音楽教室運営奮闘記

音楽と教育と経営の雑記ブログ~不定調性論からの展開

137,Lemon / 米津玄師(1・コード進行編)

137,Lemon / 米津玄師

久々に、こういう記事。を新たに書きました。 

 

Lemon
   G#m    F#             E          B
夢ならば  どれほどよかったでしょう
   E           B         Ddim        D#
未だにあなたのこ とを夢に見る
のとこですね。このDdim。
ここをこうしてみましょう。
   G#m    F#             E          B
夢ならば  どれほどよかったでしょう
   E           B         A#7        D#
未だにあなたのこ とを夢に見る
 

これでも成り立ちますよね。でも「夢に見る」感が出ません。A#7ですと少し淡い感じがして、ジブリ感もあり、ちょっと香りが弱まり、聴くものをハッとさせません。

で、これをDdimにすると、ハッとさせられるわけです。最近聞かなかったコードなのでとても新鮮でした。知ってる人もいないんじゃないか、と思っていたくらい笑(すいません、本当は時々耳にします)。
(米津楽曲にはdimや後に紹介するm7(b5)が時折スパイスのように出てきます。この方の雰囲気に合っていますよね。)
 
では次のようにしてください。
   G#m    F#             E          B
夢ならば  どれほどよかったでしょう
   E           B         A#7(b9)        D#
未だにあなたのこ とを夢に見る
どうでしょう。これで少し近づきましたね。
どういうことでしょう。
 
A#7(b9)=a#,d,f,g#,b
です。
Ddim=d,f,g#,b
です。
 
似ていますね。このDdimというのは、A#7(b9)の根音省略系なんですね。
つまり
A#7(b9)=Ddim/A#
というわけです。まあ、別に知らなくてもいいです。
 
その前に7thコードにb9thのテンションが乗せられることを知っていないといけません。これがなんで乗せられるかは、ジャズ理論におけるドミナントモーションのしきたりを知っていないといけません(ジャズは特に関係ないです、古いポップスぐらいな感じでとらえてください)。まあ知らなくても生きていけます。

www.m-bank.jp

 

このdimコードは、半音で次のD#に結びついています。

B=b,d#,f#

Ddim=d,f,g#

D#=d#,g,a#

構成音の流れも綺麗です。

d#--d--d#

が綺麗ですね。半音での連鎖、というのは、ちまちま動いているように見えますが、実は一番ダイナミックな音楽的な和音の動きを感じる動きなんです。パワーコードでがーん!がーん!というダイナミックとは違う、美的なダイナミックさです。

 

なんで半音がダイナミックなのか、という点は、不定調性論の方が説明しやすいでしょう。半音隣の音、というのは数理上最も共通音がない、「遠い音」であるので、その変化がダイナミックになる、と考えるわけです。

下記はドミナントモーションの関連動画です。

www.youtube.com

 

 

例えば、

 

CM7   |Dm7   |Em7   |Am7  |

みたいな進行で、セカンダリードミナントに任意に置き換えてみます。

 

ex1

CM7   |B7(b9) |Em7  |Am7  |

ex2

CM7   |Dm7   |E7(b9)   |Am7  |

 ex3

CM7   |Dm7  B7(b9)  |Em7  E7(b9) |Am7  |

 

で、dimコードはX7(b9)の省略形ですよね。だから

ex1'

CM7   |D#dim7 |Em7  |Am7  |

ex2'

CM7   |Dm7   |G#dim7   |Am7  |

ex3'

CM7   |Dm7  D#dim7  |Em7  G#dim7 |Am7  |

 

ってなるんですね。その曲のメッセージにあったコードを自由に使ってみてください。

 

似たようなものに、パッシングディミニッシュっていうのがあります。

これはちょっとまた違って、定義としては、

「長二度根音が離れたダイアトニックコード間に置かれたディミニッシュコード」です。 

 

だから、

CM7   |Dm7   |Em7   |Am7  |

であれば、

CM7  C#dim7 |Dm7 D#dim7 |Em7  |Am7  |

とかです。置き換えるんじゃなくて、「挟む」んです。

この和音も米津楽曲に出てきます。

 

 

 

 AD

   

   

 

 

同曲でのdim7コードはII7(b9)=ドッペルドミナントにb9を乗っけた7thのディミニッシュです。キーAmでやってみましょう。

 

Am   |Bm7(b5)  E7  |Am

これがダイアトニックのII-Vですね。

 

でこれをII7にします。

Am   |B7  E7  |Am

ちょっとエスニック、というかスパニッシュというか、辛味が効いて、しつこくなりますよね。これをさらにしつこくします。

Am   |B7(b9)  E7  |Am

 きゃーしつこい。これを薄めるには逆にテンションをまぶします。

Am7(9)   |B7(b9)  E7(b9,b13)  |Am7(9)

テンション=張りが立つ、というような意味ですが、本来は使い込むことによって全体のテンションが上がって、逆に平らになるんですね。コンプ使いすぎた音源みたいな感じです。

 

この辺に使用経験とか、持って生まれた才能みたいなことが関わってくるのではないかと思います。どれがベストか、とか誰も教えられません。

 

この"lemon"のディミニッシュの辛味、ノスタルジーは、マイナーキーのII7の辛味なんです。

民族的で、粗野な色彩、内在する本能的な感覚、みたいな。

不定調性論的にそう表現した方が、この和音のみなさん各自の感覚感を取得しやすいのではないか、と思います。

 

で、そのためにマイナーキーにおけるII7の意義、とか、ディミニッシュコードの意味、とかを自分で把握しておく必要があるので、この話は底深くなっていきます。

 

で、こういう響き感の取得は、理論書を読んでもどこにも書いていないので、天才的に持って生まれてくるか、死ぬほど曲を聴いて、作って、自分なりのポリシーに銘打っておかないと、いざという時に使えません。

それを補うのが理論なのかもしれませんが、どうしても汎用化された印象感や慣習的感覚を述べるしか無くなってしまうので、こういう和音の感覚に自分なりの「胸騒ぎ」を感じたら、とにかく好きなアーティストの曲を全部弾いて、自分の中にその全てを刻み込んでみると良いと思います。理論書で同じことを勉強するのは、自分の音楽売ってからその収益でハワイに行って、ビーチで日がな一日横になって読んでもらう感じでいいです。収益をそう行ったアレンジャーに頼む方に回したら、一生勉強しなくても良いです。何をどう使うか、ってとっても大切です。

 

====

さて、この曲にはもう一つ匂うようなコードがあります。せっかくですので。

C#m7       G#m       E   F#      Fm7(b5)
雨が降り止  むまでは帰 れな   い
の「帰れないコード、Fm7(b5)」です。これも勉強してないと使えないコードです。でもこの方のおかげで若い方にもだいぶ浸透しているコードなんじゃないか、と思います。
これはIV#m7(b5)でトニックマイナーの代理コードです。
VIm6の転回形です。
つまりこの曲のマイナーキーの主和音G#mのG#m6の転回形です。
だから
E  F#  G#m6
って流れてるんです。でも「帰れない」んです。そのままE---F#---G#って行かないで、戻ってしまうんです。E---F#---Fって。この感じが「帰れない」感じしませんか?
 
問題は、このm6コードをいつ使うべきか、ここではm6だ!!!!
って思えるかどうか、ですよね。
前の行でG#m使ってるから、繰り返し使うのはつまらないなぁ、とか色々感じられる感覚ももちろん必要ですし、それを才能というのかもしれませんが、まあm6のこの使い方は、経験でなんとかなるレベルです。これは歌詞と連動したコードなので、さらに見事、なんですね。
"帰れない"の「い」の音がG#mの三度の音bで、これが6thのfとつまり、Fm7(b5)の根音fと増四度でぶつかり、なんともやるせない言葉の響きを聞かせます。これを生かすにはG#m6よりFm7(b5)の方が効果的です。まあとってつけた話に聞こえるかもしれませんが。意図してないかもしれませんが、それは関係ありません。
 
この二つのコードDdimとFm7(b5)が、私にとっての
胸に残り離れない苦いレモンの匂い
でした、、っていううまいことまとめた感じができるのが不定調性的な感覚の便利なところです笑。「レモンの味」ってしないところが素敵だな、って思います。「苦い」で味についてすでに述べてありますし、レモンの匂いってどんなだっけな、、ああ、、酸っぱさを強烈にイメージさせるなんとも言えない匂い、、、
と、曲中は感じなくても、実はじわじわと心の中に印象として浮かんでくる、っていう絶妙さが、、なんと評したらいいか。
ユーミン楽曲の「ルージュの伝言」には「紅い」って言葉は一回も出てこないけど、もう聴き手には紅い口紅しか浮かんでこない、っていう技法と同じです。
まあ、真似できんですよ。。。わかってても。。
 
曲の頭にDdimがくるじゃないですか、これ1分ぐらい頭離れませんよ。左頬に強烈なパンチ。で、この曲に慣れた頃、サビの最後あたりでやっと痛みが引いてきた頃、今度はFm7(b5)で右頬にパンチ。

平たくいうと、「いい曲だぁ」って思わせる効果しかない。

 

====(注)

もちろんDdim7とDdimは全く異なるコードですが、ここでは汎用性のある感じを考えて書かせていただきました。解釈によっては、ここはDdimの方がDdim7よりも鮮明になって良い、と感じるかもしれません。この場合省略形としての響きが薄まって、7thコードの意義が失われるのではないか、と思われるかもしれません。

しかしそもそも「根音省略」という発想自体が文化の名残であり、そうした曲を聴いてきたので、たまたま手法として頭の中に入っている、というのが実際です。

ですから、不定調性的には、こうした慣習からの刺激を自由に解釈して、どんどん新しいコード感で曲を作っていくべきだ、と考えます。

====

 

 

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Lemon / 米津玄師 ギターコード譜 - U-フレット

こちらのサイトで、後半は「溢れて止まないのは涙だけ」という部分にGdimがあります。聴いてみると確かにGdim的な動きをしてます。

 

dimコードというのは全て短三度の音程差で作られているので四つの構成音で四つの解釈ができます。

 

Gdim=A#dim=C#dim=Edim

です。

G#mに解決するV7はD#7です。

D#7(b9)=Edim/D#ですから、ここには最初のDdimと同じ感覚のディミニッシュコードが入っているわけです。

米津楽曲には時々出てくるコードです。

好きなコード感なのかもしれませんね。バンバン古いコード感を新しい感覚に発明いただきたいです。

"苦いレモンの匂い"でG#mへのII-Vを使っています。

これは言ってみれば、油断すると超和洋折衷な超ダサいコード進行になりがちなので使いどころにとてもセンスと覚悟が必要です。

多分このマイナーキーのV7とかV7(b9),II-Vの使い方に卓越したセンスのある方なのだな、という印象を持ちました。マイナーのVって日本人大好きノスタルジーコードなので、猟犬のように聴き手が求める時に差し出せるセンスがいるんだと感じてます。いい感じの曲を聴くたびに

「お!俺も使おう!!」

とかって思って使ってみて、よく失敗して書き直すコードです笑。

 

====

で、さらに応用。

CM7  |Dm7  |G7(b9)  |CM7  |

とあった時、ディミニッシュにすると、

CM7  | Dm7  |G7  Bdim7 |CM7

とかになりますね。でこのBdim7ですが、四種類の同一和音があるわけです。

Bdim7=Ddim7=Fdim7=G#dim7

つまりこれらを7thコードに戻すと、

A#7(b9)=C#7(b9)=E7(b9)=G7(b9)です。

で、これをそれぞれII-Vにします。

Fm7(b5)-A#7(b9)=G#m7(b5)-C#7(b9)=Bm7(b5)-E7(b9)=D#m7(b5)-G#7(b9)

です。

これがもし同じだとすると、代理できるわけですから、

CM7  | Dm7  |Fm7(b5) Bb7(b9) |CM7

というようなこともできる、ということになります。

 

しかしながら、機能和声ではここまでの代理は推奨されません。キーが見えなくなるから、です。

中心軸システムなんかも、これ考え方では可能、となります。

でも、聴いていただくとわかる通り「なんか、、、ちょっとやりすぎじゃね?」感が漂っています。

不定調性では、こうした「肥大した代理」感覚による新たな正当性の確立を制限しています。

つまり「あなたが、これは違う」と思ったらそれは「代理できない」として良い。

というようなことが可能です。

また逆に、あなたが「これは面白い」と思えばどんどん使用OKで、元の進行がII=Vだから代理できるんだ!というような理屈ではなく、元のII-VからインスパイヤされてできたCM7  | Dm7  |Fm7(b5) Bb7 |CM7(b9が尖りすぎなので取りました)という進行を使ってみた、という考え方です。

理論で正当性があるから使うのではなく、あくまであなたが使えると思ったから、という理屈で使用していくわけです。

だから、さらにCM7  | Dm7  |Fm7(b5) Bb7 |CM7に影響されて、

CM7  | Dm7  |Fm7(b5) Gm7(b5) |AbM7

という曲ができた、って言ってもいいんです。

 

"それ、なんの脈絡もなく、ただなんとなく作っただけじゃん、そんなのダメだよ"

って思う人もあるかもしれません。

不定調性論は、脈絡のない発想、意味のない感覚からあなたが生み出すものに価値を与えよう、という発想もあります。

だからこそ、ライブでいきなり歌詞を変えたり、イントロをなんかめちゃくちゃにして曲を歌い始めたり、ライブの最後でギター叩き割ったり、という行動の意味がもっと本人の中で明確になります。

学校では「ライブの最後にギターを叩き割っていい」なんて教えませんよね。

 

じゃあ、なんで彼はギターを叩き割れたんでしょう。

 

どういう脳の回路を普段からつくっていたら自分が満足する行動が成し遂げられるのでしょう。ファンが楽しめるライブが構築できるのでしょう。

何を鍛えたらいいのでしょう。。そしてそれは学校にいるときに鍛えられないのでしょうか。

 

そのときこの脈絡を持たない直感を頼りにした不定調性論的発想が生きるのではないか、と考えるわけです。

話が逸れましたが、この曲が見せる様々な技巧や印象、色調をどうやってあなたが生み出すか、感じられるか、日常の仕事や生活に活用していくか、みたいなことを考えてみてください。何がそのために不必要で、何が必要か、です。

その2に続く。

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