音楽教室運営奮闘記

音楽と教育と経営の雑記ブログ~不定調性論からの展開

下方倍音列について_その3

記事その1はこちら。

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<上下の倍音をどう扱うか>
Cの下方倍音列を第8倍音までピックアップし、同音を除くと、

C(1,1/2,1/4,1/8)-Ab(1/5)-F(1/3,1/6)-D(1/7)

となります。

   


9倍音以上は下方倍音列にも表れる音が混在してしまうために、より性格を分ける為に、不定調性論では8倍音までを用いて、類別を図りました。

これらのC-Ab-F-D各音の今度は上方倍音第8倍音までをピックアップし音程十二音名を並べてみます。
C-E-G-Bb
Ab-C-Eb-Gb(cが5倍音に)
F-A-C-Eb(cが3,6倍音に)
D-F#-A-C(cが7倍音に)
全てにCがありますね。当然です。cの振動数から割ってきたのですから。

つまり下方倍音列は、「基音を順々に発生する音の集合」ともいえるわけです。

それぞれが上方倍音の何番目にCを持つか、という音の集合になるわけです。これは自然倍音列とまったく異なる集合形態なわけです。

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<近似値をどう扱うか>
一般に、7倍音は近似値であり、近似値として明記する、という伝統的発想?があります。
私は12音の音楽を扱う上でのこれは最初の壁だと感じました。

そこで、あらゆる音を12のピッチクラスに納めていけば、振動数が1違おうが8違おうが、同じ音名である、というデフォルトとする、というピッチクラスの考え方に同調します。
その詳細は教材の第6章にて。

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さて、同一の基音を生み出す集合の序列=下方倍音列

であるわけですが、次の表を見てください。

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これは、基音cに対して、上下の八倍音までの配列と、それをさらに実音化した場合に想定できる音の関係を表したものです。色を塗ったセルが左に表記された該当音で、その他の音はそれぞれの上下の倍音関係を書ける範囲で書きだしたものです。

たとえば、cとeを同時に弾いたとしましょう。

するとcとeから上方倍音が発せられることになりますね。
cの上方倍音、c,e,g,a#(簡易表記)
で、下方倍音も鳴ってる、というのであれば、
cの下方倍音、c,f,g#,d(簡易表記)
で同様に、
eの上方倍音、e,g#,b,d(簡易表記)
eの下方倍音、e,a,c,f#(簡易表記)

これらがもし現実世界と耳の中で鳴っているとしたら、少なくとも私には識別できず、クオリアのレベルで、印象としての反応に言及する以外ありません。

あぁ、豊かな音色だなあぁ、
とか
あぁ、なんか昼下がりの草原みたいだなぁ、
とか。

これが倍音存在の含有状態に対する表現であってもよい、としました。
これは個人個人の人生経験に応じて変化が出てきます。そして不定調性論は、その違いを活用して音楽生成までつなげていくという学習ステップ全体を指します(音楽のクオリア、又は共感覚的な理解の展開)。
途中の「理論的に何が起きているか」をすっ飛ばします。その「何が起きているか」という点は教材の1-3章に詳しく書きました。

動画シリーズでも言及していきます。

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では、発生倍音を見てください。eの上方倍音にg#があります。そしてcの下方倍音にg#があります。振動数は微妙に異なりますので、特定はできますが、人が聴いて、g#が聞こえたら、これはcの下方倍音ではなく、eの上方倍音だ、そっちの方が良く聞こえるはずだ、と言ったとします。いや、eの存在によって、cの下方倍音g#が耳の中で強化されて聞こえるのだ!
と言ったとします。

私はこれが又面倒でした。この辺りは実際の研究にお任せして、私はどちらかだと判別しなくて良い方法論にする事にしました。

そこで、上下八倍音までを一つの基音が発せられるキャラクターを表す音としました。
基音cに親和する音、として、上方のc,e,g,b♭、下方のc,f,a♭,dとします。
これらは12音で全て異なりますから、それぞれのグループを作ることができます。しかしこれらは実は、12音で結構交差しています。

cの上方八倍音まではc,e,g,a#です。
で、
dの下方八倍音まではd,g,a#,eです。

そうなんです。近似値として12区分してしまうと発生音の解釈が被ってしまうんです。
本来は微分音ですから異なる、と解釈してもいのですが、不定調性論のデフォルトでは一緒に考えます。

面白いですよね。倍音関係が互いに補完しているというフォルムが。
これを「完全結合領域」と教材では紹介しています。

こうやって、12音の相互関係を作ると、シェーンベルクやバルトークが作った12音の配置図のようなものができます。不定調性論にも十二音連関表、というのがありますが、先生方とは違う理由で作っていますので、ご確認ください。

     


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こうして12音がキャラクターである八倍音までのグループ分けで決まると、さまざまな関連性、様々な和音などが自在に作れます。三度堆積和音も、四度和音も、二度和音も、神秘和音も、クラスターも、ひじで鍵盤を叩いた和音も方法論で作ることができます。
また新たに作り上げた関係性は、立体模型的で、裏コードやオルタードスケールの概念などもみえてきます。また導音という存在(半音下)の音の意味も、半音の連鎖も全く違う見方ができます。

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教材では、「CG問題」として書いていますが、
CにとってのGの立場、GにとってのCの立場を平等にしました。
Cにとっての3倍音g、Gにとっての1/3倍音cという相互関係です。
低音優先で考えれば、Cが中心音、このブログでもおなじみな、高音優先の原理を考えれば、Gが中心になります。基音ではありません、中心音です。この中心は自然が決めるのではなく、あなたが音楽の中で決めればよいのです。

こうして基音という地平線を通過可能なもの、とすることで、和音の解釈も広がってきます。
たとえば、Fmadd9
これは構成音は、F,Ab,C,Gです。
つまり基音をCとした時の下方倍音F,Ab,CとCの上方倍音Gを合体させている、という発想が可能になるわけです。これは自由に解釈できますから、他の作り方でこの和音を作ることもできます。それゆえに音楽は流れの中で異なる表情をするのだ、そしてその表情は、各々の声部配置の展開の際によって生まれるものであり、それゆえに12音しかないのに、豊かな響きがするのだ、としました。

これによって「和音がなぜ存在するのか」ということも考えることができるのではないでしょうか。

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微分音程への考えはこの先になります。
FmM7(9)なんてFm+C△ですから、意外と意味深い和音ですよね。
でもこの和音、下方倍音だと解釈して「響かない」とか「変」だとはもはや思わないと思います。この和音には「この和音の響きがある」、とその印象=音楽のクオリアを認知する方向に考え方を進める事で、音楽に成り立つ、成り立たない、という境を設けなくする、訳です。

下方領域音が上方領域の中に姿を現しているわけです。自然と出てきてしまっているんです。それに気が付けば、ジャズ機能和声理論が自然に下方領域を上方化して用いられていた、ということが分かると思います。

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ブルーノートはどうでしょう。これは、
C△のときにEbを用いることのできる感覚をブルースが作り、それが意外とカッコ良かったので、何とか機能和声理論的な解釈で組み込めないものだろうか、というところから発展した問題です。
この問題は倍音とは関係がないのですが、これらの音を同じ方法論で用いるために同様に考えてみましょう。

基音Cなら、
上方領域に、C,E,G,Bbですね。さらにCを発する音(つまり下方領域音)、F,Ab,Dです。そしてこれらのF,Ab,Dの上方音を全て並べてみます。
F-A-C-Eb
Ab-C-Eb-Gb
D-F#-A-C
すると、ブルーノートのEb,F#,Bbはじめ、C#とDb以外全て出てしまいます。

あとはこれらの領域のどこまでを用いるかを作曲者、演奏者が判断します。

C△ |C△ |C△ |C△ |

において、Cを中心にしたスケールで各領域の基音だけなら、
C-D-E-F-G-Ab-Bbですし、五度音まで用いると、
C-D-Eb-E-F-G-A-Ab-Bbですし、外縁部の三度音まで用いると、
C-D-Eb-E-F-F#-G-A-Ab-Bbとなります。

またCとFだけに絞れば、
C-Eb-E-F-G-A-Bb

となります。これは本来のブルーノートの考え方ではありません。
しかしこうして一つの考え方から、機能和声の意義も、民族音楽的な音も、生み出せることが、不定調性論の特徴です。最初はバラバラだったものを一旦全ての考え方をフラットに戻して、もう一度作りなおすと、自然とこうした音が入りこんでくるわけです。

こうした12音の新たな主観的な限定的拡張利用の考え方を、機能和声論の先の理解として、皆雅の考え方のプラグインの一つとして、ご利用頂ける方は活用してみてはいかがでしょうか。