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不定調性論からの展開紀行~音楽と教育と経営と健康と

多解釈可能分数コードで自在にワープ転調;ユーミンレポート37

2018.3.7⇨2020.4.15更新

ユーミンレポート全楽曲

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歌詞については掲載しておりませんので

https://www.uta-net.com/artist/2750/

こちら等にて確認ください。 

 

土曜日は大キライ

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エルトン・ジョンの「Saturday night alright」は1973年でしたか。
あの歌は、土曜日は最高!と歌ったものでしたね。

==

Aメロ~(アルバム収録タイム 0:19-)
B♭M7 |B♭M7 |B♭m7/E♭ |B♭m7/E♭ |
A♭M7 |Gm7 |Cm7 |Cm7/F |
Bメロ
Cm7 |Fm7 |Cm7 |Fm7 |
Dm7(♭5) |Dm7(♭5) |D♭/E♭ |D♭/E♭ |
サビ
Fm7 |B♭ |D♭/E♭ |A♭ |
Fm7 |B♭ |D♭/E♭ |D♭/E♭ |


A三小節目のB♭m7/E♭はB♭mのキーとも取れるし、続くA♭M7へのIIm7/Vとも取れます。

またCm7-Fm7のラインは、A♭メジャーキーのIII-VIとも取れるし、CmのI-IVとも解釈できます。急に現れたこの技法は、ユーミンのこの時期の発見だったのかもしれません。

不定調性論では多解釈可能なコード機能を変幻自在に用いる、という考え方があります。


Dm7(♭5)-D♭/E♭の弱進行のパステルカラーはまさにユーミンサウンドそのもの。

 

これを、
F |B♭ |D♭ |A♭ |
とするとビートルズになります。

この色合いのしっかりした感じは、あまりユーミンサウンドとはいえませんね。

 

このように調ではなく、和音から和音へと移動する流れに感じる脈絡をいかに深く感じられるかで、「ふつうそっちにはいかない」方向にコードを持っていき、メロディを構成することができます。

この時期のユーミン作曲技法の集大成のような曲です。

 

ホライズンを追いかけて〜L'aventure au desert

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Aメロ(アルバム収録タイム 0:20-)

Gm7 |C7 |FM7 |Dm7 |

Gm7 |A7 |Dm7 |Dm7 Em7 Dm7 |

Gm7 |C7 |FM7 |Dm7 |

Gm7 |Am7 |Bm7 |C C#dim7 |

Dm7 |Dm7/C |G/B |B♭/C |C |

=degree=

(key=Dm)

IVm7 |VII♭7 |III♭M7 |Im7 |

IVm7 |V7 |Im7 |Im7 IIm7 Im7/III♭ |

IVm7 |VII♭7 |III♭M7 |Im7 |

IVm7 |Vm7 |VIm7 |VII♭ VIIdim7 |

Im7 |Im7/VII♭ |IV/VI |VI♭/VII♭ |VII♭ |

見た目Gm色が強そうですが、Dマイナー/Fメジャーのキーで展開されます。

注目すべきは、四段目、

Gm7-Am7-Bm7-C

Gm7はIVm7、Am7はVm7であるが、Bm7はDメジャーキーのVIm7である。そして得意のVII♭であるCに流れます。この辺りは、VIm7-VII♭7のサウンドに脈絡を感じることのできるユーミンらしい展開。

これはVIIm7のサウンド感を「知っている」からできるわけです。

つまりkey=Cのとき、

CM7 |Bm7  E7 |Am7 |

というビートルズの『yesterday』のBm7のようなコードの印象に音楽的意味を感じられるかどうか、という意味です。

ぜひ同曲を参考に「三つ続くm7」を活用してみてください。   

20minutes

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Aメロ(アルバム収録タイム 0:18-)

D  |C/D |F/D |C/D |

D  |C/D |F/D |C/D |

Bメロ

D  |E/D  |C#m7 |C7 D/C |

Bm7 |B♭ C/B♭ |〜

Cメロ(1:35-)

Gm  Am |C  |Gm  Am |C  |×3

実験的。分数コードコンセプト。

Aメロはd音を固定しての展開、Bメロはベースラインが下降しての展開。

 

歌詞は恋人と待ち合わせをして20分待たされているという歌だ。ビートルズにも同じような曲でジョージ・ハリソンが約束に待ちぼうけを食わされているblue jay wayという奇妙な曲がありました。

停滞するベースライン、下降してしまうベースライン、またF/Dというようなぶつかるサウンドが、疲労感、待たされてる感、げんなり感、ぴりぴり感のようなものを確かに感じます。

 

D/C→Bm7はCのベース音が半音下がると、Bm7です。D/C≒Bm7/Cです。

和音全体が下降してその精神状況を現しているようです。

 

最後のCメロがまったく不思議な終始感を持っています。

解決しておらず、ただ横にスライドしてリリースしているような不完全燃焼のような進行です。

これも新しい挑戦??

一度聴いて、音楽的脈絡を感じないような進行でも、何度も繰り返すことでリズムができ、意味が生まれる、というのはまさに音楽のクオリアの探求です。

 

3-Dのクリスマスカード

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この曲もビジュアルが、見渡せる綺麗な曲です。

3-Dのクリスマスカード 歌詞

===
サビ(アルバム収録タイム 1:00-)
B♭M7 |Am7 |Gm7 |FM7 |
B♭M7 |Am7 |Gm7 |FM7 |
D♭M7 |Cm7 |B♭m7 |B♭m7/E♭ ||FM7 |
=degree=
(key=F)
IVm7 |IIIm7 |IIm7 |IM7 |
IVm7 |IIIm7 |IIm7 |IM7 |
(key=A♭)IVm7 |IIIm7 |IIm7 |IIm7/V |(key=F)IM7 |

 

最初の二段がFメジャーキーのIVから進行、

三段目では短三度上がって、A♭メジャーキーのIVから同一の下降。

A♭メジャーキーとはFマイナーキーであり、最後のFM7で明転するように次のコーラスに向かっていきます。

 

この変化を同主調の変化と言えばそれまでなのだが、決して明るい→暗いという曲の変化になっているわけではありません。

これは同主調への変化が長調と短調の変化である、としか考えられないと、まずこのような転調をしようという発想になりません。


またFM7→D♭M7という例によってVI♭の変化を起こしてから同じ流れで下がってくる、という発想が結果としてこうした進行を生みださせた、のかもしれません。

こんな転調の方法があったのだ、と思い知らされる好例!!

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