音楽教室運営奮闘記

不定調性論からの展開紀行~音楽と教育と経営と健康と

「期待の科学」1「don't think,feel」は熟達者の技

2017-08-05→2019-8-3(更新)

悪い予感はなぜ当たるのか

 

制作作業というものは、もし可能なら、もっとクオリティを上げたいし、ベストな精神状態で創作に当たりたい、と思うものです。

今日はこちら。

大変情報量の豊富な良書です。

 「期待」の科学 悪い予感はなぜ当たるのか

「人間の脳は未来を見る癖がある。脳の関心はほとんど今に向けられていない。"この先はどうなるのか"という予測ばかりする。」

これによって未来に起きたことに対応する能力が身についている、と言えます。

何となく経験から悪い予想は当たる、っていうのは生存本能の一種のようです。

しかし良く想像するか、悪く想像するかででもだいぶ過程や結果に影響を与え変化が出る、ということもあるそうです。問題は予知能力を研究するのではなく、この脳の機能をどう使うか、です。

「未来のことなどわからない」といくら科学的に知っていても、脳は生存本能から未来を予測します。

「求めよさらば与えられん」というのは聖書の言葉ですが、約1900年前にすでに、ポジティブシンキングが確立されています。

問題はその価値を脳に理解させる、ということが大変なのだとわかります。

だから2000年経っても、「求めよさらば与えられん」は未だに実践することができない難しい課題なのでしょう。

 

2004年、アメリカの有名な医療機関クリーブランド・クリニックの研究結果、特定の筋肉を鍛える運動を頭の中だけで繰り返すと、本当に筋肉は鍛えられる。ただし創造のトレーニングは限定的で、常に視覚化して想像して行うことはとても強い意志がいる。 

歌も、声を出さなくても、電車の中で頭の中で歌うだけでも歌は上手くなります。

ボイトレを毎日行えないボーカリストに勧めている方法論です。 

 

共通符号化理論

「こういう動きをすれば、こういう結果になる」と予測する脳の神経細胞の働きです。90年代末に提唱されたそうです。

キャッチボールで、相手がボールを投げた瞬間、どこに飛んでいくか予想しながら追いかけていかないと、見ているだけでは反応できません。運動能力の高い人は、この予測能力が高いそうです(練習により鍛えられている)。

バッターがスランプに陥ると、「何かスイングが悪いのでは?改善しなくては」と思って、予測機能に向けていた注意が散漫になるので、結果が出ない、ということらしいです。

視覚には二種類あって、色形を識別する能力と、動きや明暗を識別する能力。後者は訓練によってすごい能力になる。細部まで見えなくても予測ができてしまうわけです。

 

そしてその予測能力を言葉で正確に説明することは難しい。ピッチャーが投げる瞬間の映像を瞬間的に見て投げられるボールの軌道を直感的に判断するバッターの思考の全てを言葉にすることは不可能、というわけです。

don't think,feel

というのはかなり熟達者の予測感覚なのですね。

こうしたことを中学とかの部活で体系的に教えたら、かなりいい刺激になるんじゃないでしょうか。

 

海外ではこの直感力を取り戻すために、少しぼやけたコンタクトレンズをつけさせて、頭で考えてものを見ようとせず直感でコントロールする力を呼びもどさせるためのトレーニングまであるそうです。

 

やっぱりそういうことですよね、人の脳を理解して、勝負に勝つ、というのは。

 

プロゴルファーに、普段使わないS字パターで100本のパターを打ってもらい、1回目は時間をかけず直感で打ってもらい、もう一回はじっくり時間をかけて正確に打ってもらうと、時間をかけて考えた方が成果が悪かったそうです。don't think,feel.

 

焦った時には、数字を逆からいう、等で頭を忙しくしたら、体は自然な状態で動いてくれる、というのです。ステージ上での緊張からの解放にも役立ちそうです。

 

またいつも同じ動作を繰り返す、というのもフラットにできる秘訣なんだとか。

イチロー選手のあのいつもの動き、理論的に正しかったんですね。

続く

www.terrax.site