音楽教室運営奮闘記

不定調性論からの展開紀行~音楽と教育と経営と健康と

なぜ「ペッパー軍曹のバンド」を創らなければならなかったか~ビートルズ楽曲topic

2017.10.02→2020.6.7更新

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ほぼ全曲ビートルズのコード進行不定調性考察 アルバム「SGT.Pepper's〜」1(2017)

サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド 

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ビートルズ楽曲のコード進行学習が充実してくると、

「このコードの機能がサブドミナントだと分かってもしょうがない」

と気が付きます。そして

「じゃあ、自分は何を目安にコードをつなげるのか」

について向き合います。

 

音楽理論書にはあなたが何をすべきかまでは書かれていません。

その先、

「じゃあ、自分は何すればいいの?」

についていち早く考えた人が勝ちです。

コンセプトアルバム

同アルバムは、彼らにとって新しい音楽表現を自在に行うために、"仮のオーケストラ"サージェントバンドをアルバム中に誕生させ、その名を借りてビートルズは好きなことをやっています。
こういうコンセプトでアルバムを作ってみよう、という企画勝負に出たわけです。当時はまだ珍しいコンセプトアルバム。

それまでのタガが外れたように実験的な要素が盛りだくさんです。

コンサート活動を終結させスタジオ活動に集中したのも幸いだったのかもしれません。

またジョン・ケージの存在などもポールは知っていて前衛音楽的なアプローチにも興味津々でした。メンバー自体がビートルズの枠にとどまれない才能と可能性があったわけです。普通だったら、この企画が出た時点でバンドは解散です笑。

 

全曲「ビートルコード」(他記事参照、メジャーコードの連鎖)がとても重要な意味を持って使われています。
実験的な進行を、コンセプトアルバムという店構えで発信することで、アルバムジャケットの雰囲気にマッチしたサイケデリックな音楽表現が堂々とできたのではないでしょうか。

人間は変装をすると、そのキャラになった気分がします。無意識に。そうして構えると意外と自分の別の側面や、普段押さえつけていた面が表に出ます。コンセプトアルバムという形態は、そうやってアーティストの奥にある才能を引き出す効果がある、ということをこのアルバムは教えてくれます。

ポールは「僕らの分身にアルバムを作らせることによって、プレッシャーから解放された」と述べています。(マッカートニー3,2,1)

 

また、テーマがある人はイメージが広がります。クラスのみんなに「1曲作曲してきなさい」と漠然に指示するより、「お母さんについて作曲しなさい」とテーマを決めたほうが個々の環境によって能力が個別の感性が発揮しやすい、わけです。

===

この表題曲は、
Aメロ
G A7 |C7 G |G A7 |C7 G |
A7 |C7 |G7 C7 |G7 |
C7 |F |C7 |D7 |% |
サビ
G7 Bb7 |C7 G7 |C7 |G7 |
G7 Bb7 |C7 G7 |A7 |D7 |~

という感じで、ブルース7thコードの印象と進行感を巧みに用いて、独自の「ビートルブルース(ブルースでもロックでもないビートルズ独自のブルージーな楽曲)」を作っています。

C7→G7はブルースの終止ですが、こういうものをちょっと挟むと急にブルースっぽくなり、前後の7thコードもブルージーを帯びてきます。

 

ウィズ・ア・リトル・ヘルプ・フロム・マイ・フレンズ - With a Little Help from My Friends

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リンゴのボーカルはいつもトボけているようでありながらすごく暖かいです。

この曲も、
D-A-E
という進行がサビに用いられています。キーはEです。
つまり、
VIIb--IV---Iですね。
これもこのブログでおなじみです。

 

"アナザー・ガール"、"悲しみをぶっとばせ"他、などです。

これらの進行感を全面に出そうとすると、このアルバムジャケットのような世界観が見えてこないでしょうか?

このアルバムの化け物的な成功によってこうした進行感はある種の特殊な商業的価値を持ちました。

だからこれらの雰囲気を真似すると

・まるでビートルズじゃん

みたいに潜在的に思われたりします。

こうした進行はもともとありましたが、この化け物的な記録により「ビートルズが全部作った」と"ビートルズでくくる"習慣になっているのかもしれません。

 

ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイアモンズ - Lucy in the Sky With Diamonds

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この曲も同じです。
Aメロ
A |A/G |D/F# | Dm/F |
A/E | A/G |D/F# | F | F |
A |A/G |D/F# | Dm/F |
A/E | A/G |D/F# | D/F# | Dm |Dm/C |
Bメロ
Bb |Bb |C |C |
F |F |Bb |Bb |
C |C |G |G |D |
サビ
G C |D |G C |D |
G C |D |D |

ビートルコード連続打ち。最初はクリシェのようです。不思議な話を理解してもらうために、語りかけるような印象になっている、と感じます。

ビートルズ的進行への理解の第一歩はこうした積極的な一時的自己解釈がどこまでできるか、です。これができれば、作曲時の着想にもなります。これこそが先に述べた

「じゃあ、自分は何を目安にコードをつなげるのか」

に繋がります。着想、印象感=クオリア、脈絡、共感覚的知覚を感じることができれば、無調作品ですら色彩感豊かに作ることができます。

たいていは最初「自己解釈」なんて価値がない、と感じるものです。

それは社会の洗脳だと思うのです。

しかし本当はあなたが感じたことだけがあなたにリアルを生んでいます。それを頼りにするしか、そもそも現実は生きようがありません。

 ====
この赤字にしたFがVIb△としてふわっと上昇気流に乗るようなサウンドを作っています。

Bメロはまさに不定調性。コード展開が自分のギターフォームから生み出されるがままの奔放さを感じさせます。

結果としてサビはGメジャーキーに転調します。あくまで、結果的に。

 

注;ビートルコードとはVIIb,IIIb,VIb IIなどのメジャーコードやその組み合わせが、いかにもな「ビートルズ感」を作り出すコードのことです。

 

こういう「進行感」には、共感できる流れ、できない流れ、面白いとあなたが感じる流れ、感じない流れ、が区別されていくと思います。
歌詞に着目したり、楽器の音色だったり、その音現象の洪水に何らかの「印象」「心象」「模様感」を持つと思います。

それらをはっきりさせてあなた自身が「共感できるもの」を使えばいいんです。ビートルズが嫌いなら、自分が好きなアーティストを参考に。

伝統知識を学習したら、次は自分を学び開発。

 

こういう発想が面白い、と感じて頂けたら、他の記事もご参照頂けましたら幸いです。