音楽教室運営奮闘記

音楽と教育と経営の雑記ブログ~不定調性論からの展開

ほぼ全曲ビートルズのコード進行不定調性考察(2017)「The Beatles」2

4、ワイルド・ハニー・パイ - Wild Honey Pi

   


G7 |F7 |E7 Eb7 |2/4 D7 |


「なんだ、俺たち、どんなコード進行でも曲できちゃうねえ」
みたいな当時の彼らの声が聞こえてきそうですね。
この曲の7thコードの降りてくる進行の雰囲気は「破綻」というような印象を受けます。「もうなんでもいいぜぇ、なんでもやってやるよ」という彼らのすごみを感じませんか?まあ人それぞれで良いと思います。

 

たとえば、
G7 | B7 |E7 A7 |2/4D7 |
とします。裏コードによる連鎖は、特殊だから、ちゃんとした五度進行にしました、となったところで、この曲は同じ雰囲気で歌えませんよね。理論の整合性の先にある世界をロックは見つけたんです。

激しい荒波の航海で試されるのは経験と知識です。決して理論ではありません。

もちろん「こうなったらこうなる」という"セオリー"はあるでしょうが、それ以上に大切なのは瞬間瞬間の判断です。

「あああ、オレはここでこうしてぇ!!!」

と思う人かどうか、です。その段階に辿り着いていない人もいるでしょう。

「モーツァルトがこうしたのだから、正しいのはこっち」

と思う段階です。権威や最高の美に屈服してしまうタイプです。悪いことではありません。アーティストであると思います。でもそれ以上の段階というのは、未知で無価値な領域です。誰も踏み込んだことがなくあなただけの世界です。

誰も登ったことのない土星の山に登りに行く、と考える人はいないでしょう。

まずエベレスト制覇してからだろ、と思うのが普通の人。

でもあなたの心は自由なはずです。それを忘れてしまっているだけです。

 

そう理解した時「あ、これだ、私はこれがやりたい」と思う瞬間があるでしょう。

それに従おうと思い始めた時、参考になる一つの教材がビートルズの和音の置き方ではないでしょうか。

 

これが不定調性論による作曲へのアプローチです。

もし皆さんの周囲で、「ビートルズのコードは訳分からない!」という方がいらっしゃったら、このブログをご紹介頂ければ幸いです。

   

 

5、ザ・コンティニューイング・ストーリー・オブ・バンガロー・ビル - The Continuing Story of Bungalow Bill

サビはじまり
C G |C Fm |C G |2/4 G |
A E |A Dm |A Dm |E |
Aメロ
Am C |F G |Am C |F G |
E G |Am Fm | ~
このアルバム、なんだか2/4拍子が多いですね。
リズムによる実験にも気合いが入っています。
ジョンのリズム感って結構この変拍子的な感覚があるんですよね。

この進行では、IVmであるFmがCメジャーキーとAメジャーキーで転調して使われます。
さらにAメロでもIVmのFmがいい感じになっています。

このコードが持つ雰囲気を最大限に活用していますね。

これはそういうふうに使おうと考えて作るやり方と、この曲の最初ででてきたFmの印象に作曲しながら、なんとなくその匂いを感じていると、転調した後でもちょっと挿してみたくなる、というような印象論で作る方法があろうかと思います。

前者は機能和声的ですが、後者は不定調性論的です。

それを可能にするためには頭の中に余白を常に用意しながら作曲していくことで生まれやすくなるように感じます。まあワタクシは別に大作曲家ではないので、皆さん一人一人でどうやってこのFmを使うか、ということを考えて頂ければ幸いです。

それがあなたにとっての印象論になっていくと思います。

 

6、ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス - While My Guitar Gently Weeps
これも"掛留概念の拡張"ですね。いわゆる"クリシェ"です。
Am |Am/G |D/F# |FM7 |
Am G |D |E |
このアルバムではクリシェもかなり活用されているような印象を受けます。

全体に調性感がありますが、明らかにメロディとコードとベースが分離しているところが、このアルバムでのビートルズの挑戦の一つになっているように感じます。偶然かもしれませんが、コード進行が一つの楽器で完結せず、アンサンブル全体に拡張していっていますね。複数の楽器でコード進行を奏でる、というのはイメージ力や経験が必要ですから、なんとなくその次のアルバムからの突き抜けたバンドサウンドを予感させます。

 

クリシェ進行に皆さんはどんなイメージを持ちますか?

元はフランスのシャンソンで常用されたところから「常套手段」の意味で命名されていますが、その進行の持つ進行感は強烈です。

これをいかに一つの印象にしないか、これが作曲意識学のポイントではないでしょうか。

 

つまり「ああ、クリシェな」と思わない、ということです。

そんなこと無理だ、とおっしゃるかもしれませんが、この辺はスティービー・ワンダーが凄いです。もし宜しければM-Bankにお問い合わせいただければ無料で差し上げていますのでレポートをご覧ください。

 

その時、今の感情で、今の音色で感じるそのクリシェの進行感は一つ一つ違うはずです。それは実在の時間が常に刷新されているのと同じです。

不定調性論では、そうした分析の方法をとります。

これまでの機能和声的分析では

「はい、ここはAmのクリシェですね」

で分析終わり!!だったはずです。

 

だから後輩たちが作る曲の印象がみんなチープになってしまったのだ。みんなそうしたインスタントの分析のためです。

ということを講師陣はよく理解しましょう。

あなたなりの教え方で結構ですから、この曲でのAmのクリシェの意味、感情、演奏の仕方、を熱く語ってください。

そうすれば「へぇ、なんだこの進行って他とおんなじだと思ってたけど、やっぱプロの人はもっと繊細に感じてるんだなあ、自分も見習おう」

って思ってくれるはずです。そして10年後、素晴らしいミュージシャンがまた現れます。教育を怠る、というのは、実は、自分の望まない世界を自ら構築している、ということであると思います。

皆さんなりの教え方で良いので、それぞれの響きの意味が違うことを伝えていきましょう。