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不定調性論からの展開紀行~音楽と教育と経営と健康と

ユーミンの四点カメラによる作詞技法/かんらん車;ユーミンレポート14

2018.2.24⇨2020.3.30更新

ユーミン歌詞・コード考 / アルバム「流線形'80」3 

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歌詞については掲載しておりませんので

https://www.uta-net.com/artist/2750/

こちら等にて確認ください。 

 

Corvett 1954

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Aメロ~(アルバム収録楽曲タイム0:24~)
C |Gm |C |Gm |C |Gm |Fm7 |Am7 |
Em7 |A7 |DM7 |DM7 |Dm7 |G7 |C |Bm7 E7 |
A |Em |A |Em |A |Em |C#m7 |F#m7 |
C#m7 |F#7 |BM7 |BM7 |Bm7 |E7 |AM7 |E7 |~
(アルバム収録音楽タイム 2:36~)
B |F#m |B |F#m |B |F#m |D#m7 |G#m7 |
D#m7 |G#7 |C#M7 |C#M7 |C#m7 |F#7 |BM7 |F#m7 |BM7 |F#m7|BM7 |
D♭7sus4 |D♭7sus4 |G7sus4 |G7sus4 |
C |Gm |C |Gm |C |Gm |Fm7 |Am7 |
Em7 |A7 |DM7 |DM7 |Dm7 |G7 |C |Gm |~

=degree=
Aメロ~
(Key=C)
I |Vm |I |Vm |I |Vm |IVm7 |VIm7 |
IIIm7 |VI7 |IIM7 |IIM7 |IIm7 |V7 |I |VIIm7 III7 |
(Key=A)
I |Vm |I |Vm |I |Vm |IVm7 |VIm7 |
IIIm7 |VI7 |IIM7 |IIM7 |IIm7 |V7 |I |V7 |~
(アルバム収録音楽タイム 2:36~)
(Key=B)
I |Vm |I |Vm |I |Vm |IVm7 |VIm7 |
IIIm7 |VI7 |IIM7 |IIM7 |IIm7 |V7 |IM7 |VIm7 |IM7 |Vm7 |IM7 |Vm7 |IM7 |
II7sus4 |II7sus4 |(key=C)V7sus4 |V7sus4 |
I |Vm |I |Vm |I |Vm |IVm7 |VIm7 |
IIIm7 |VI7 |IIM7 |IIM7 |IIm7 |V7 |I |Vm |~


この曲はデュエットで、各ラインの担当音域にあわせて上手く転調しています。


三つのキーを行き来します。
デビューアルバムの「きっといえる」などから展開してきた転調の技法です。

II-V主体で聴感上の慣習としてのII-V活用しています。

またこの曲では全体を通してVm7が独立して用いられており、「ユーミンのVm7感」も存分に活用されている曲ですね。

 

入江の午後3時

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懐かしい匂いのする歌詞がいいですね。

スローモーションをみているようです。

凄く切ない歌詞なのに、可愛らしい歌ですよね。この辺りが反動的指向なんでしょうか。

ロイズのポテトチップチョコレートのような甘くかりっとした感じ。

 

 

 

かんらん車 open.spotify.com

これもテクニックだと思うのですがどうでしょう。
まず「すいた電車」を想像して下さい。
次に、
「電車が住宅街をすり抜けていくとこ」
を想像して下さい。
次に場面変わって
「ひとりの足音」
歩いて言える足元を想像して下さい。
次に、
その足音が「川辺りの遊園地を」たどってるところを想像して下さい。
これって四点の視点が必要だと思いませんか?つまり四カメ。

 

電車の中のカメラと、電車が通り過ぎるところを写すカメラ、それから電車が通り過ぎたところを後ろから写すカメラ、そして遊園地から電車をみてるカメラ。

 

まさに映画。こんな歌詞の書き方もあるんですね。


「電車」というキーワードに、四つカメラを町中において、そこからそれぞれの視点で、詩的に語る。テクニック。

 

「観覧車」というテーマが「かんらん車」となり、どこか精密機械というイメージはなくなり、なんとも夕暮れの中に置いてきぼりにされていくおもちゃのようなイメージを醸し出しています。ゾクゾクしませんか?ちょっと怖いくらいのクオリアを感じます。

 

「どこをみても淋しさばかり」という視点感覚が、この四カメ技法による「距離感」の表現になっているのかもしれません。ただ「淋しい」って言ってもピンとこないけど、このように歌詞全体が醸し出してくると、ちょっと怖いくらい感じるものがあります。

 

だから自分はユーミンが好きなのか、だからユーミンはすごいのか、なんて感じたり。

 

12階のこいびと 

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これも映像美のよう。

生活感の中にひそむ重苦しい不安が見事に表現されていて。

 
12階からの自殺を案じさせる歌だ、というのですが。

アルバムの最後をこうして締めくくったら、縁起悪いんじゃないか、なんて感じてしまうのですが、そういった禁忌を超越した視点から歌詞を作るわけで、とても同じレベルで音楽を語れそうにない天才感が襲ってきますね。

 

ユーミンの歌には「死」が「死ではない別のものを象徴した存在」であるような気がします。リアル、非リアルの中で、死は究極の現実、究極の非リアルであって、人々はそれに挟まれて逃げることができません。

愛と死が究極の秘め事だとすれば、ユーミンソングの中にこの二つが、その反動的指向によって均等に割り振られていても何ら不思議ではありません。

それをこんな可愛らしい曲調で、まるで料理番組のテーマソングのような軽さで歌う、というのが、まるでルネ・マグリットの絵画のように、聴き手を混乱させるのかもしれません。イケイケのユーミンが作り上げた当時の先進性がこういうところにもあります。

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