでは「音楽的なクオリア」という考え方で述べていますので、お暇な方はご覧なっていただければ幸いです。

 

結局こうしてモードジャズの新たなる束縛とマイルスの個性が、世界に新たなジャズの色彩の変化感の発見につながりました。

 

続くコルトレーンのソロも要所要所でA7のバップフレーズを挟んできます。


そして次のアダレイ登場です。

全編バップフレーズでそれまでのモーダルな緊張感を全て更地にしてくれます笑。
ノリもどんどんクールからホットに変わる笑。

 

こんな面白い演奏、確かにないです。

ルール無視かよ!

 

というか、本当にモードジャズのコンセプトをみんなが理解していたやっていたのかどうか怪しくなってきますよね。

 

(参考)

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<ヴォイシング>

調性を想起させないことでモーダル感が増します。

例えば4度和音は機能和声を想起させづらい和音です。

CM7のヴォイシングとして、C Ionianから次の音を拾います。

g
d
a
e
と低音eから積み上げた和音を使ったりします。テンションが中心となることで「いかにもなCメジャーコード感」がなくなります。

このサウンドは当初モードジャズと相性の良いサウンドでした。

結果的にこのサウンドもそれが様々なジャンルで使われ過ぎた結果、この和音にも調性を感じるようになった現代人の耳からはモードジャズの緊張感が失われていった訳です。

これらを発展させると不定調性になる

Dm7|G7|CM7 |

Dフリジアン|Gホールトーン|Cリディアン |

と解釈すると不定調性的になります。モーダルでも調的でもありません。

 

次に、
Dドリアン |Gミクソリディアン |Cアイオニアン |
の一小節ごとの変化を考えましょう。

例えば、このとき、それぞれの小説で
Dsus4(9,13)omitRoot |A♭mM7(13) |D/C |
みたいなハーモニーをつけたとしましょう。

 

これは
Dm7=D Dorian scale
G7=G altered dominant scale
D/C=C Lydian

を用いて作りました。

これらの和音を連想させると、もう調性もないし、音楽的な意図も不明瞭になります。しかし、若干の進行感を感じる人もおられるでしょう。

より自在に和音を選択し、連鎖できる人は、ジャズ理論の範疇とは違う不定調性的な発想で音楽を作れると思います。

 

この世に和音を連載させる秩序が失われた時に現れるのが、音楽的なクオリアを用いて作曲する不定調世界であると思います。

 

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