音楽教室運営奮闘記

音楽と教育と経営の雑記ブログ~不定調性論からの展開

"意味"のある単語を並べて歌詞を作る~ユーミン歌詞・コード考68

ユーミンの不定調性コード進行研究

ユーミン歌詞・コード考 / アルバム「POP CLASSICO」1

 

 

Babies are popstars
イントロにオーケストラの調弦の部分が入っています。現代音楽的な響きによって入っているのではなく、オーケストラの調弦のサウンドが音楽的聴こえる人は、こうしたサウンドが「何かが始まる前の響き」と感じられるのではないでしょうか。クオリアですね。

 

Laughter
いつもふたりは さよなら云って 二度と会わないと決めるのに
明日になれば 何事もなく 冗談とばしあった

過ごした日々が 夢だったのか それとも今が夢だったのか
明日になれば 何かが違って また笑い合っていそう


声でわかった すぐ 最後の電話 あなたの声は なぜそんなにやさしいの

 

このアルバムは「アンセム」なんだ、ということで、まさしくそういうことなのでしょう。

 

愛と遠い日の未来へ
この作品、映画の主題歌なんですね。
(ユーミンレポートより)

サビ(アルバム収録タイム 0:59-)
E♭ |B♭/D |Cm7 |Cm7/B♭|
E♭ |B♭/D |Cm7 |Cm7/B♭|
A♭ Gm7|F#dim7 Fm7 |D♭M7|B♭ |
この作品はE♭メジャーキーが支配しているが、その中でVII♭M7であるD♭M7がサビの締めくくりに置かれて広がりを出している部分に注目いただきたい。

和声が作る情感を優先してコードを選べるタイプのアーティストにとっては、VIIm7(♭5)を使うか、VII♭M7を使うか、という選択の強度は同じであろう。

 

今だけを きみだけを

薔薇の鎖に止められたままで 翼広げようとするけれど
憧れと絶望が 引き裂くこの世界 きみだけを みつめたい

 


雨に願いを

窓によせた泣き顔 光る雨つぶ おりてくる たくさんの なにかいいこと

いつも私が そばにいるって たしかめられるように ただ抱きしめて
おとなになったら 消え去る世界を あきらめてくのが 悲しすぎたら

 

Your Eyes Are Magic ~ 終止符をおしえて
枯葉舞う駅で 偶然見かけたの 急ぎ足のあなた
こちらに気づいて 昔のまなざしで 止まった ふたつの時

こういう書き出し、な。

 

お願いおしえて 終止符の位置 哀しい恋の おわり

 

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Hey girl!近くても
光る夜混ぜて きみがチューブで吸い込んだらかけめぐるよ 胸いっぱい


Discotheque
ブギもサンバも スカもチークも 卒業して 髪も服も 仲間たちも 地味に変えた
でも あるはずの リアルな幸せなんて 辿り着くたび 幻

 

Early Springtime
まわり道したのは ようやく気づくため 

取り戻せない時間なんて なにひとつもないこと

なぜ あなたといると 涙がでるの 独りだった日々が いじらしくなるの


2羽のカモメ 回っている 5時の鐘が 響いている
ゆっくりと ペダル ゆっくりと踏んで 家へ帰ろう

 

2と5の数字すら魔術的に見えるのユーミンの歌詞マジック。
魔術好きなんですよ、きっと。

 

だって、2羽のカモメと五時の鐘は何か関係あるの??
って思うじゃないですか。楽曲のテーマである"二人と夕暮れ"というのを言い換えているのだと思いますが、実に精妙な表現だと思いませんか?

 

夜明けの雲
優しい嘘より 激しい真実 なぜかしら いつも 選んでいたわ
ときには素直に 瞳をのぞいて 失った思い出 とり戻しましょう
銀細工のフォトフレーム 空映す窓よりも 遙かな影

 

どうやったら、素直になって、瞳を覗いて、失った想い出を取り戻せるのだろう、って一瞬考えるんですが、もっと直感で捉えると、ああ、そうか、って思える。
"素直になって”"瞳"“想い出””取り戻す”
という単語を組み合わせて文章を作る、必殺技ですね。


歌詞を作るための単語帳=好きな言葉をただ羅列しておくだけで良いです。

 

歌詞が行き詰まったり、もっと詩的に何か言葉の化学反応を起こしたいときは、ぜひそのノートを活用してください。

好きな単語を組み合わせて、いってみれば「意味の分からない文章」を作るんです。そうすると、単語単語は全て好きな言葉ですから、それらが組み合わされると、独特なあなただけの表現が生まれます。

 

シャンソン
限りある日々を生きてること 分かち合おう 静かなくちづけで
時のひとひらが散りゆくのを いとおしむように 掌で包んで

ひとつひとつに名前をつけて あなたに贈る かすれゆくシャンソン
(ユーミンレポートより)

Aメロ(アルバム収録タイム 0:45-)
A♭ B♭m7 |Cm7 B♭/A♭ |Gm7 Cm7 |Fm7 B♭7 |E♭sus4 E♭ |×2
Bメロ
E♭7 |A♭M7 A♭/G |F#dim7 F |B♭m7 G7 |C7sus4 C7 |
サビ
D♭ E♭/D♭ |Cm7 Fm7 |D♭ E♭/D♭ |C7 Fm7 /E♭|
D♭ E♭/D♭ |Cm7 Fm7 |B♭m7 |B♭m7/E♭ |
なぜだかどこか心の奥にしまっていた扉を開けられたような感動が呼び覚まされる曲。

Aメロの三小節目にII/Iがあり、これが例によって、Gm7へ流れる得意の展開である。このB♭/A♭というのは、Gm7/A♭と解釈することもでき、ベース音が半音下降していくだけで流れるこの流れだけであれば、現在ではオーソドックスなパターンの一つであろう。これが続くGm7はこの曲のキーA♭からみればVIIm7であり、ノンダイアトニックコードにいとも簡単に移行できてしまっていることになる。

ここでのポイントは、I-IIm-IIImときて、このII/Iというコードに進めたこと。



MODELE
靄に咲く 睡蓮のように たゆたう世界 そこだけ止めて
待ち続ける 君のまなざし 私の全て 描ききるまで

時と呼べない うたかたのとき でも いくどとなく 夢で逢う花になるわ
愛と呼べない 不確かな距離 でも手をのばせば ふれる程そばにいたい
(ユーミンレポートより)

Aメロ(アルバム収録タイム 0:14-)では、

Aメロ
EM7 |B/D# |C#m7 G#m7 |EM7 D#7 |
BM7 |G#m7 G#7(♭9) |C#m7 D#7 |G#m7 G#m7/F#|EM7 |F#7 |


となっているが、一段目と二段目はまるで違うコード展開であるが、メロディはほぼ同じである。このテクニックもユーミンが長年構築してきたメロディとコードの関係を拡張するテクニックの一つである。

サビ
EM7 | G#m7/D# |EM7 D#7 |G#m7 |
EM7 F#7 |G#m7 |EM7 Em7 |G#m7 |EM7 Em7 |BM7 |


サビではG#マイナーキーにおけるVI♭M7であるEM7の冷気のような旋律を、暖めるようにEM7→Em7という展開がまた新しさを感じる。

「自分にとって新しいものであればよい」というユーミンの発言が聞こえてきそうな展開。

この曲で用いられている展開の妙は、これまで解説してきた事例の組み合わせであることはわかるだろう。しかし、それぞれの技法が呼応するように、音楽的脈絡を作り、意味と同時に独自の雰囲気の構築を感じた。


まだまだこの挑戦は続き、私たちが考えもしない手法を持って、「ポピュラーミュージック」という枠を広げていくのではないだろうか。

 

POP CLASSICO