スティービー・ワンダーの不定調性進行分析
85, Summer Soft/Sweet Little Girl / Stevie Wonder
事例82;Summer Soft (CDタイム0:00-)
1A
F#6 |F7 |EM7(13) |D#7 |
B | B/C# |F#M7 |F#M7 |
F#6 |F7 |EM7(13) |D#7 |
B |B/C# |F# |F# G#m7/C#|
1B
F#6 |Cm7 |B7 |B♭m7(11) |
G#m7 |G#m7 C#7 |F#7 E7 E♭m7|D7 D♭7sus4的 |
サビ;
Bm7 |E7 |Bm7 |E7 |
Bbm7 |C#7 |F#7 E7 E♭M7 |E♭M7 D♭M7 |G#m7/C# |
2コーラス目Bメロ
2B;
F#6 |Cm7 |B7 |B♭m7(11) |
G#m7 |G#m7 C#7 |F#7 E7 E♭m7|Dm7(11) Dm7/G的 |
2サビ
Cm7 |F7 |Cm7 |F7 |
GM7 |Am7/D |G7 F7 Em7 |E♭m7(11) E♭m7/A♭的 ~サビを半音ずつ上げていく
C#m7 |F#7 |C#m7 |F#7 |
G#M7 |A#m7/D# |G#7 F#7 Fm7 |Em7(11) Em7/A的 ~サビを半音ずつ上げていく
サビ最初のコードがFm7-B♭7になるまで上げる。
この曲の特徴は転調です。
後半BからFまでの、6回の上昇転調が起きています。
スティービーらしい転調の接合部分は、遠心力で振り回されるような非視覚的転調感。
なお転調部分のコードは良く聴き取れません。
D♭7sus4的と書かれたコード部分です。
機能和声論に準じている私の耳で、これなら自分でも転調できるであろう、というコードで聴き取り解釈したので、このコード部分は各位で聴取して模索してみてください。
Aメロの半音下降的脈絡ももはやおなじみ。
こうした上昇進行も、彼のスタイルであろうと感じます。歌のポテンシャルの高さは言うまでもなく、またブラックミュージックの精神的高揚をもたらすパターンの伝統についても言うまでもなく、なにより盲目ゆえ晴眼者にくらべ空間把握において“天井という概念が必要ない”わけですから、上下の感覚の自在さを表現しているのがこの上昇転調の技の採用を加速させた、と考えることもできるでしょう。
ゴスペルなどは、天上の神のところまで登るメタファーとして、こうした手法が使われるそうですが、それに対して「個人がその表現に共感できる」からこそ彼がここでこうした転調表現を用いたということもできるでしょう。
Sweet Little Girl
C#7 |% |F#7 |% |D#7 |G#7 |C#7 |% |
C#7 |% |F#7 |% |D#7 |G#7 |C#7 |% |
F#7 |% |A#7 |% |F#7 |D#7 |G#7 |% |
これは見ての通り、7thコードによってできています。またはメジャーコードで作ったけど、即興的に7thを入れてしまっても誰も気にしない、というような雰囲気でできている曲、とでもいいましょうか。海外のレコーディングはそういう感じはあります。
I7はじまりでAメロを作り、IV7でサビやBメロをはじめる、という形式にしておけば、Aメロデ多少無理があっても、Bに行った時展開感を出せます。または最初は全てメジャーコードで作ってもOKです。その場合、若干ビートルズ的な印象にもなりますのでご注意ください。
(参考)
最終的にはI7から各7thコードへの「進行感」を覚えておかなければなりません。
たとえば、
C7-C#7=温度を上げる感
C7-D7=1ステップアップ、I-II感
C7-Eb7=風を受けて感
C7-E7=平行短調にむけて感
C7-F7=一般的I-IVブルース展開感
C7-F#7=裏返し感
C7-G7=一般的I-Vブルース展開感
C7-G#7=強制的納得感
C7-A7=任意的納得感
C7-A#7=納得して前進
C7-B7=クールに前進感
というようなイメージがぱっと出てくるようにしておけば良いのではないでしょう。
連鎖した7thコードがちゃんと曲の流れの脈絡に合っているかを判断できるようになるまで。