音楽教室運営奮闘記

音楽と教育と経営の雑記ブログ~不定調性論からの展開

この進行使うのには免許がいる?~ユーミン歌詞・コード考60

ユーミンの不定調性コード進行研究

ユーミン歌詞・コード考 / アルバム「acacia」1

 

 

Age of our innocence

「横に きみがいてくれる限り
決して よごれはしないと
動物のようなおびえた目をした
きのうの自分を許せる気がする」

Aメロの部分で、
B |B |F# |C# |
B |B |F# |C# |
となりBメロで
G# |% |C# |% |
となっていますが、キーをC#と考えると、メジャーコードだけで、
VIIb |% |IV |I |
VIIb |% |IV |I |
となっており、Bメロは、
Vm |% |I |% |
となります。VmとIの連鎖は、ダイナミックな進行です。

例;C |Gm |C |

このコード進行が持っている感覚は、どういうものですか?


哀しみを下さい
「さみだれの空を 便箋にして
故なき哀しみ つらつら綴る」
「さみだれの雲は 墨色流し
うち消す想いに 沈んでゆくの」
「あきらめたあのひとよ いちばん好きだった頃が
今もまだ 今もまだ 心しめつけるの」

「あきらめたあのひとよ どこかで変わらずいて
いつまでも いつまでも 哀しみを下さい」

この民族的な響きと、乱高下するようなメロディラインが、心の浮き沈みと、乱れる心と、霊的な畏怖を感じます。
愛のブルドーザーのような表現力笑。

「哀しみを下さい」っていうのも、やはり「叱って」系ですね。ユーミンの思考の感覚になんとなく触れるキーとなる発想だと思います。

 

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110°F
「探さないでよ 私のゆくえを
見つけないでよ そのわけを
わからないでよ 何もかも 深い深い海に消えるまで」

「いつか二人で見てた 燃え尽きてゆく夕陽
あれから私のドアは 固く閉ざされた」

また自殺の歌。しかも南国での死。

「いつか二人でみた」というフレーズが昨今のアルバムでは目立つように感じます。
これも「思い出の死」のような象徴かもしれませんね。起きてしまった思い出は変わらないけど、未来という安住の地から見ると、美しく見える。
本人が体験できるのは、この思い出を見つめる、という行為しかないわけで、これは死という現象の疑似体験みたいなものかもしれません。

この曲は
Am7 |% |D7 |% |
というドリアン進行に豊かな螺旋状に下っていくメロディが乗っています。
まるで深い海に沈むことを象徴するようなメロディで、こういうのは潜在意識に訴えてきます。

中間部に不定調性進行があります。
「いつか二人で~」のところです。
F#m7(b5) |F7 E7 |EbM7 |Cm7 |
Bb7(#11) |A7 Ab7 |CM7/G |% |~II-Vへ
こういう倦怠感を与えるラインも、この曲の象徴的な意味合いになっていると思います。
こうした進行は「劇薬」でもあるので、使用するためには何らかの免許が必要、な感じもありますね。

 

リアリティ
(ユーミンレポートより)

Aメロ(アルバム収録タイム 0:52-)
Cm7 |Cm7/F Gm7 | Cm7 |Cm7/F Gm7 |
Cm D7 |Gm7 C7 |Cm7 |E♭m7 Dm7 |繰り返し

このパートのキーはCmであるが後半のリリース部分でE♭m7が、ふっと爽やかな逸脱感を与えている。このコードも「ひこうき雲」で話題になったコードのような使用感があるのではないだろうか。degreeにするとIII♭m7となり、解釈をするならば、平行長調E♭メジャーの同主短調への転調コードと言えなくもないが、この響きは、私にはVI♭M7への飛躍と似たようなサブドミナントマイナー感を覚える。

Cメロ(アルバム収録タイム 1:57-)
G |B♭ |Am7 |A♭7 |
G |B♭ |Am7 |A♭7 G7|
このアルバムではこの曲でのCメロのような半音などでの隣接する音を用いたラインが何曲か現れる(この曲の前に収録されている『110°F』という曲にも出てくる)。このアルバムが初出ではないが、以前のような自然さからさらに意図的に少し難解な響きとなり、キャリア相応にふさわしい重厚な難度がポップミュージックで表現されていると感じた。

たとえば、G→B♭という移動は、話をぐんと別な方向に展開させるような印象を与える。この二つのコードを連鎖しながら、何かメロディを作ってみてほしい。たとえばd音だけで歌ってもいいだろう。「普通はこれこれこうなんだけど」とGコードが印象付け、そのままB♭に飛躍すると、「でもこういう見方もできないかしら?」という印象を持たせる。これは今これを書きながら私が感じている印象だ。それから半音下降していくことで、なんとなく説得されたような気分になってくる。このCメロ部分の歌詞は、
「腕の痺れを感じて目覚めてく Morning light、おこったような寝顔とカーテンをながめてる」
となっている。恋人の頭が腕の上にあったのだろうか。夢の中から少しずつ少しずつ、「あなたがいるリアリティ」に目覚めていく。これは100%ハッピーではないが、これ以上のハッピーは今の自分には望めないのではないか、と自分に言い聞かせるように日常に説得されている、などと考えることもできよう。
コード進行は、音楽的連鎖であると同時に、文章的脈絡、感情的変化も当然あらわすことができる。ユーミン的コード進行は、楽器でさまざまなコードを弾いたことがなければ十分にその意味を捉えることはできないかもしれないが、だからこそ、こうしたその価値を喚起する分析があってもよいだろう。

acacia (アカシア)
アカシアの木を想わせる空気感と浮遊感が印象的です。
時折唸るようなコードが入っています。
特にsus4の使い方ですね。0:52ぐらいからの部分で、

C Dsus4 Em |C Dsus4 |C Dsus4 Em |C Dsus4 |

こういうコード当ては、まずメロディを作り、一旦ベースとなるコードを当てながら、手直ししていく、という方法が一般的で、料理でいえば、ひと手間もふた手間もかかる料理に似ています。
この辺りはクリエイターの性分もあろうかと思いますので、参考にできる方はして下さい。

acacia